レポート

“ネ申エクセル”をめぐって徹底討論! 「Excel方眼紙公開討論会」開催

この記事を読むのに必要な時間:およそ 4 分

9月30日,KFC Hall & Rooms(東京都墨田区)にて,グレープシティ⁠株⁠主催による討論イベント「Excel方眼紙公開討論会」が行われました。

会場入り口

会場入り口

Excel方眼紙とは,セルを正方形に設定してExcelをDTPソフトのように利用する手法で,多くの場合セルの結合や罫線の設定がふんだんに使われており,データの入力・再利用に難があるものが多く,是非については議論が絶えません。イベントではExcel方眼紙反対派,賛成派の登壇者によるセッション,両派によるディスカッションと質疑応答が行われました。

講演1:「ネ申タヒすべし:Excel方眼紙という時間泥棒」
立命館大学情報理工学部教授 上原 哲太郎氏

上原氏

上原氏

上原氏はExcel方眼紙反対派陣営。ソフトウェアハウス,省庁,大学とキャリアを踏む中で,さまざまなExcelファイルと出会ってきたと言います。

最初に上原氏が語ったのは表計算ソフトの歴史について。世界初のPC向け表計算ソフトVisiCalc(VisiCorp社,1979年)からMultiplan(Microsoft社,1982年)⁠Lotus 1-2-3(Lotus Development社,1983年)と変遷していき,1985年にMicrosoft社がMacintosh版のExcelを発売,1987年からはWindows版も提供されました。Excelが登場した当初は,⁠職場の定型業務がほとんどまかなえるので,ソフトウェア工学が無用になるのでは」といった声もあったそうです。MicrosoftがOSとOfficeソフトをバンドルして提供するようになると,各家庭にもOfficeが入るようになり,Excelの,表計算以外の多様な使われ方が生み出されました。表計算ソフトを「表印刷ソフト」にしてしまったのはExcelだと上原氏は指摘しました。

それでは,企業でExcelがDTPソフトのように使われるようになったのはなぜでしょうか。上原氏は和歌山大学や京都大学で業務のシステム化を推進していた時代,自治体とのメールで初めてExcel帳簿に出会いました。時が経って総務省に入省したとき,上原氏はExcel帳簿の起源を知りました。⁠省の中をExcel帳簿が飛び交っており,各自治体のExcel帳簿もここから来ている」⁠上原氏)⁠

このようなExcelの使い方に「ネ申エクセル」という名前が付いたのは,三重大学教育学部特任教授の奥村晴彦氏の2013年のツイートをまとめたTogetter公務員が公開するネ申Excelが日本の生産性を落としている話がきっかけだそうです。

なぜネ申Excelが今も使われ続けるかというと,とくに省庁での⁠紙⁠への信仰が根強いからだと上原氏は分析しています。⁠データのフローを帳票から考える昔からの慣習,証跡=印鑑のある書類への絶対的信頼,そして電子データという見えないものへの恐怖が,ネ申Excelを生き延びさせている」⁠上原氏)⁠

“紙⁠への信仰

“紙”への信仰

ネ申Excel問題解決の鍵は,生産性への着目にある,と上原氏は指摘しました。もしもネ申エクセルを受け取ったら,その送り主に対して,⁠データと体裁の分離」について解説し,そのデータは何に使うのか,そもそもその仕事は必要かと分析を促すように諭すのが解決への道だと提案しました。

講演2:「Excel方眼紙がダメな理由を知りたい」
プログラマ:長岡 慶一氏

長岡氏

長岡氏

長岡氏はExcel方眼紙賛成派陣営。長岡氏のブログの2016年のエントリ教えてほしい。Excel方眼紙って何がそんなに悪いの?が話題となった経緯で今回,登壇の依頼がきたそうです。ただ立場としては「どちらかというと賛成派」で,1文字1セルといった極端なExcel方眼紙には反対とのことです。

長岡氏がイベント開催前にブログでとったExcel方眼紙についてのアンケートでは,65対35で反対派が有利とのことだったのですが,氏が注目したのは,一部の意見が食い違っていることでした。反対派からは「Excel方眼紙はレイアウトしにくい」という意見が出,賛成派からは「Excel方眼紙はレイアウトしやすい」という意見が出ていたのです。この結果から,両派は同じExcel方眼紙を見ていないのでは,という考えに至ったそうです。不便な使い方がネ申エクセル,便利な使い方がExcel方眼紙なのであって,ネ申エクセル=Excel方眼紙ではないのではと持論を展開しました。

長岡氏は,ネ申エクセル問題はExcel自体の問題,使い方の問題,方眼紙の問題に分解できるとし,便利に使えるはずのExcelをそうは使わないというところに問題の本質があると語りました。

ネ申エクセルの一例「1文字1セル」

ネ申エクセルの一例「1文字1セル」

方眼紙を使用した便利なExcel方眼紙として,長岡氏は普段の業務で使っているDBのスキーマ定義書を挙げました。そこでは結合セルを部分部分で使って読みやすくしている一方,VBAやSQLと連携しやすい作りも心掛けているそうです。そんな「良いExcel方眼紙」の条件として,

  • 便利に使えること
  • 結合セルは極力使わない
  • データを使い回すなら,そのしくみを考えておく
  • 印刷はおまけと考える
  • ページや章の概念は捨てる

の5つを掲げました。最後に提案として,入力用・加工用・表示用シートと,工程でシートを分ける方法を紹介しました。

著者プロフィール

中田瑛人(なかたあきと)

Software Design編集部所属。2014年 技術評論社入社。

バックナンバー

2017年

バックナンバー一覧

コメント

コメントの記入