レポート

奈良県立磯城野高校にて実践型体験ワークショップ「つくりかたの未来講座」開催~アドビ・慶應SFC研究所・県教委による産学官一体となった未来の教育への取り組み

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生徒たちだけではなく,教員にも気づきの多いワークショップ

約6時間をかけて行われたワークショップ。短い時間ではあったが,非常に内容の濃いプログラムだったのではないだろうか。最後に,奈良県教育委員会 奈良県立教育研究所 研究開発部ICT教育係の小崎誠二氏は「学校の壁,生徒の壁,教員の壁を越えた新しい授業の1つの形を見せられたと思います。とくに教員の皆さんには,これも1つの授業として行える可能性を感じてもらうこと,それが今回のワークショップです。1回だけではなく,継続して取り組んでいくこと,そして,全員の底上げが教育のつながるはずです」と,この日の講評,そして,これからの意気込みについて力強くコメントし,つくりかたの未来講座を締めくくった。

今回のワークショップは生徒たちの参加だけではなく,奈良県から集まった教員が客観的に授業を見て各々の意見や感想をアウトプットする場も準備された(ポストイットに書かれている)⁠このように,生徒たちだけの満足度を上げるだけではなく,実際に授業を行う教員の意見を取り入れ,改善していく仕組みがあるのも,授業レシピの特徴の1つ

今回のワークショップは生徒たちの参加だけではなく,奈良県から集まった教員が客観的に授業を見て各々の意見や感想をアウトプットする場も準備された(ポストイットに書かれている)。このように,生徒たちだけの満足度を上げるだけではなく,実際に授業を行う教員の意見を取り入れ,改善していく仕組みがあるのも,授業レシピの特徴の1つ 画像

産官学一体となって取り組むこれからの教育の姿

以上,⁠つくりかたの未来講座」の様子をお届けした。最後に,この「つくりかたの未来講座」が開催された背景について,運営メンバーに話を聞く機会があったのでその内容をお届けする。

写真右から,楠藤倫太郎氏(アドビ システムズ株式会社教育市場営業部)⁠中澤仁氏(慶應義塾大学 SFC研究所 准教授)⁠石井宏典氏(奈良県立教育研究所副所長)⁠松下征悟氏(奈良県立磯城野高等学校環境デザイン科長 ICT活用教育エバンジェリスト)⁠小崎誠二氏(奈良県教育委員会 奈良県立教育研究所 研究開発部ICT教育係)

写真右から,楠藤倫太郎氏(アドビ システムズ株式会社教育市場営業部),中澤仁氏(慶應義塾大学 SFC研究所 准教授),石井宏典氏(奈良県立教育研究所副所長),松下征悟氏(奈良県立磯城野高等学校環境デザイン科長 ICT活用教育エバンジェリスト),小崎誠二氏(奈良県教育委員会 奈良県立教育研究所 研究開発部ICT教育係)

まず,なぜ奈良で行われたかという点について,奈良県立教育研究所副所長の石井宏典氏は,⁠奈良県はつい最近まで,全国の教員のICT活用力の調査で47都道府県の中で最下位という結果にありました。まず,この状況を真摯に受け止め,改善に取り組むこと,それがはじまりです」と,開催の前提となる背景についてコメントした。

この点について,奈良県教育委員会 奈良県立教育研究所 研究開発部ICT教育係 小崎誠二氏も「最下位という現実を目にし,私たちが取り組もうと考えたアプローチの1つが教員の育成です。具体的には,奈良県の教員たちに対して「ICT活用教育推進エバンジェリスト」を認定する仕組みを準備した他,2014年にはアドビと包括的協力関係を結び,県下の教育組織でAdobe Creative Cloudを利用しやすい環境整備などに取り組み,教員がICT活用をしやすくすることで,教育現場のICT活用率とその成果を高めることを目指しました」と,現状から導き出した課題として,今回の取り組みにつながったことを補足しました。

そして,今回,奈良県で実施された背景には,高大連携教育ワーキンググループの企業メンバーにアドビが参画していることも大きな理由となったそうだ。

この点について,アドビ教育市場営業部 楠藤倫太郎氏は,⁠当社が実施した「学校現場における『創造的問題解決能力』育成に関する調査」によると,日本の教員の約7割が「創造的問題解決能力」を育成するためのツールや知識習得機会が十分に得られていないと回答したことが明らかになっています。今回の取り組みは,こうした学校現場における課題に応えることができるのではと考えております」と,日本国内の教育現場が直面する課題,とくに「想像力の育成」に対して,アドビが最も得意とするクリエイティブツールの提供により,そのサポートを実現したい思いがあることを述べた。

最後に,高大連携教育ワーキンググループリーダーを務める,慶應義塾大学 SFC研究所 准教授中澤仁氏は,ワークショップを終え,次のように感想と考察をコメントした。

⁠今,日本ではICT教育への注目が集まっているが,私たちは情報など,ICTにまつわる教育だけではなく,それ以上に,従来の科目(数学や国語など)でのICT化,ICT化活用が重要だと考えています。今回のワークショップで実現したように,アドビのデザインツールや3Dプリンタなどを,生徒たちが鉛筆を使うように活用できれば,生徒の可能性は大きく広がります。一方で,現場の先生が先端技術を活用した授業を実施するというのは大変困難であることも事実です。今回「授業レシピ」を活用して行われた授業に参加する生徒の姿勢を見て,この取り組みが,教育現場の課題を解決していけると実感しました。今後も新しい授業の立案,実証,共有を繰り返し,この取り組みを広げていきたいと考えています」⁠

高大連携教育ワーキンググループでは,これからも産学官が一体となって,これからの教育を,教員側・生徒側どちらの立場もふまえながら,新しい技術と環境を取り込み,生み出していくとのこと。

人が学習し成長するのと同じように,時代も変わり,環境も変化していく。そうした中,これからの教育がどのように変わっていくか,継続して注目し続けていきたい。

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著者プロフィール

馮富久(ふぉんとみひさ)

株式会社技術評論社クロスメディア事業室室長。

1975年生まれ。横浜市出身。1999年4月株式会社技術評論社に入社。入社後から『Software Design』編集部に配属され,2004年1月に編集長へ就任。同2004年9月に『Web Site Expert』を立ち上げ,同誌編集長に就任,現在に至る。その後,2008年9月に設立したクロスメディア事業部(現クロスメディア事業室)に配属。現在,社外活動として電子書籍を考える出版社の会の代表幹事やWebSig 24/7のモデレーター,TechLIONプロデューサーなども務める。過去にIPAオープンソースデータベースワーキンググループ委員やアックゼロヨン・アワード他各賞審査員などの経験を持つ。

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