理系なおねえさんはアリですか?―内田麻理香が聞いた理系な女性の理系な人生―

第2回 早くもいきなり「理系じゃない」?! 科学と文化のプロデューサー 加藤牧菜さん

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今回からいよいよスタートした「理系なおねえさん」対談。記念すべき一人目のおねえさんは,サイエンスコミュニケーター 加藤牧菜さん。

加藤さんは,さまざまな科学教育イベントの企画立案や制作を行う一方で,クラシック音楽演奏会の企画制作も行っているという,異色のプロデューサー。まさに一筋縄ではいかない理系女性です。

加藤牧菜(かとうまきな)学生時代の専攻:生物学(生命倫理)。1976年東京生まれ。筑波大学第二学群生物学類卒業,同大学院生物科学研究科修了。京都大学大学院生命科学研究科勤務を経て,現在は「科学と文化」のプロデューサーとして活躍中。2006年~㈱オフィスマキナ 代表取締役。

加藤牧菜(かとうまきな)

「多分,私は理系じゃないんです」

満面の笑顔で,明るい声で登場した加藤さん,ふつーの場所に「ハレの場」のオーラを振りまきながら,開口一番,こんな意外なことを。

加藤「私,実は人前で話すことは苦手なんですよね」

──えー! だって,あのコンサートの会場(注:内田は加藤さんが企画・司会進行をしたコンサートに行った)でも堂々と司会をされていたし。いかにも舞台の上がお似合い,って感じでしたよ。

加藤「大学4年の卒業式の謝恩会でスピーチを頼まれて,そのときに気がついたんです。これは何とかしないといけない,と思い,自分の企画したコンサートで司会をするようにしたんです。コンサートの司会だと,周りが見ているから,皆にダメ出ししてもらえますよね。ようやく震えなくなったのは,ここ1年くらいかな?」

ふむ,こんなことからも加藤さんの勤勉さと素直さが伺えるわけで。 まずは加藤さんが現在されているお仕事について説明してもらいました。

──いまやっているお仕事は?

加藤「科学イベント,セミナー,クラシックコンサートの企画・制作です。横浜市と組んで市内の小学校にアーティストを派遣するお仕事もやっています」

──はー,幅広いですねえ。

加藤「あとは物を書くお仕事とか。講演会でたまに「遺伝子って何?」というお話をしたりもしています」

加藤「最近は,誰かと会うと『その人の知り合いの中に自分が会ったことのある人がいる』状態なので,人のコーディネートの仕事も入るようになっています。『誰かこういう分野に強い人いない?』って聞かれて,知人の中から見つけて紹介するという活動ですね」

人脈をフルに活かしたお仕事をされている加藤さん。そんな彼女が「理系女性」となったきっかけを伺ってみましょう。

加藤「小学5,6年生のときでしょうか。 アポロのドキュメンタリーをテレビで見て漠然と『天文学者』になりたいなあと思ったんです」

──どちらかというと,宇宙飛行士に憧れる人が多いような。

加藤「私は,管制室でマイクとイヤホンつけて宇宙飛行士と交信している人,あれになりたくて。小学校の卒業文集の将来の夢には『NASAに行くこと』って書いてあります」

加藤「で,ずっと宇宙物理をやりたくて,『Newton』とかホーキングの本を買って読んだりして,中学3年生のときには宇宙物理学者になりたい! と気持ちが固まっていました」

──そして着々とNASAへの道を進まれて……。

加藤「でもあるとき気付いたんですよね,物理学ができないと進めない,と。力学が全くできなかったんです。気持ち悪くないですか?『摩擦はないものとする』とか」

──あはは,確かに。「これを球とみなす」とか,仮定が多いですよね。

加藤「どうしてもそれになじめなかったんです。 その間も『Newton』は買って読んでいたのですが,高校1年生のときかな? DNAの特集が組まれていて。それを読んで『これから世界はこれだよ!』(ガッツポーズ)と思って」

──パラダイムシフトですね。

加藤「あと,生物の先生が放任主義だったというか。教科書に載っている内容の,その先を話さない。『ここから先は面白いんだけど,それは高2になったらやるから今は教えない』とか。そうすると気になるじゃないですか」

──「続きは来週のお楽しみ」のノリですものね。

加藤「気になって授業を全部受けていったら,最後に『ここから先は専門的になるからやりたい人は大学に行って』と。そこでまんまとのせられて,生物学の道に進みました。本当に教え方のうまい先生でした」

加藤「でも私,大学受験の勉強は全くしなかったんです」

──えっ? それはどーいうことでしょうか?

加藤「決めてたんです,高校3年生までは受験勉強を絶対しないって。高校生活ってそのときしかないから,学校でできることは全部やってから卒業しようと思って。だってもったいないもん,受験は浪人してもできるし」

──ははあ,気の小さい私は高校2年生の終わりから受験勉強を始めたんですけど……器が違うというか。

加藤「そして,高3のときに,どうやら受験しなくても生物系に進学できる方法があるらしいことを知って,筑波大学の一般推薦を受けて入っちゃったんです。学校生活を楽しむために生徒会とかクラス委員とか部活動を熱心にやっていたんですよ。それが良かったのかな」

加藤「もしも,一般推薦に落ちたら浪人して音大を受験しようと考えていました」

──ということは,その頃から音楽に興味があったんですね。

加藤「はい,高校よりも前に,中学のときに担任の先生から『お前は理科と音楽どっちが好きなんだ?』と聞かれたことを覚えています」

──その二者択一はすごい。

加藤「そのときは,その先生が理科担当だったので『理科です』って答えちゃったんですけど(笑)。私,そういう部分があるんですよね,人が喜んでくれるほうをとる,というか。その先生じゃなかったら多分『音楽です』と答えていたと思います」

──人に喜ばれるほうに行く,というのはまさに加藤さんが今されているお仕事につながりますよね。

加藤「そうなんですよ。原点はあのときの究極の選択にあるのかなと。他にも好きな教科はありましたけどね,漢文とか。多分,私は理系じゃないんです。書くの好きだし」

著者プロフィール

内田麻理香(うちだまりか)

サイエンスコミュニケーター。東京大学工学部広報室特任研究員/東京大学大学院情報学環・学際情報学府博士課程1年。身近な科学を伝えるために各種媒体で活動中。

URLhttp://www.kasoken.com/

コメント

  • やっぱりすごい理系

    先日はどうも!理系にして音系、でもやはり文系理科です、尊敬します。!

    Commented : #1  okusan (2009/10/18, 22:02)

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