知りたい!サイエンス
極限環境の生き物たち
―なぜそこに棲んでいるのか―
- 大島泰郎 著
- 定価
- 1,738円(本体1,580円+税10%)
- 発売日
- 2012.4.11[在庫なし] 2013.12.27
- 判型
- 四六
- 頁数
- 256ページ
- ISBN
- 978-4-7741-5030-7 978-4-7741-5933-1
サポート情報
概要
煮えたぎる源泉、極寒の土地、1千気圧の世界、放射線が飛び交う冷却水。
地球の平均的な環境とは大きく異なる場所、それが極限環境。
これほど過酷な環境の中でも平然と生きる生命がいる。
彼らは、どうしてそんなに強いのだろうか?
極限環境生物の秘密を軸に繰り広げられる、生命と科学の不思議な世界。
身近な場所から地球外生命体まで、ロマンあふれる1冊!
こんな方にオススメ
- 生命や科学に興味のある方
- 地球外生命に思いをはせたい方
- 「極限環境」「極限環境生物」という単語にロマンを感じる方
目次
第1章 極限環境生物の研究はなぜ重要なのか
1-1 極限環境生物とは何だろう?
- そんな過酷な場所にも生物が!?
1-2 好奇心。極限環境生物の研究はここから始まる
- 極限環境生物を研究する本当の理由
- 研究は純粋に。でも社会貢献も忘れずに……
1-3 限界が分かれば本質が分かる
- 生物界という“森”の様子を知る二つの道
- 森のなかだけ見ていると……
- 極限環境生物から宇宙が見える
- 極限環境生物の特殊な成分
1-4 生命は進化の産物
- 進化の道筋を遡っていくと
- すべての生物は、極限環境生物から始まる
1-5 極限環境生物が生み出すテクノロジー
- 使える! 極限環境生物の酵素
- 環境保全に役立つ極限環境生物
ExtremeなColumn① 極限環境生物の呼び方
第2章 微生物学の始まり
2-1 微生物と天体学の切っても切れない関係
- 微生物と顕微鏡
- オランダのメガネ職人たちが生み出した器具
- リッペルハイの、何といえない行動力
- 顕微鏡の発展、しかし微生物は……
2-2 微生物の発見
- 細胞の発見
- 微生物の発見
2-3 微生物学の始まり
- 光学顕微鏡の完成
- 微生物学の夜明け
2-4 極限環境微生物の発見
- 意外と早い発見
- 結核菌やコレラ菌よりも早く
Extreme な Column② 進化論の“微妙”な歴史
第3章 微生物の基礎知識
3-1 肉眼では見えない生物
- 微生物とは?
3-2 微生物の細胞とは?
- 生物の細胞は二つに分類
3-3 微生物と三つの領域
- 分子分類学の発展
- 三つの領域にまたがる微生物
3-4 細菌の性質を知ろう
- 細菌の形による分類
- 細胞壁による分類
- 栄養要求性による分類
- 呼吸による分類
Extreme な Column③ 微生物の美しい姿
第4章 極限環境の生物① 好熱菌
4-1 高熱という極限環境で生きる
- 好熱菌って何?
- 堆肥から温泉へ
4-2 中等度好熱菌
- 納豆菌とよく似ているゲオバチラス・ステアロテルモフィルス
- 酸素が苦手な中等度好熱菌
- 恐ろしい? 役に立つ? クロストリジウム属
4-3 高度好熱菌
- 高度好熱菌が拓いた遺伝子増幅法
- どこにでもいるテルムス・テルモフィルスの謎
4-4 超好熱菌
- 水温が100℃を超えても沸騰しない場所
- 解析される好熱菌たちのゲノム
4-5 好熱菌はなぜゆだらないのか?
- 好熱菌のゆだらない酵素
- 酵素がゆだらない理由
4-6 好熱菌の核酸はなぜ安定しているのか?
- 熱に弱い核酸
- 核酸がゆだらない理由
- tRNAに見る耐性獲得の基本
4-7 好熱菌の細胞膜が強い理由
- 細胞膜を強くする三つの方法
- 三つの組み合わせで、より強靱に
4-8 250℃で増殖した好熱菌?――実験科学の難しさ
- 250℃!?
- 実験科学者に間違いは許されないのか
- 実験科学の難しさ。正しいからといって、正しいわけではない……
4-9 高度好熱菌をモデル生物に
- モデル生物で原則を導き出す
- ゲノム時代のモデル生物「好熱菌」
- ミニマム生物を作ってみよう!
第5章 極限環境の生物② 好熱菌以外の生き物たち
5-1 好塩菌① 高塩濃度という極限環境で生きる微生物
- 塩が好きな細菌
- 塩分に強い理由
- 酵素やタンパク質もv好塩性
- ヘンな形の高度好塩菌
- “好き”ではなく“耐える”
- どこかにいるかもしれない細菌
5-2 好塩菌② 好塩菌の“目”
- シリコンバレー
- 好塩菌を研究する医学部の先生
- 高度好塩菌にある“目”
- 高度好塩菌から目の研究へ
5-3 好塩菌③ 好塩菌は“目”の起原?
- 第一のロドプシン様タンパク質「バクテリオ・ロドプシン」
- 第二のロドプシン様タンパク質「ハロ・ロドプシン」
- 第三のロドプシン様タンパク質「センサリー・ロドプシン」
5-4 好塩性のエビ――アルテミア
5-5 好酸菌、好アルカリ菌 酸、アルカリのなかに棲む微生物
- 周囲にあるイオンの種類
- 周囲に合わせるのか、周囲に耐えるのか
- 好酸菌、好アルカリ菌の特徴
- 食べなくても生きていけるスルフォロバス属
- 東工大のトコダイイ
5-6 絶対嫌気性菌 嫌気性は極限環境生物なのか!?
- 酸素は有害
- 好気性=真の極限環境生物
5-7 好冷性の細菌と動物 寒いところが好きな生物
- 0℃以下になったらどうする?
5-8 好圧菌 高い圧力環境で生きる生物
- 想像を絶する圧力の世界
- 高圧下でないと増殖できない菌
- 普通の菌もけっこう強い!
5-9 放射線耐性菌 放射線量の高い環境で生きる生物
- 放射線耐性菌と高度好熱菌の不思議な関係
- 放射線に耐えるには理由がある
5-10 生命の生存限界
- 宇宙生命が存在する条件
第6章 極限環境生物と宇宙の生命
6-1 宇宙生物学と極限環境生物
- 火星の環境を考えてみると
6-2 宇宙の環境は生命にどれほど過酷なのか?
- 広範囲に及ぶ太陽の重力
- 微少重力が及ぼす動植物への影響
- 微生物にも微少重力の影響はあるのか?
- 重力以外の影響
6-3 水が生命にとって重要な理由
- 水の不思議さ=生命の源?
6-4 ハビタブルゾーンって何だろう?
- 恒星と惑星の距離には秘密がある
- ハビタブルゾーンの惑星――太陽系は特別な存在なのか?
- ハビタブルゾーンの惑星を発見!?
6-5 ヒ素生物は存在するのか?
- えぇ、こんな生物が本当にいるの?
- ヒ素とリンは確かに似ている。しかし……
6-6 宇宙環境に耐えたクマムシ
- 地表は保護されている。しかし……
- 数少ない極限環境動物――クマムシ
ExtremeなColumn④ レーベンフックの肖像画?
第7章 ヒトと地球を支える極限環境生物
7-1 ヒトと極限環境生物① 極限環境微生物が作る発酵食品
- 発酵って何?
- 極限環境生物の発酵食品
7-2 ヒトと極限環境生物② 好アルカリ菌の利用
- 好アルカリ菌を利用した染め物
- 汚れを落とす好アルカリ菌の酵素
7-3 ヒトと極限環境生物③ 好冷菌の利用
- 魚に含まれる「EPA」の正体
- 低温輸送中に働いてもらおう
7-4 ヒトと極限環境生物④ 好熱菌の利用① さまざまな分野で活躍する熱耐性の酵素
7-5 ヒトと極限環境生物⑤ 好熱菌の利用② PCR法を確立させた熱耐性の酵素
- DNAを人工的に増やす
- 加熱してDNAポリメラーゼ、加熱してDNAポリメラーゼ……
- PCR法の発見
- 脚光を浴びる好熱菌
7-6 ヒトと極限環境生物⑥ 好熱菌の利用③ 微生物の有名人? テルムス・テルモフィルス
- 好熱菌界の人気者
- マンガに登場!
- コスメティックに登場!
7-7 地球と極限環境生物① 元素循環に貢献する極限環境生物
- 元素循環と生命
- 元素循環における植物、ヒト、微生物
- メタンガスとメタン細菌
- 窒素固定を行う極限環境生物
7-8 地球と極限環境生物② 毒物を取り除く極限環境生物
- 毒物を食べてもらって環境浄化
- 最後の一言
ExtremeなColumn⑤ 歴史を見つめるDNA鑑定
プロフィール
大島泰郎
1935年東京生れ。現在は共和化工株式会社 環境微生物学研究所長、東京工業大学名誉教授、東京薬科大学名誉教授。理学博士。
1958年東京大学理学部化学科卒、1963年東京大学大学院生物化学専攻博士課程終了。東京大学助手、米国NASA博士研究員、アインシュタイン医科大学(ニューヨーク)博士研究員、三菱化成生命科学研究所主任研究員を経て、1983年より東京工業大学教授、のち生命理工学部長などを併任し、1995年定年退官。1995年4月東京薬科大学教授、翌年より生命科学部長。平成17年3月再び定年退職、4月より現職。好熱菌、好熱性古細菌を利用したタンパク質工学、進化生化学の研究を行っている。
趣味は? と聞かれると「地球外文明探査」と答えて煙に巻いているが、実は何もしていない。どうせ簡単には見つからないから。今の楽しみは、初心に立ち戻って自分の手で新たな好熱菌を探していること。