生物ミステリー(生物ミステリーPRO) 怪異古生物考

「怪異古生物考」のカバー画像
著者
土屋健つちやけん 著
荻野慎諧おぎのしんかい 監修
久正人ひさまさと イラスト
定価
2,178円(本体1,980円+税10%)
発売日
2018.5.29 2018.7.10
判型
A5
頁数
240ページ
ISBN
978-4-7741-9806-4 978-4-7741-9898-9

概要

世界各地に残る、さまざまな伝承や伝説、物語。そうした伝承・伝説・物語には、「怪異」がよく登場します。
西洋世界だとユニコーンやグリフォン、アラブ世界だとルフ、東洋の龍、日本のぬえ、天狗などが有名どころです。

こうした怪異、単なる“架空の産物”と思っていませんか?

実は、怪異は、何でもかんでも架空というわけではありません。
モデルとなった「何か」が存在することがけっこうあります。

遠い遠い昔、人々が出会った「何か」が、長い年月をかけて「怪異」に変化して伝説や物語に残っているのです。

本書は、古今東西の有名怪異9体に着目。
プロの学者が繰り広げる科学的考察をもとに、その「正体」に迫ります。
昔の人は、一体何に出会って、その怪異を生み出したのでしょうか?

今回は、漫画家・久正人氏に協力いただき、迫力あるイラストを多数描き下ろし。
趣深いイラストと、斬新な紙面で展開される「怪異」と「正体」の結びつき。

存分にお楽しみください。

目次

1章 ユニコーン

  • 伝承のはじまりはインド?
  • ユニコーンの正体とされた海棲哺乳類
  • ユニコーンの正体?
  • 人類は、“生きているユニコーン”を見たか?
  • ワンポイントコラム/ユニコーンが実在したという前提で

2章 グリフォン

  • “アリス”に登場するグリフォン
  • “旅行記”に登場するグリフォン
  • グリフォンの正体
  • ワンポイントコラム/グリフォンはお手上げ?

3章 ルフ

  • シンドバードが出会う
  • マルコ・ポーロが“記録”する
  • “飛べない巨鳥”が正体?
  • ヒントは少ないほど良い?
  • ワンポイントコラム/流布された誇大表現

4章 キュクロプス

  • 隻眼の巨人
  • ホメロス
  • “もう一つのキュクロプス”
  • 一つ眼巨人の正体?
  • 日本にも“一つ眼巨人”
  • ワンポイントコラム/キュプロクスかサイクロプスか

5章 龍

  • 中国に見る「龍」
  • 四肢のあるヘビもいる
  • "龍の正体”は、大阪に?
  • マチカネワニが、生きのびていたのであれば……
  • 滋賀県で発見された“ 龍骨”
  • 龍骨の正体
  • かつて日本にいたステゴドンたち
  • ワンポイントコラム/謎のゾウ、トウヨウゾウ
  • 群馬県にもある龍骨碑
  • ヨーロッパに見られる「ドラゴン」
  • ドラゴンの骨?
  • マーストリヒトの怪物
  • 怪物の今の姿
  • ワンポイントコラム/近江鯉与鰐戦物語

6章 ぬえ

  • 平家物語
  • “記録”された怪異
  • 異本、源平盛衰記
  • 詳しすぎる記述
  • ぬえの正体?
  • 絶滅した大型種
  • ぬえは、"大型レッサーパンダ" の生き残りなのか
  • ワンポイントコラム/大型レッサーパンダに至るまでの過程

7章 天狗

  • 天狗誕生
  • 一般的な“天狗”とはどのようなものだろう?
  • 平賀源内、天狗を語る
  • 天狗髑髏の正体
  • ワンポイントコラム/イルカの研究者から見た平賀源内の天狗髑髏
  • 江戸(東京)近辺で、イルカの頭骨化石が見つかる可能性は?
  • 記録された「天狗の爪」
  • 「天狗の爪」の正体
  • ワンポイントコラム/天狗と分類

8章 八岐大蛇

  • 日本神話の中の怪異
  • 寺田寅彦、八岐大蛇を語る
  • 三瓶山か白山か
  • 新潟焼山か
  • ワンポイントコラム/ヤマタノオロチのしっぽを掴む

9章 鬼 ~終章のかわりに

  • 描写される鬼たち
  • ツノのモデルはいったい何か?
  • 古生物の〝新たな楽しみ方〟
  • ワンポイントコラム/専守防衛の証
  • もっと詳しく知りたい読者のための参考資料

プロフィール

土屋健つちやけん

執筆担当。
オフィス ジオパレオント代表。サイエンスライター。埼玉県生まれ。金沢大学大学院自然科学研究科で修士号を取得(専門は地質学、古生物学)。その後、科学雑誌『Newton』の編集記者、部長代理を経て独立し、現職。近著に『生命史図譜』(技術評論社)、『楽しい日本の恐竜案内』(共著:平凡社)、監修書に『MOVE COMICS 地球と生命の大進化』(講談社)など。本書執筆にあたり、サイエンスライターらしからぬ本が並ぶ書棚が二つ増えた。本書のおすすめ怪異は、久正人さんによる“正しいユニコーン像(?)”。ユニコーンへの認識が変わりますよ。

荻野慎諧おぎのしんかい

監修担当。
理学博士(鹿児島大学)。山梨県出身。哺乳類化石が専門の古生物学者。
客観的な視点で文献に残された怪しい生き物の実体を復元する、「妖怪古生物学」を提唱している。「荒俣宏妖怪探偵団」にて日本各地の妖怪・異獣・怪異を訪ね、昔の人々が目にしていたものが何であったかを探る活動に従事。
世を忍ぶ仮の本業は、自然科学の研究手法を用いて「地域づくり」を行う事業である。ここでは自らの実践成果を体系化し、全国の自治体に自然科学者を送り込むプロジェクトを計画している。

久正人ひさまさと

イラスト担当。
漫画家。横浜市出身。
清朝末期を舞台にしたキョンシー漫画『グレイトフルデッド』でデビューし、進化した恐竜が歴史の裏で暗躍するスパイ漫画『ジャバウォッキー』、妖怪・幻獣・UMA・宇宙人・神々が隔離された街を舞台にしたハードボイルド『エリア51』など一貫して怪異と古生物をテーマに作品を生み出している。
現在は埴輪の力で国津神と戦う古墳時代ヒーロー漫画『カムヤライド』(リイド社)を連載中。