じめに

本書はオープンソースソフトウェアの統合監視ツールであるZabbixの実践活用方法についての解説書です。仮想環境やクラウド環境、コンテナ環境を含む、実際の運用環境を想定し、どのようにZabbixを活用することで効率良い運用管理を実現できるかについて紹介します。
昨今の仮想化・クラウド化・コンテナ化する環境においては、従来の環境と並行して複数のプラットフォームを管理しなければならない状況が増えています。たとえば、Amazon Web Servicesなどの迅速にサーバインスタンスが使えるというメリットを活用してシステムのクラウド化を進めているが、セキュリティ上の理由などから既存のシステムをすべてクラウド環境上に移行できない場合、クラウド環境と既存の物理環境・仮想環境を並行して扱わなければなりません。複数の環境を並行して管理する環境においては、管理するために必要な知識も増加します。
そのため、簡単に導入できるクラウド環境を利用しはじめたはいいが、運用管理しきれないといった課題が上がっているのではないかと思います。そのような環境下においても運用コストをなるべくかけないで安定してシステム運用するために必要な知識と、Zabbixを活用した運用の実現方法を紹介します。
Zabbixはオープンソースの統合監視ソフトウェアです。サーバやネットワーク機器などの幅広い監視対象ホストを扱うことができます。監視結果に基づくシステム管理者への障害通知も柔軟に対応できるようになっています。また、グラフ表示やマップ表示機能など監視データをビジュアライズ化することも容易に実現できます。
開発やメンテナンスはラトビアのZabbix LLC(CEO:Alexei Vladishev 氏)により行われています。ZabbixはGPLv2の下配布されているため、ユーザは無償で利用することができます。2012年10月にはZabbix LLC初の海外子会社となるZabbix Japan LLCが設立され、日本国内のZabbix利用者へのサポートが益々強化されています。2018年10月1日には最新の安定版であるZabbix 4.0がリリースされ、監視データの効果的な可視化機能や、監視データ分析のためのElasticsearch連携機能など、運用の効率化につながるさまざまな機能開発が進められています。
監視の方法に関しては、監視の標準プロトコルであるSNMP監視やZabbixエージェントを利用した監視、カスタマイズしたスクリプトを用いての監視など多様な方法を取ることができます。この多様な監視方法を組み合わせて活用することで、システムの監視要件に応じた柔軟な対応ができるという特徴があります。仮想化やクラウド化、コンテナ化が進み、複雑化するシステムであっても、こういったZabbixの柔軟な監視機能を活用することで効率良い運用を実現できます。

池田大輔(いけだだいすけ)

TIS株式会社所属。社内向けシステムのインフラ基盤構築・保守運用業務を経験後,運用管理効率化というテーマで活動中。このテーマの中で,運用現場にあふれるさまざまな情報をデータ化・分析し,運用効率化を推進する運用レコメンドプラットフォームの企画開発に携わる。これらの活動を通して,特に,Zabbixの拡張性の高さに着目し,幅広く活用を推進。日本Zabbixユーザ会の運営スタッフ。Zabbix認定スペシャリスト。