音と音楽の科学
2020年3月4日紙版発売
2020年3月4日電子版発売
岩宮眞一郎 著
A5判/360ページ
定価2,508円(本体2,280円+税10%)
ISBN 978-4-297-11191-5
書籍の概要
この本の概要
身の回りの音から心を打つ音楽まで,音と音楽をキソから深く理解したいあなたのための入門書です。包括的かつ体系的に,科学目線でやさしく解説します。
こんな方におすすめ
- 音楽・音響を科学的に理解したい方
目次
第1章 音と聴覚のしくみ
- 1.1 音を聴いて音楽を味わうまで
- 1.2 物理的には音は空気の疎密波である
- 1.3 音を運ぶ媒質
- 1.4 純音(正弦波)は楽器の音や人間の声の最小要素
- 1.5 純音は三角関数を使って表現できる
- 1.6 波長は1つの波が伝わる距離
- 1.7 周期的複合音は倍音が組み合わさってできる音
- 1.8 弦楽器の弦の振動から倍音が出るしくみ
- 1.9 管楽器の管の共鳴で倍音が出るしくみ
- 1.10 スペクトルは各周波数成分のパワーを表す
- 1.11 ノイズは連続スペクトルで表現される
- 1.12 広帯域ノイズと狭帯域ノイズ
- 1.13 うなり:周波数がわずかにずれた2つの純音はうなる
- 1.14 聴覚のしくみ:空気の振動を電気信号に変えて脳に伝える
- 1.15 音はまず外耳に入ってくる
- 1.16 音を効率よく伝える鼓膜と耳小骨のコンビネーション
- 1.17 基底膜の進行波が周波数の情報を伝える
- 1.18 蝸牛の有毛細胞が神経インパルスを脳に伝える
- 1.19 神経インパルスが発火する様子
- 1.20 聴覚フィルタが周波数分析をしてくれる
- 1.21 難聴は音楽を聴きすぎても生じる
- 1.22 高齢社会で注目される老化に伴う聴力低下
- 1.23 補聴器と人工内耳が聴覚の衰えを補ってくれる
第2章 音の物理と心理
- 2.1 音の大きさとデシベル
- 2.2 デシベルのメリット
- 2.3 等ラウドネス曲線は聴覚の感度の周波数依存性を表す
- 2.4 騒音レベルは聴感補正特性で補正した音圧レベル
- 2.5 男と女のラウドネス(ラブソングではなく?)
- 2.6 ラウドネスは音の大きさの比率関係を表す
- 2.7 マスキングとは妨害して聞こえなくすること
- 2.8 音の高さ(ピッチ)の2面性:トーン・ハイトとトーン・クロマ
- 2.9 周期的複合音のピッチは,基本音がなくても基本音のピッチ
- 2.10 絶対音感者は,周りの音をドレミで認識する
- 2.11 ピッチが上昇(下降)し続ける無限音階
- 2.12 音色は複雑な性質
- 2.13 音色の印象的側面は3次元
- 2.14 音色の識別的側面は聞き分ける力
- 2.15 ものまね芸人は「らしさ」解析の達人
- 2.16 音色とスペクトルの対応関係
- 2.17 パワー・スペクトルの重心が音の鋭さ(明るさ,固さ)に影響する
- 2.18 ホルマントが母音の識別の手がかりになる
- 2.19 音の立ち上がり,減衰部が音色の違いに及ぼす影響
- 2.20 位相スペクトル(倍音間の位相差)が音色に及ぼす影響
- 2.21 ビブラートは音色を豊かにする
- 2.22 楽器音の偶発的なノイズや変動が楽器音の「らしさ」を作る
- 2.23 擬音語は音の感性を伝える言葉
第3章 音楽のしくみ
- 3.1 メロディはピッチの変化の理解に基づく
- 3.2 音階のしくみ:音の連なりが調性感をつくる
- 3.3 音名は階名の周波数を決める
- 3.4 ペンタトニック・スケール:世界に広がる5音音階
- 3.5 12音技法:調性感を否定した音階
- 3.6 音律は,音階の構成音の周波数を定める
- 3.7 完全5度の美しい響きを基本にしたピタゴラス音律
- 3.8 単純な整数比にこだわり,3度の音程も美しく響かせるようにした純正律
- 3.9 平方根の導入で転調に耐えうるようにしたミーン・トーン,ウェル・テンペラメント
- 3.10 単純な整数比の理想は捨てたが自由な転調を可能にした平均律
- 3.11 メロディのゲシュタルト:メロディを感じる枠組み
- 3.12 まとまり(ゲシュタルト)を形成するピッチのパターン
- 3.13 音脈分凝:メロディが分離して聞こえるしくみ
- 3.14 存在しない音が聞こえる
- 3.15 ハーモニーの科学:協和を感じるしくみ
- 3.16 協和感を決めるのは音と音の干渉
- 3.17 倍音の干渉が協和音と不協和音を決める
- 3.18 低音部では完全5度でも協和しない
- 3.19 協和と不協和の絶妙なバランスが名曲をつくる
- 3.20 リズムは音列のまとまり,テンポは音列の速さ
- 3.21 リズムとテンポのしくみと表現
- 3.22 リズムの心理学:時間間隔がリズムになる
- 3.23 ちょうどいい加減のテンポ
- 3.24 リズムのゲシュタルト:リズムを感じるしくみ
- 3.25 リズムのゆらぎ:グルーブ感を出すために
第4章 音の空間性
- 4.1 耳が2つある生態学的理由:眼鏡をかけるためではない
- 4.2 水平面の音の定位:音の方向は両耳間の差から聞き分ける
- 4.3 時間差の影響:左右の耳への到達時間差が音像定位に影響する
- 4.4 位相差の影響:波の進みあるいは遅れが音像定位に影響する
- 4.5 強度差の影響:音の大きい側に引きつけられる
- 4.6 正中面の音の定位
- 4.7 方向知覚の弁別限は音源の方向に依存する
- 4.8 音の定位に及ぼす視覚の影響
- 4.9 腹話術効果
- 4.10 音の距離感:大きな音は近くに聞こえるけれど
- 4.11 両耳聴取が音の空間性を感じさせる
- 4.12 コンサート・ホールに求められるもの
- 4.13 直接音,反射音,残響:適度なバランスが演奏音を豊かにする
- 4.14 音楽の邪魔をする反射音
- 4.15 残響時間:コンサート・ホールの特徴を表すモノサシ
- 4.16 ホールに広がり感をもたらす横からの反射音
- 4.17 遮音と吸音:音を遮断することと音を吸い込むこと
- 4.18 コンサート・ホールの誕生と発展
- 4.19 コンサート・ホールの形状
第5章 オーディオ機器の歴史と原理
- 5.1 レコード:音楽を記録・再生する初のメディア
- 5.2 録音テープ:磁石の性質を使って音を録音・再生する
- 5.3 放送メディアは世界的ヒット曲を生み出した
- 5.4 オーディオ機器:さまざまな音楽メディアを再生する装置
- 5.5 アンプ:スピーカを鳴らすパワーを供給する
- 5.6 スピーカ:電気信号を音に変換する
- 5.7 ヘッドホンとイヤホン:自分だけで音楽を楽しむ機器
- 5.8 オーディオ機器の音響特性
- 5.9 音楽メディアに革命をもたらしたデジタル技術
- 5.10 CDによってデジタル・オーディオの時代が訪れた
- 5.11 デジタル化することの利点
- 5.12 1ビット量子化方式(デルタシグマ変調方式)
- 5.13 圧縮技術と音楽メディア:音楽を持ち歩く生活
- 5.14 携帯型プレーヤはさらに進化を遂げた
- 5.15 高臨場感を実現する音楽メディア
- 5.16 忠実な3次元再生を目指すバイノーラル方式,トランスオーラル方式
第6章 楽器の分類とそのしくみ
- 6.1 各種の楽器と音が出るしくみ:楽器の分類とその系統
- 6.2 楽器がカバーする音域と音量
- 6.3 打楽器:叩いて音を出す楽器
- 6.4 木管楽器のなかま:吹いて音を出す楽器のいろいろ
- 6.5 管の共鳴でメロディを奏でるエア・リード楽器
- 6.6 リードの振動で音を発生させるリード楽器
- 6.7 金管楽器のなかま:きらびやかなファンファーレの秘密
- 6.8 弦楽器のなかま:弦の振動がメロディを奏でる
- 6.9 撥弦楽器では弦を弾いて音を出す
- 6.10 擦弦楽器では弦を擦って音を出す
- 6.11 弦を叩いて演奏する打弦楽器
- 6.12 鍵盤楽器のなかま:高度な音楽を奏でる工夫
- 6.13 多彩な表現力を備えた鍵盤楽器の王者ピアノ
- 6.14 オーケストラに匹敵する多彩な音色を備えたパイプ・オルガン
- 6.15 歌:人間の声も楽器である
- 6.16 オーケストラに打ち勝つベルカント唱法の秘密
第7章 電子楽器からDTMへ
- 7.1 電気楽器の原理
- 7.2 電子楽器:電気のチカラで音を作る
- 7.3 ユニークな電子楽器
- 7.4 デジタル技術が電子楽器にも恩恵をもたらした
- 7.5 エフェクタ:音楽表現に彩りを添えるツール
- 7.6 空間系エフェクタ:響きを人工的に作る
- 7.7 モジュレーション系エフェクタ:ここちよい「ゆらぎ」を作る
- 7.8 ひずみ系エフェクタ:わざとひずませてカッコいいサウンドを作る
- 7.9 ひずみに美的価値を与えたエレキギターは反骨の楽器だった
- 7.10 インサート系エフェクタ:過大入力を防ぐ
- 7.11 イコライザ:スペクトルを変化させる
- 7.12 MIDI:コンピュータとつながるインターフェース
- 7.13 デスクトップ・ミュージック:コンピュータ1台で音楽制作
- 7.14 ボーカロイド:ついに歌声もコンピュータで合成
- 7.15 DAW(Digital Audio Workstation):一人でレコーディング
- 7.16 音楽制作の質向上にはオーディオ・インターフェースは必須
- 7.17 マイクロホン:ダイナミック型とコンデンサ型
- 7.18 テクノロジーの発展は音楽も変えた:現代音楽からメディア・アートへ
第8章 映像メディアにおける音の役割
- 8.1 映像メディアに活かす音のチカラ
- 8.2 映像作品の世界では音も演出されている
- 8.3 演出効果のある環境音
- 8.4 しずけさの音,無音のテクニック
- 8.5 リアリティを演出する効果音
- 8.6 チャンネルはそのまま:テレビで多用される効果音
- 8.7 ナマオトの効果:本物の音よりも本物らしい音
- 8.8 笑いの神を降臨させる音:音で笑わされている
- 8.9 音と映像の同期の効果:シンクロのチカラ
- 8.10 音楽のムードの利用:寄り添う,ずらす
- 8.11 音と映像の対位法
- 8.12 定番曲で状況を伝える
- 8.13 テーマ曲の利用
- 8.14 ヴァルキューレのライトモチーフ
- 8.15 映像の世界で鳴っている音楽
- 8.16 音楽をテーマにしたドラマ
第9章 サウンドスケープ
- 9.1 サウンドスケープの意味するところ
- 9.2 サウンドスケープは環境,社会,文化と関わる
- 9.3 サウンドスケープは人間が意味づけ,構成した音環境
- 9.4 音響生態学はサウンドスケープの学問分野
- 9.5 マリー・シェーファーの提唱する音の分類法
- 9.6 歳時記に詠まれた四季折々の日本の音風景
- 9.7 おもてなし精神が生んだ日本の音文化
- 9.8 紀行文に残された明治の音風景
- 9.9 音の環境教育
- 9.10 シェーファーのめざすサウンドスケープ・デザイン
- 9.11 音名所,残したい音風景:地域の音文化の掘り起こし
- 9.12 音楽と環境:「楽音」対「騒音」の二項対立の解消
第10章 音のデザイン
- 10.1 音のデザインは芸術と工学の間にある
- 10.2 デザインのいろいろ,音のデザインのいろいろ
- 10.3 製品に快音化の時代が到来した
- 10.4 音が魅力のモノづくり
- 10.5 サイン音のあり方を探る
- 10.6 音楽的表現を用いたサイン音
- 10.7 音のユニバーサル・デザイン
- 10.8 音環境デザイン
- 10.9 音楽における音のデザイン的側面
- 10.10 失われたリアリティを再現する音のデザイン
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