音と音楽の科学

[表紙]音と音楽の科学

紙版発売
電子版発売

A5判/360ページ

定価2,508円(本体2,280円+税10%)

ISBN 978-4-297-11191-5

電子版

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書籍の概要

この本の概要

身の回りの音から心を打つ音楽まで,音と音楽をキソから深く理解したいあなたのための入門書です。包括的かつ体系的に,科学目線でやさしく解説します。

こんな方におすすめ

  • 音楽・音響を科学的に理解したい方

目次

第1章 音と聴覚のしくみ

  • 1.1 音を聴いて音楽を味わうまで
  • 1.2 物理的には音は空気の疎密波である
  • 1.3 音を運ぶ媒質
  • 1.4 純音(正弦波)は楽器の音や人間の声の最小要素
  • 1.5 純音は三角関数を使って表現できる
  • 1.6 波長は1つの波が伝わる距離
  • 1.7 周期的複合音は倍音が組み合わさってできる音
  • 1.8 弦楽器の弦の振動から倍音が出るしくみ
  • 1.9 管楽器の管の共鳴で倍音が出るしくみ
  • 1.10 スペクトルは各周波数成分のパワーを表す
  • 1.11 ノイズは連続スペクトルで表現される
  • 1.12 広帯域ノイズと狭帯域ノイズ
  • 1.13 うなり:周波数がわずかにずれた2つの純音はうなる
  • 1.14 聴覚のしくみ:空気の振動を電気信号に変えて脳に伝える
  • 1.15 音はまず外耳に入ってくる
  • 1.16 音を効率よく伝える鼓膜と耳小骨のコンビネーション
  • 1.17 基底膜の進行波が周波数の情報を伝える
  • 1.18 蝸牛の有毛細胞が神経インパルスを脳に伝える
  • 1.19 神経インパルスが発火する様子
  • 1.20 聴覚フィルタが周波数分析をしてくれる
  • 1.21 難聴は音楽を聴きすぎても生じる
  • 1.22 高齢社会で注目される老化に伴う聴力低下
  • 1.23 補聴器と人工内耳が聴覚の衰えを補ってくれる

第2章 音の物理と心理

  • 2.1 音の大きさとデシベル
  • 2.2 デシベルのメリット
  • 2.3 等ラウドネス曲線は聴覚の感度の周波数依存性を表す
  • 2.4 騒音レベルは聴感補正特性で補正した音圧レベル
  • 2.5 男と女のラウドネス(ラブソングではなく?)
  • 2.6 ラウドネスは音の大きさの比率関係を表す
  • 2.7 マスキングとは妨害して聞こえなくすること
  • 2.8 音の高さ(ピッチ)の2面性:トーン・ハイトとトーン・クロマ
  • 2.9 周期的複合音のピッチは,基本音がなくても基本音のピッチ
  • 2.10 絶対音感者は,周りの音をドレミで認識する
  • 2.11 ピッチが上昇(下降)し続ける無限音階
  • 2.12 音色は複雑な性質
  • 2.13 音色の印象的側面は3次元
  • 2.14 音色の識別的側面は聞き分ける力
  • 2.15 ものまね芸人は「らしさ」解析の達人
  • 2.16 音色とスペクトルの対応関係
  • 2.17 パワー・スペクトルの重心が音の鋭さ(明るさ,固さ)に影響する
  • 2.18 ホルマントが母音の識別の手がかりになる
  • 2.19 音の立ち上がり,減衰部が音色の違いに及ぼす影響
  • 2.20 位相スペクトル(倍音間の位相差)が音色に及ぼす影響
  • 2.21 ビブラートは音色を豊かにする
  • 2.22 楽器音の偶発的なノイズや変動が楽器音の「らしさ」を作る
  • 2.23  擬音語は音の感性を伝える言葉

第3章 音楽のしくみ

  • 3.1 メロディはピッチの変化の理解に基づく
  • 3.2 音階のしくみ:音の連なりが調性感をつくる
  • 3.3 音名は階名の周波数を決める
  • 3.4 ペンタトニック・スケール:世界に広がる5音音階
  • 3.5 12音技法:調性感を否定した音階
  • 3.6 音律は,音階の構成音の周波数を定める
  • 3.7 完全5度の美しい響きを基本にしたピタゴラス音律
  • 3.8 単純な整数比にこだわり,3度の音程も美しく響かせるようにした純正律
  • 3.9 平方根の導入で転調に耐えうるようにしたミーン・トーン,ウェル・テンペラメント
  • 3.10 単純な整数比の理想は捨てたが自由な転調を可能にした平均律
  • 3.11 メロディのゲシュタルト:メロディを感じる枠組み
  • 3.12 まとまり(ゲシュタルト)を形成するピッチのパターン
  • 3.13 音脈分凝:メロディが分離して聞こえるしくみ
  • 3.14 存在しない音が聞こえる
  • 3.15 ハーモニーの科学:協和を感じるしくみ
  • 3.16 協和感を決めるのは音と音の干渉
  • 3.17 倍音の干渉が協和音と不協和音を決める
  • 3.18 低音部では完全5度でも協和しない
  • 3.19 協和と不協和の絶妙なバランスが名曲をつくる
  • 3.20 リズムは音列のまとまり,テンポは音列の速さ
  • 3.21 リズムとテンポのしくみと表現
  • 3.22 リズムの心理学:時間間隔がリズムになる
  • 3.23 ちょうどいい加減のテンポ
  • 3.24 リズムのゲシュタルト:リズムを感じるしくみ
  • 3.25 リズムのゆらぎ:グルーブ感を出すために

第4章 音の空間性

  • 4.1 耳が2つある生態学的理由:眼鏡をかけるためではない
  • 4.2 水平面の音の定位:音の方向は両耳間の差から聞き分ける
  • 4.3 時間差の影響:左右の耳への到達時間差が音像定位に影響する
  • 4.4 位相差の影響:波の進みあるいは遅れが音像定位に影響する
  • 4.5 強度差の影響:音の大きい側に引きつけられる
  • 4.6 正中面の音の定位
  • 4.7 方向知覚の弁別限は音源の方向に依存する
  • 4.8 音の定位に及ぼす視覚の影響
  • 4.9 腹話術効果
  • 4.10 音の距離感:大きな音は近くに聞こえるけれど
  • 4.11 両耳聴取が音の空間性を感じさせる
  • 4.12 コンサート・ホールに求められるもの
  • 4.13 直接音,反射音,残響:適度なバランスが演奏音を豊かにする
  • 4.14 音楽の邪魔をする反射音
  • 4.15 残響時間:コンサート・ホールの特徴を表すモノサシ
  • 4.16 ホールに広がり感をもたらす横からの反射音
  • 4.17 遮音と吸音:音を遮断することと音を吸い込むこと
  • 4.18 コンサート・ホールの誕生と発展
  • 4.19 コンサート・ホールの形状

第5章 オーディオ機器の歴史と原理

  • 5.1 レコード:音楽を記録・再生する初のメディア
  • 5.2 録音テープ:磁石の性質を使って音を録音・再生する
  • 5.3 放送メディアは世界的ヒット曲を生み出した
  • 5.4 オーディオ機器:さまざまな音楽メディアを再生する装置
  • 5.5 アンプ:スピーカを鳴らすパワーを供給する
  • 5.6 スピーカ:電気信号を音に変換する
  • 5.7 ヘッドホンとイヤホン:自分だけで音楽を楽しむ機器
  • 5.8 オーディオ機器の音響特性
  • 5.9 音楽メディアに革命をもたらしたデジタル技術
  • 5.10 CDによってデジタル・オーディオの時代が訪れた
  • 5.11 デジタル化することの利点
  • 5.12 1ビット量子化方式(デルタシグマ変調方式)
  • 5.13 圧縮技術と音楽メディア:音楽を持ち歩く生活
  • 5.14 携帯型プレーヤはさらに進化を遂げた
  • 5.15 高臨場感を実現する音楽メディア
  • 5.16 忠実な3次元再生を目指すバイノーラル方式,トランスオーラル方式

第6章 楽器の分類とそのしくみ

  • 6.1 各種の楽器と音が出るしくみ:楽器の分類とその系統
  • 6.2 楽器がカバーする音域と音量
  • 6.3 打楽器:叩いて音を出す楽器
  • 6.4 木管楽器のなかま:吹いて音を出す楽器のいろいろ
  • 6.5 管の共鳴でメロディを奏でるエア・リード楽器
  • 6.6 リードの振動で音を発生させるリード楽器
  • 6.7 金管楽器のなかま:きらびやかなファンファーレの秘密
  • 6.8 弦楽器のなかま:弦の振動がメロディを奏でる
  • 6.9 撥弦楽器では弦を弾いて音を出す
  • 6.10 擦弦楽器では弦を擦って音を出す
  • 6.11 弦を叩いて演奏する打弦楽器
  • 6.12 鍵盤楽器のなかま:高度な音楽を奏でる工夫
  • 6.13 多彩な表現力を備えた鍵盤楽器の王者ピアノ
  • 6.14 オーケストラに匹敵する多彩な音色を備えたパイプ・オルガン
  • 6.15 歌:人間の声も楽器である
  • 6.16 オーケストラに打ち勝つベルカント唱法の秘密

第7章 電子楽器からDTMへ

  • 7.1 電気楽器の原理
  • 7.2 電子楽器:電気のチカラで音を作る
  • 7.3 ユニークな電子楽器
  • 7.4 デジタル技術が電子楽器にも恩恵をもたらした
  • 7.5 エフェクタ:音楽表現に彩りを添えるツール
  • 7.6 空間系エフェクタ:響きを人工的に作る
  • 7.7 モジュレーション系エフェクタ:ここちよい「ゆらぎ」を作る
  • 7.8 ひずみ系エフェクタ:わざとひずませてカッコいいサウンドを作る
  • 7.9 ひずみに美的価値を与えたエレキギターは反骨の楽器だった
  • 7.10 インサート系エフェクタ:過大入力を防ぐ
  • 7.11 イコライザ:スペクトルを変化させる
  • 7.12 MIDI:コンピュータとつながるインターフェース
  • 7.13 デスクトップ・ミュージック:コンピュータ1台で音楽制作
  • 7.14 ボーカロイド:ついに歌声もコンピュータで合成
  • 7.15 DAW(Digital Audio Workstation):一人でレコーディング
  • 7.16 音楽制作の質向上にはオーディオ・インターフェースは必須
  • 7.17 マイクロホン:ダイナミック型とコンデンサ型
  • 7.18 テクノロジーの発展は音楽も変えた:現代音楽からメディア・アートへ

第8章 映像メディアにおける音の役割

  • 8.1 映像メディアに活かす音のチカラ
  • 8.2 映像作品の世界では音も演出されている
  • 8.3 演出効果のある環境音
  • 8.4 しずけさの音,無音のテクニック
  • 8.5 リアリティを演出する効果音
  • 8.6 チャンネルはそのまま:テレビで多用される効果音
  • 8.7 ナマオトの効果:本物の音よりも本物らしい音
  • 8.8 笑いの神を降臨させる音:音で笑わされている
  • 8.9 音と映像の同期の効果:シンクロのチカラ
  • 8.10 音楽のムードの利用:寄り添う,ずらす
  • 8.11 音と映像の対位法
  • 8.12 定番曲で状況を伝える
  • 8.13 テーマ曲の利用
  • 8.14 ヴァルキューレのライトモチーフ
  • 8.15 映像の世界で鳴っている音楽
  • 8.16 音楽をテーマにしたドラマ

第9章 サウンドスケープ

  • 9.1 サウンドスケープの意味するところ
  • 9.2 サウンドスケープは環境,社会,文化と関わる
  • 9.3 サウンドスケープは人間が意味づけ,構成した音環境
  • 9.4 音響生態学はサウンドスケープの学問分野
  • 9.5 マリー・シェーファーの提唱する音の分類法
  • 9.6 歳時記に詠まれた四季折々の日本の音風景
  • 9.7 おもてなし精神が生んだ日本の音文化
  • 9.8 紀行文に残された明治の音風景
  • 9.9 音の環境教育
  • 9.10 シェーファーのめざすサウンドスケープ・デザイン
  • 9.11 音名所,残したい音風景:地域の音文化の掘り起こし
  • 9.12 音楽と環境:「楽音」対「騒音」の二項対立の解消

第10章 音のデザイン

  • 10.1 音のデザインは芸術と工学の間にある
  • 10.2 デザインのいろいろ,音のデザインのいろいろ
  • 10.3 製品に快音化の時代が到来した
  • 10.4 音が魅力のモノづくり
  • 10.5 サイン音のあり方を探る
  • 10.6 音楽的表現を用いたサイン音
  • 10.7 音のユニバーサル・デザイン
  • 10.8 音環境デザイン
  • 10.9 音楽における音のデザイン的側面
  • 10.10 失われたリアリティを再現する音のデザイン

著者プロフィール

岩宮眞一郎(いわみやしんいちろう)

日本大学芸術学部特任教授(音楽学科情報音楽コース),九州大学名誉教授。
九州芸術工科大学専攻科修了,工学博士(東北大学)。
九州芸術工科大学芸術工学部音響設計学科助手,助教授を経て,教授。その後,九州大学との統合により九州大学芸術工学研究院教授,定年により退職。
専門領域は,音響工学,音響心理学,音楽心理学,音響生態学。
音の主観評価,音と映像の相互作用,サウンドスケープ,聴能形成,音のデザイン等の研究に従事。
音のプロフェッショナルとして「音」の重要性を訴えている。