営業を変えるマーケティング組織のつくりかた
~アナログ営業からデジタルマーケティングへ変革する
2021年3月27日紙版発売
2021年3月19日電子版発売
上島千鶴 著
四六判/224ページ
定価2,068円(本体1,880円+税10%)
ISBN 978-4-297-11946-1
書籍の概要
この本の概要
昭和型のKKD(勘,経験,度胸)セールスからデジタルを活用したマーケティング型組織へと変革するステップを集大成
対面営業の神話が崩壊する中,オンライン・デジタル中心のマーケティング&セールスプロセスを構築するにはどうすればいいか。
デジタルマーケティングの第一人者が,過去13年間に渡り,中堅~大手200事業体を超えるマーケティング戦略プロジェクトの生の現場を通じて,「マーケティング組織5世代モデル(R)」を体系化。
「足で稼ぐ」「案件を嗅ぎ分ける」「地を這ってでも売上を積む」という従来型の営業手法を脱却するための必読書。
こんな方におすすめ
- 営業のあり方を変え,デジタル時代に対応していきたいと考えている営業マネージャー,マーケティング担当者(特にB2B企業)
著者の一言
みなさまの会社や所属している企業で,営業・生産・技術・管理と言えばどのような業務を担っている職種か,どのような役割の組織かおおよそ回答できると思います。では,「マーケティング」と聞いて何をするのか,役目は何か,明確に答えられる人は少ないでしょう。
「いや,知っているよ,わかっている」という方は,次のような回答ではないでしょうか。
- 販売を促進するプロモーション活動のこと
- 展示会を運営する組織
- 市場開発部や調査部のこと
「マーケティング」という言葉自体は外来語ですが,人によって意味していることが違うことが多く,会話をするうえで非常にやっかいです。
さらにデジタルを付けて「デジタルマーケティング」と言うと,
「SNSの公式アカウントを開設するの?」 「Webマーケティングと何が違うの?」 「メルマガでも始めるの?」
と聞かれるのが落ちでしょう。
このコロナ騒動で,デジタルマーケティングの取り組みにいっそう拍車がかかった企業も増えたかと思います。経営会議で「来期から我が社も本格的にデジタルマーケティングに取り組みます」と報告し,本質を理解していない経営陣の期待値が最高潮に上がり,「成果に期待できそうだ」「積極的に投資しようじゃないか!」という空気感で。しかし,予算を割きつつ,3年経ってもなかなか成果が出なくて悩む企業をたくさん見てきました。組織を作っては解散し,を3年単位で何度も繰り返している企業もあります。定義が曖昧な「デジタルマーケティング」と,人によって意味が違う「新規案件」この言葉の組み合わせが,どれだけの経営陣の妄想を駆り立て,空夢を見せたことでしょうか。
最近は,デジタル(データ)を活用し,ビジネスモデル自体を変えるという「デジタルトランスフォーメーション(DX)」とともに,デジタルマーケティングに対する期待値や投資額も増えています。しかし,DXに取り組む企業の多くは,“業務効率化”や“生産性向上”という目的が主体でしょう。最終的に製品価格や,お客さまにとって価値ある新しいソリューションに循環されればいいのですが,顧客視点でのマーケティングDXに取り組む企業はほんのわずかです。
DX推進室を設置するといっても,今のDXプロジェクトの参画メンバーにマーケティング脳を持っている方は参加されていますでしょうか?
「自社にとって,お客さまとはだれか?」 「何のために取り組むのか?」 「デジタルタッチポイントやデータをどう事業に活用するのか?」
そういった議論が抜け落ちていないでしょうか?
営業が会う前にすでにデジタル接点が存在し,コロナ前のように対面で直接会う機会が減った今,自社における顧客の定義,顧客との向き合い方,顧客と接点を持つ組織体制,コミュニケーション方法,デジタル接点データの活用範囲などを見直すタイミングにきていることは確かです。しかし,「ツールを入れれば解決する」という手段や方法論ばかりを追いかけている企業は,「Why」がなければ途中で息切れし失敗に終わります。着実に成果を出している企業は,コロナ前から
- 今の組織体制や売り方では成長することはできない
- グローバル化で生き残るには日本独自のやり方では不可能だ
- 無名な別業態から競合が出てきて,自社のシェアが侵食されつつある
など経営陣やマネジメント層の危機感が何かしら存在します。その危機感は,上層部だけでなく,現場まで広く伝わっているのが特徴です。Howを追いかける前に,なぜ取り組む必要があるのか,明確なWhy(理由)があります。
動機や原動力の前提となる理由があり,デジタル接点やデータを活用した新しい仕組みやマーケティングに取り組むことによって,結果的に
- 組織や体制・配置替えをすることになった
- 人材教育に投資するようになった
- 現場の意識も変わっていった
などのプロセスを経て,顧客を中心に徐々にビジネスモデル自体が変わっていくという順番が現実解です。
「自社の業態を180度変えよう!発想の転換だ」と,明確な将来ビジョンや社会的使命(パーパス)を社長自ら打ち出し,トップダウンで進められる企業はまだ幸せです。現場が納得できるかは別として,会社の中長期戦略や将来ビジョンについていき,自身の考え方や行動・習慣を変えるだけですから,比較的容易です。しかし,現場の課長クラスの中間層からボトムアップで進めるには,上司や部下の意識,他部門の意識を変えることに近いため,ひと筋縄ではいきません。過去の成功体験や固定概念をくつがえすためには,「目から鱗」とだれもが思うような成功体験や刺激が必要で,息の長い地道な取り組みを続けるしかないのです。
私はさまざまな現場のマーケティングプロジェクトに伴走するなかで,マーケティング組織の立ち上げや組織成長には,傾向として世代が5つに分かれることを見出しました(マーケティング組織5世代モデル)。これからどのように進めていけばいいのか,どうしたら成果を出し続ける強い組織にできるかをまとめたのが本書です。
横文字はできる限り日本語にしましたが,訳すと本来の意味が伝わらないものはそのままカタカナで使用します。マーケター職より,執行役員や事業部長クラス,営業職の方に広く読んでいただきたいと思います。
目次
はじめに
序章 昭和型の営業,その先へ
- マーケティングの定義は“迷宮入りした未解決事件”?
- マーケティングとは,事業戦略を組み立てて実行する考え方や仕組みのこと
- 成果を出すまでの道筋を考えるためにマーケ脳が必要
- 昭和型の営業価値観を早く捨てよう
- オンライン化で営業の在り方自体が問われている
- 必要とされるのはデジタルマーケターではなくビジネスマーケター
- 営業組織体制の6つの型と抱える課題
- マーケティング組織の5つの世代と傾向
1章 第1世代/分散型 ~マーケティング機能が社内の各組織に分散している
- 活動を顧客視点のプロセスとしてつなげて見る文化がない
- コラム 社内決裁や稟議フローを理解しないままペルソナ設定をしても“絵に描いた餅”になりかねない
- 点だけ最適化しても最大効果は得られない
- マーケティング活動や無形資産を棚卸する
- マーケティングという言葉や役割を明文化する
- デジタルマーケティングについて定義し,事業部や社内メンバーが腹落ちするまで説明する
- コラム デジタルマーケティングによって営業の動き方はどう変わるか
- 各社はどこに組織を設置しているのか
2章 第2世代/機能集約型 ~マーケティング機能が集約されているが評価指標が売上や受注にはひもづいていない
- 高機能なツールを導入しても,使いこなせずに高い利用料を払うことに
- マーケティング方針や優先順位など戦略性を持つ
- マーケティング&セールスプロセスを定義する
- 第2世代のインサイドセールス(IS)は失敗する
3章 第3世代/ファネル型 ~マーケティング戦略があり,活動の貢献度が把握できている
- リードは獲得できても,関係醸成の方法がわからない
- 「事業全体から見るとどの程度の貢献度か?」という視点で評価する
- 営業との連携方法を議論し,ルール化する
- 営業生産性から逆計算する
- 行動履歴すら残らない企業で,MAツールのスコアリング機能を使っても意味がない
- インサイドセールスの役割範囲を明確にする
- 顧客の購買プロセスを意識してキラーコンテンツを作る
- コラム コンテンツ制作の3つの注意点
- デジマ×インサイドセールス(IS)組織の型
- BtoBの年間マーケ予算は売上の何%か
- マーケティング戦略を役員会で説明して理解を得る
- コラム ある企業の役員会
4章 第4世代/ダブルファネル型 ~新規案件の創出,既存深堀・深耕のためにデジタル接点を活用できている
- 複数商材を持つ企業において,特定企業との取引額をいかに最大化するか
- 日本の営業スタイルはすでにABM
- コラム ABMの成り立ち
- デジタル接点を活用したマーケティングの3つの種類
- 既存取引先の新規部門への横展開
- 重点パートナーとの取引拡大
- ABMシステム実装で躓く4つのポイント
5章 第5世代/サイクル型 ~顧客を軸として接点・接触サイクルとして施策の影響範囲が見えている
- 顧客をキーにすべての活動を集約する
- DXの一環? 迷走する企業
- 部門の主導権争いしているうちは5世代ではない
- マーケティング脳を持つ人材をDXの議論に入れる
- “DX推進しているふり部”になっていないか?
- 組織を再編成する
- 販売チャネルとパートナー(PRM)を見直す
- 予測マーケティングのAI化に取り組む
- IoTデータをマーケティングに利用する
- マーケ&営業の7つの未来予想
おわりに
- 早く新しい取り組みに挑戦しないと,淘汰される時は一瞬
- 限られたリソースで成果を最大化させるには
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