秋の星座6

6カシオペヤ座

 

学 名
Cassiopeia(略号 Cas)
英語名
Cassiopeias
設 置
古代ギリシア
面 積
598平方度

天体観測の見どころ

カシオペヤ座には秋の銀河が横たわっており、銀河に沿って多数の散開星団と散光星雲があります。散開星団には、2つのメシエ星団をはじめ眼視の対象としても美しいものが多い散開星団の宝庫です。この星域を双眼鏡で散策するだけでもいくつもの星団が視野に飛び込んできます。散光星雲は、残念ながら眼視の対象としては淡く、いずれも天体写真で人気があります。

1星雲星団の観察

M52散開星団(=NGC7654)

  • 位置(分点2000.0)赤経23h24.2m,赤緯+61°35’ 視直径12’,等級6.9,星数100

ケフェウス座との境界に近い美しい星団です。メシエ天体の散開星団としては小型で、微光星が集中しています。小望遠鏡では、一見散光星雲のように見えますが、表面がざらついて明るい星々が浮き出て見えてきます。星団の西端に1つだけ明るい星があり、星団の特徴を印象づけています。

NG7635散光星雲 愛称:バブル星雲(Bubble Nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経23h20.7m,赤緯+61°12’長径15’×短径8’
  • タイプHⅡ発光
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)

M52散開星団の南西40’にある散光星雲です。眼視的には観察することは困難で、天体写真の対象となります。中心部には風船のように見える部分があることから「バブル星雲」の愛称があります。このバブル構造は、中心近くの大質量星(ウォルフ・ライエ星)の表層部分が吹き飛ばされた恒星風でできています。

M103散開星団(=NGC581)

  • 位置(分点2000.0)赤経01h33.2m,赤緯+60°42’ 視直径6’,等級7.4,星数25

δ星のすぐ東で探しやすい位置にあります。M52星団よりもさらに小さく、半月状に微光星が集まっています。星粒はM52よりは明るいですが星の密集した星団です。星団の東西端に乗っている星が目立ち、特に西端の星が明るく輝きます。

NGC7789散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経23h57.0m,赤緯+56°44’ 視直径15’,等級6.7,星数300

微光星の密集した大星団で、メシエ番号はないもののこれほどのすばらしい観察対象は全天でも有数です。口径10cmでは全体が星に分離しては見えず、全体がのっぺりした淡い円盤状に見え、その中に数個の星が分かります。口径20cmでは微光星が非常に密集した大集団が見えてきて、素晴らしい星団ということが分かります。

NGC7788散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経23h56.7m,赤緯+61°24’ 視直径9’,等級9.4,星数20

NGC7790散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経23h58.4m,赤緯+61°13’ 視直径17’,等級8.5,星数40

NGC7788とNGC7790は、ともに小型の散開星団で、わずか離角20’で隣接しています。望遠鏡の低倍率で同じ視野に収まります。南東(画面の左下)がNGC7790で、小型ながらまとまりの良い星団です。さらに小さな北西(画面の右上)がNGC7788で、天の川の微光星中にあって、星団があるのを見逃してしまいそうです。

NGC129散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経00h29.9m,赤緯+60°14’ 視直径21’,等級6.5,星数35

微光星の広がる大型の星団です。眼視では、星団の中の明るい星がU字を描くように見えます。星団はその周囲にも広がりますが、その周囲も微光星がいっぱいで、どこまでが星団か分からないほどです。

NGC457散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経01h19.1m,赤緯+58°20’ 視直径13’,等級6.4,星数80

φ星を含み北西に広がる美しい星団です。小型ですが、輝星が多くまた微光星もいっぱいで見ごたえがあります。星団の南東部の輝星がφ星です。写真では色の豊富な星団であることが分かります。

NGC663散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経01h46.0m,赤緯+61°15’ 視直径16’,等級7.1,星数80

微光星がいっぱいの粒ぞろいの星団です。星の集団がこじんまりとまとまっています。明瞭で美しい星団です。小望遠鏡から楽しめる、M天体に入っていてもおかしくない見ごたえのある星団です。

NGC281散光星雲

  • 位置(分点2000.0)赤経00h52.9m,赤緯+56°37’長径27’×短径23’
  • タイプHⅡ発光
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)

小型の散光星雲です。カシオペヤ座の散光星雲の中では最も明るく、眼視では星雲の中にある6等星の周囲がにじんでいるように見えます。しかし、やはりその姿を楽しむためには、赤外光を写す天体写真が最良です。

IC1805散光星雲 愛称:ハート星雲(Heart Nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経02h32.7m,赤緯+61°27’長径60’×短径60’
  • タイプHⅡ発光

IC1848散光星雲

  • 位位置(分点2000.0)赤経02h51.2m,赤緯+60°26’長径120’×短径55’
  • タイプHⅡ発光
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)

IC1805とIC1848は、ペルセウス座との境界に近い散光星雲です。いずれも眼視では観察できない淡いもので、天体写真の対象となります。西側(画面右)のIC1805は、その形から「ハート星雲」の愛称があります。この画像の南(下側)にある星団は、有名なペルセウス座の二重星団(h-χPer)です。

2重星の観察

σ星

  • 位置(分点2000.0)赤経23h59.0m,赤緯+55°45’
  • 主星5.0等,伴星7.2等,位置角326°,離角3.1”(2017年),スペクトルB1V

小さな離角で光度差のコントラストがあります。口径10cmで観察可能です。明るい黄色の主星に触れ合うように、小さな灰色の伴星がついています。観察にはシーイングの影響が大きく、シーイングの良い夜に観察しましょう。

Σ3053星(=HIP 207)

  • 位置(分点2000.0)赤経00h02.6m,赤緯+66°06’
  • 主星6.0等,伴星7.2等,位置角70°,離角15.2” (2018年),スペクトルG9III+A1V

色彩のコントラストが美しいペアです。琥珀色の主星と鮮やかな青い伴星です。小望遠鏡から楽に観察できる対象です。

21番星

  • 位置(分点2000.0)赤経00h45.7m,赤緯+74°59’
  • 主星5.7等,伴星10.6等,位置角161°,離角35.6” (2015年),スペクトルA2IV

カシオペヤ座の北端部に21番星と23番星が並んでいて、23番星も同じ視野に入ります。光度差のある重星ですが、十分な離角があるので小望遠鏡で楽に観察できます。主星は白色で、とても小さな伴星がついています。

η星

  • 位置(分点2000.0)赤経00h49.1m,赤緯+57°49’
  • 主星3.5等,伴星7.4等,位置角326°,離角13.6” (2020年),スペクトルG1V+M

カシオペヤのWを構成するα星とγ星の間にあります。明るい黄色の主星に光度差のある薄茶色のペアで素晴らしい観察対象です。480年周期の連星系で現在は離角の大きな時期にあたっています。小口径でも美しく観察できます。

Σ70星(=HIP 4212)

  • 位置(分点2000.0)赤経00h53.8m,赤緯+52°42’
  • 主星6.3等,伴星9.5等,位置角247°,離角9.0” (2016年),スペクトルA0

光度差も離角も適度で観察しやすい対象です。明るいレモン色の主星に小さな伴星がついています。

35番星

  • 位置(分点2000.0)赤経01h21.1m,赤緯+64°39’
  • 主星6.3等,伴星8.6等,位置角341°,離角57.4” (2018年),スペクトルA2V

とても離角の広い対象です。この重星は色の対比が愛らしく、主星がレモン色で伴星は濃い赤色をしています。コントラストを楽しんでください。

Ψ星

  • 位置(分点2000.0)赤経01h25.9m,赤緯+68°08’
  • 主星A 4.7等,伴星C 9.2等,位置角128°,離角20.3” (2007年),スペクトル K0III
  • 主星A 4.7等,伴星D 10.0等,位置角131°,離角19.1” (2006年)
  • 伴星C 9.2等,伴星D 10.0等,位置角253°,離角2.9” (2018年)

光度差がありますが、なかなか見ごたえのある三重星です。主星Aはオレンジ、伴星Bは青、伴星Cは少し赤みがあります。色の対比も楽しめます。

h1088星(=HIP 7963)

  • 位置(分点2000.0)赤経01h42.3m,赤緯+58°38’
  • 主星6.3等,伴星9.8等,位置角168°,離角19.5” (2015年),スペクトルB7III A

可愛らしい観察対象で、適度な光度差に広い離角があります。薄いレモン色をした主星に小さな伴星がついています。視野内には微光星が溢れています。

Σ191星(=HIP 9586)

  • 位置(分点2000.0)赤経02h03.2m,赤緯+73°51’
  • 主星6.2等,伴星9.1等,位置角196°,離角5.3” (2016年),スペクトルA5III

3等級の光度差があり狭い離角の重星で、分離できるかどうか楽しめる対象です。シーイングにより見え方が大きく左右されます。明るい黄白色の主星に、ほとんどくっつきそうで消え入りそうな小さな伴星があります。

ι星

  • 位置(分点2000.0)赤経02h29.1m,赤緯+67°24’
  • 主星A 4.6等,伴星B 6.9等,位置角230°,離角2.9” (2017年),スペクトル A5
  • 主星A 4.6等,伴星C 9.1等,位置角117°,離角6.7”(2015年),スペクトルA5

見ごたえのある三重星です。これもシーイングの良否で見え方が大きく左右されます。主星Aと伴星Bは離角が小さく、シーイングが悪いと主星の明るさに伴星が飲み込まれてしまいます。また伴星Cは光度差がありますが、こちらはより見やすいでしょう。主星Aと伴星Bは、公転周期620年の連星系を成しています。主星Aは黄色,伴星Bは青紫色、伴星Cは青色です。