秋の星座5

5ケフェウス座

 

学 名
Cepheus(略号 Cep)
英語名
Cepheus
設 置
古代ギリシア
面 積
588平方度

天体観測の見どころ

ケフェウス座には、眼視の対象となる星雲星団はあまり見当たりませんが、天の川の中にあって天体写真の被写体となる散光星雲があります。また重星はたいへん豊富にあり、まさに重星の宝庫と言いえましょう。ケフェウス座は天の北極に近いために、夏から冬にかけて観察できる時間帯が長く得られます。

1星雲星団の観察

NGC6946銀河

  • 位置(分点2000.0)赤経20h34.8m,赤緯+60°09’ 視直径13.0’x13.0’,等級8.8,型SAB

NGC6939散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経20h31.4m,赤緯+60°38’ 視直径7’,等級7.8,星数80
NGC6946銀河(左)とNGC6939散開星団(右)(画角2.0°×1.3°)

銀河と散開星団が隣接して見られる珍しい星域です。この付近は天の川の中にありますが、通常は星間塵にさえぎられて系外銀河は少ないものです。その数少ない銀河のわずか離角1°に散開星団が寄り添っている不思議な光景です。

NGC6946銀河は大型の銀河ですがとても淡く、小望遠鏡での観察は困難です。口径20cmで銀河の腕のような濃淡が見えてきます。NGC6939星団は眼視的にも見ごたえのある素晴らしい星団です。おびただしい微光星があふれて美しい観察対象で、円形ではなく方形に集団を作っている特徴があります。視野は天の川の中で微光星が溢れています。

IC1396散光星雲

  • 位置(分点2000.0)赤経21h39.1m,赤緯+57°30’長径170’×短径140’
  • タイプHⅡ発光
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)

ケフェウス座の南側に広がる散光星雲です。たいへん淡く眼視での観察は出来ませんが、天体写真で人気のある被写体です。星雲の北端にはμ星があり、μ星はその独特の深い赤色から「ガーネットスター」の愛称で知られています。

NGC7822散光星雲

  • 位置(分点2000.0)赤経00h03.6m,赤緯+68°37’長径65’×短径20’
  • タイプHⅡ発光

Ced214散光星雲

  • 位置(分点2000.0)赤経00h04.7m,赤緯+67°10’長径50’×短径40’
  • タイプHⅡ発光
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)

カシオペヤ座との境界に近い散光星雲です。NGC7822も淡い散光星雲で、眼視ではなく天体写真でのみ存在が分かります。NGC7822は写真の北端部分で、その南に広がる星雲にはCed214の番号が与えられています。

2重星の観察

κ星

  • 位置(分点2000.0)赤経20h08.9m,赤緯+77°43’
  • 主星4.4等,伴星8.3等,位置角120°,離角7.3” (2016年),スペクトルB9III

みごとな観察対象です。光度差があり離角が適度に近く、小望遠鏡で分離できるかを楽しみながら観察できます。青白色の主星の近傍にけし粒のように小さな青い伴星があります。

Σ2751星(=HIP 103810)

  • 位置(分点2000.0)赤経21h02.1m,赤緯+56°40’
  • 主星6.2等,伴星6.9等,位置角356°,離角1.6” (2021年),スペクトルB8III

ほぼ等光度の主星と伴星が極めて近接しています。大望遠鏡でもシーイングの良い時でないと分離できません。データ上は口径10cmで観察可能ですが、15cm以上の口径は欲しいところです。

Σ2790星(=HIP 105259)

  • 位置(分点2000.0)赤経21h19.3m,赤緯+58°37’
  • 主星5.8等,伴星9.3等,位置角45°,離角4.6” (2015年),スペクトルM1I+B2+B3

光度差があり小望遠鏡では観察困難ですが、チャレンジしがいのある重星です。赤く明るい主星に消え入りそうな青い伴星があります。さらに主星は離角0.1”で5.9等と7.4等の近接する不可視の重星です。

β星

  • 位置(分点2000.0)赤経21h28.7m,赤緯+70°34’
  • 主星3.2等,伴星8.6等,位置角250°,離角13.6” (2020年),スペクトルB1IV

すばらしい観察対象です。光度差がありますが、十分な離角がありますので小望遠鏡でもなんとか分離できます。見えるかどうかわくわくと楽しめる重星です。主星はとても明るい青白色で、とても小さく橙色の伴星があります。さらに主星は離角0.2”で3.2等と6.6等の近接する不可視の重星です。

Σ2816星(=HIP 106884)

  • 位置(分点2000.0)赤経21h39.0m,赤緯+57°29’
  • 主星A 5.7等,伴星C 7.5等,位置角120°,離角11.8” (2018年),スペクトル O6f
  • 主星A 5.7等,伴星D 7.5等,位置角339°,離角20.6” (2018年),スペクトル 06f

楽しく観察できるユニークな三重星です。このΣ2816星は、散開星団IC1396の中にあります。主星は明るい白色で、伴星Cは緑色、伴星Dは紫色に見えます。

Σ2840星(=HIP 107930)

  • 位置(分点2000.0)赤経21h52.0m,赤緯+55°48’
  • 主星5.6等,伴星6.4等,位置角197°,離角18.1” (2018年),スペクトルB6IV-V

観察しやすい重星です。純白の主星と伴星で、光度差、離角とも重星の見本のようなペアです。

ξ星

  • 位置(分点2000.0)赤経22h03.8m,赤緯+64°38’
  • 主星4.5等,伴星6.4等,位置角274°,離角8.2” (2022年),スペクトルA3

公転周期3800年の連星系を作っています。最も近接した時には2”角ほどになりますが、現在は離角の広い時期に当たっています。また公転運動も少ない時期で、今後数百年間はあまり位置を変えません。さらに主星は離角0.1”で4.8等と6.3等の近接する不可視の重星です。

Σ2883星(=HIP 109474)

  • 位置(分点2000.0)赤経22h10.6m,赤緯+70°08’
  • 主星5.6等,伴星8.6等,位置角253°,離角14.2”(2016年),スペクトルF2V

小望遠鏡で楽に観察しやすい対象です。明るい白色の主星とグレーの伴星のペアです。

δ星

  • 位置(分点2000.0)赤経22h29.2m,赤緯+58°25’
  • 主星4.2等,伴星6.1等,位置角191°,離角41.0” (2018年),スペクトルF5I

主星は有名な変光星です。セファイド型変光星の名称はこの星から由来しています。意外と知られていませんが、美しい二重星でもあり、主星は黄色で、6等の伴星は深青色でコントラストが美しい離角の広いペアです。

ο星

  • 位置(分点2000.0)赤経23h18.6m,赤緯+68°07’
  • 主星5.0等,伴星7.3等,位置角223°,離角3.4” (2020年),スペクトルG8III

公転周期1505年の連星系を作っています。現在は、離角を少しずつ広げている時期にあります。シーイングが悪いと小望遠鏡では観察困難でしょう。オレンジ色の主星に青い伴星のコントラストも楽しめます。

Σ320星(=HIP 14417)

  • 位置(分点2000.0)赤経03h06.1m,赤緯+79°25’
  • 主星5.7等,伴星9.1等,位置角232°,離角4.6” (2020年),スペクトルM2.5III

光度差があり、理想的なシーイングでないと小望遠鏡では意外と観察の難しい対象です。赤みがかったオレンジ色の主星と青い伴星のペアです。