秋の星座18

18ペルセウス座

 

学 名
Perseus(略号 Per)
英語名
Perseus
設 置
古代ギリシア
面 積
615平方度

天体観測の見どころ

ペルセウス座の星雲星団は、天体観測の見本市のようにバラエティに富んだ天体が数多く存在します。二重星団を筆頭に、観察の対象として,天体写真の対象として、ぜひ望遠鏡を向けたい個性的な天体が目白押しです。

1星雲星団の観察

h-χ散開星団(=NGC869,NGC884)通称:ペルセウス座の二重星団(Double cluster)

・NGC869
位置(分点2000.0)赤経02h19.0m,赤緯+57°09’ 視直径29’,等級5.3,星数200
・NGC884
位置(分点2000.0)赤経02h22.4m,赤緯+57°07’視直径29’,等級6.1,星数115

全天でもとりわけよく知られた大人気の散開星団です。大型でよく似た星団がわずか28’の間隔で寄り添っているので「二重星団」の愛称で親しまれています。肉眼でも、ボーッとしたやや楕円状に星雲状の存在を楽に認められます。この辺りは秋の天の川の中にあり、星団のあるところだけ天の川が濃くなっているように見えます。双眼鏡では星の集団である散開星団の様子がはっきりわかるようになり、望遠鏡の低倍率でふたつの散開星団が視野一杯に広がります。

天体写真でも、被写体として人気があります。標準レンズでも星ではない広がりを持った天体が寄り添っていることが写し出され、セミ望遠レンズ以上の焦点距離で星団がしっかりと撮影できます。
とても明瞭な散開星団であるにもかかわらず、不思議なことにメシエ番号はついていません。その代わりといいましょうか、ふたつの散開星団には、本来は恒星に付記されるバイエル符号がつけられています。西側のNGC869が「h(エイチ)」,東側のNGC884が「χ(カイ)」で、「h-χ散開星団」とも呼ばれ、むしろこちらの方が正式な名称といえます。両散開星団はいずれも7330光年のほぼ等距離にあり、空間的にも隣接している天体です。h(NGC869)の方が星数が多く密集しており、χ(NGC884)の方がややばらけた感じがあります。

M34散開星団(=NGC1039)

  • 位置(分点2000.0)赤経02h42.0m,赤緯+42°47’ 視直径35’,等級5.2,星数60

このM34散開星団も大型で、双眼鏡で楽に見られます。アルゴルの西に双眼鏡を振るとすぐに見つかります。密集度は少ないものの広がりは満月の視直径ほどあります。大型の望遠鏡よりも小望遠鏡に向いた対象です。低倍率で観察しましょう。面白いことに、この星団には等光度の重星がいくつもあり、この星団のユニークな印象を与えてくれます。大型ですから、写真の被写体としても好適です。

M76惑星状星雲(=NGC650,651)愛称:小亜鈴星雲(Little Dumbbell nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経01h42.4m,赤緯+51°34’ 視直径65”
  • 写真等級12.2,視等級10.1,中心星等級15.9

とても個性的でたいへん興味深い観察対象です。まるでヒョウタンのように、2つの星雲の途中がくびれるようにくっついています。北東側がやや大きいです。亜鈴状星雲(M27こぎつね座)を小さくしたように見えることから「小亜鈴星雲」の愛称があります。「小」といっても惑星状星雲の中では大型の部類に入ります。視等級10.1等ですからたいへん暗い天体と思われがちですが、眼視的には数字以上に明るく感じ、倍率を上げてもよく耐えます。これは、惑星状星雲の光の波長が人間の目の感度に合っているためです。

NGC1023銀河

  • 位置(分点2000.0)赤経02h40.4m,赤緯+39°04’ 視直径8.6’x4.2’,等級9.3,型SB

アンドロメダ座との境界付近にある小型の淡い銀河です。淡いために小望遠鏡での観察には不向きでしょう。口径10cm以上で、中央部が明るく楕円状の姿が分かります。視野の中には多くの微光星があり楽しませてくれます。

NGC1499散光星雲 愛称:カリフォルニア星雲

  • 位置(分点2000.0)赤経04h00.7m,赤緯+36°37’長径160’×短径40’
  • タイプHⅡ発光
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)

ξ星のすぐ北にある大型の散光星雲です。眼視的に見ることはできず、赤外光に感度のある天体写真の対象となります。長く伸びたその形がアメリカ合衆国のカリフォルニア州の形に似ていることから「カリフォルニア星雲」の愛称で親しまれています。
多くの散光星雲は、このように独特の赤い色をしていますが、これは、水素原子が励起して発する色です。このカリフォルニア星雲にエネルギーを供給している天体は星雲の南の輝星(ξ星)であると考えられています。

NGC1528散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経04h15.4m,赤緯+51°14’ 視直径23’,等級6.4,星数80

ペルセウス座の東端にある大型で素晴らしい散開星団です。双眼鏡でも数個の星が分かり十分に楽しめることでしょう。小望遠鏡では、低倍率で何気なく見ると、まばらな星の集まりのように見えますが、そらし目で見ると微光星が星雲状に広がる星の大集団だと分かります。口径10cm以上ではさらに美しくなり、星の配列も分かるようになります。ロス卿は「星のつづる環」と評しています。

Mel20散開星団 ペルセウス座α星付近

  • 位置(分点2000.0)赤経03h26.9m,赤緯+49°07’ 視直径185’,等級1.2

ペルセウス座の主星ミルファク(α星)の周囲には5~6等の明るい星数十個がおよそ3°の範囲にまとまっています。もちろん、この様子は肉眼でも分かるものです。これらの星は散開星団を形成していて、メロットのカタログで「Mel 20」と登録されています。あまりに広いので、望遠鏡での観察には適さず、双眼鏡や天体写真の対象となります。双眼鏡でのながめは素晴らしく、明るく力強い星々の集団に圧倒されます。

2重星の観察

η星

  • 位置(分点2000.0)赤経02h50.7m,赤緯+55°54’
  • 主星3.8等,伴星8.5等,位置角301°,離角28.7” (2018年),スペクトルM3I-II

小望遠鏡で観察しやすい重星です。初心者向けの天体として広く紹介されています。濃い黄色の主星と深みのある青色の伴星です。光度差のコントラストと色のコントラストの両方を楽しめます。

20番星

  • 位置(分点2000.0)赤経02h53.7m,赤緯+38°20’
  • 主星5.4等,伴星9.7等,位置角237°,離角13.9” (2016年),スペクトルF4IV

光度差のコントラストを楽しみたい重星です。主星はオレンジ色で、これに消え入りそうな伴星がついています。主星はさらに5.8等星と6.8等星が離角0.2”で近接した連星ですが、これを分離することは大望遠鏡でも困難です。

Σ331星(=HIP 14043)

  • 位置(分点2000.0)赤経03h00.9m,赤緯+52°21’
  • 主星5.2等,伴星6.2等,位置角85°,離角12.0” (2019年),スペクトルB7V+B9V

主星・伴星とも明るく観察しやすい重星です。主星のレモン色に伴星は青緑色で、色のコントラストが美しく観察できます。

Σ382星(=HIP 15876)

  • 位置(分点2000.0)赤経03h24.5m,赤緯+33°32’
  • 主星5.8等,伴星9.3等,位置角153°,離角4.7” (2019年),スペクトルA0V

4等級近く光度差のあるペアで、離角もかなり近いため、意外と観察しづらい対象です。明るい黄白色の主星に小さい青色のコブがあるような見え方です。注意して探す必要があり、これに気づくと嬉しくなってしまいます。

ζ星

  • 位置(分点2000.0)赤経03h54.1m,赤緯+31°53’
  • 主星2.9等,伴星9.2等,位置角208°,離角12.8” (2020年),スペクトルB1I

光度差の極めて大きな対象です。まるでオリオン座のリゲルを小型にしたような印象があります。とても明るい青白色の主星の回折リングの中に消えそうに小さな青い伴星があります。

ε星

  • 位置(分点2000.0)赤経03h57.9m,赤緯+40°01’
  • 主星2.9等,伴星8.9等,位置角12°,離角8.8” (2020年),スペクトルB0.5V+A2V

このε星もζ星によく似た光度差の大きなペアです。離角はさらに小さく、ζ星よりも難易度は上がります。明るいレモン色の主星に深青色の伴星が接触するようにあります。大きな光度差と色のコントラストを楽しめます。

56番星

  • 位置(分点2000.0)赤経04h24.6m,赤緯+33°58’
  • 主星5.8等,伴星9.3等,位置角13°,離角4.2” (2017年),スペクトルF4V

やや光度差があり離角も狭い、重星好きの観察者にはわくわくするような観察対象です。金色の主星と伴星です。すぐ北10’にはほぼ等光度の55番星があり、双眼鏡級の重星を作っています。

3ペルセウス座流星群

活動期間:7月22日~8月24日。極大8月12~13日頃(太陽黄経140.0°)。極大ZHR100。対地速度59km/s。

ペルセウス座とカシオペヤ座の境界付近に放射点を持ち、ちょうどお盆のころに活動のピークを迎える流星群です。毎年安定して年間最大級の出現を見せる流星群ですので、夏休みの観察会が各地で開かれるなど、たいへん人気のある流星群です。速く、明るい流星や、痕こんを残すものも多いため、見ごたえがあります。夜明け前に放射点が高く上るので、宵よりも夜明け前の方が多くの流星を見ることができます。20時頃は出現数は少ない一方、長経路の印象的な流星が見られます。極大から半日ずれても4分の3程度の出現数なので、もし極大時刻が昼間になってしまった場合にも、前後の夜に十分多くの流星を楽しめます。極大から1日ずれると約半分、2日だと約4分の1の出現数になります。
この流星群の母天体は、公転周期133年のスイフト・タットル彗星(109P)です。この彗星は1862年にスイフトとタットルにより発見されましたが、流星群の軌道との類似性がスキャパレリにより指摘されました。彗星が流星群の母天体となっていると考えられるようになった、これが史上最初の事例です。スイフト・タットル彗星の1992年の回帰年と前年の1991年には、平年の2倍以上の流星の出現が見られました。

ペルセウス座流星群(NASA:Fred Bruenjes)
8月13日2時30分頃(東京)でみるペルセウス座流星群のイメージ
スイフト・タットル彗星の軌道。地球は8月12~13日頃にこの彗星の軌道に近づき、この頃にペルセウス座流星群が活動します。