春の星座1

1おおぐま座

大熊座

学 名
Ursa Major (略号 UMa)
英語名
The Great Bear
設 置
古代ギリシア
面 積
1280平方度

天体観測の見どころ

1星雲星団の観察

おおぐま座は、天の川から離れた位置(銀緯が高い位置)にあります。このような星域は、天の川銀河の星間物質が少なく遠方まで見通せるために、多数の系外銀河を観察できます。おおぐま座では、M81、M82、M101銀河が特に観察しやすい対象となります。

M81・M82銀河

M81(=NGC3031)
位置(分点2000.0)赤経09h55.6m,赤緯 +69°04’ 視直径24.0’x 13.0’,等級6.9,型SA
M82(=NGC3034)
位置(分点2000.0)赤経09h55.8m,赤緯 +69°41’ 視直径12.0’x 5.6’,等級8.4,型IO
北がM82銀河、南がM81銀河。

おおぐま座の北西部にある明るい系外銀河のペアです。両銀河とも明るい対象で、小口径の望遠鏡での観察にも適しています。両銀河はハの字に並んでおり、30倍程度の低倍率で同一視野に収まる様子を楽しめます。M81はM82より大きく典型的な渦巻き銀河で、ぼんやりとした楕円状の光芒として観察できます。M82はM81のすぐ北側にあり、眼視的には細長い紡錘状に見えますが、中心部が複雑に入り込んだ不規則銀河です。両銀河は空間的にも近接しています。M82はM81の重力の影響を受けることで、銀河内のガスが活性化し大量の星を生み出しているスターバースト銀河です。この星野は、銀河から離れているにもかかわらず、微光星が多くにぎやかな視野を楽しめます。

爆発的に星を生み出すM82銀河
チャンドラ衛星(X線)、ハッブル宇宙望遠鏡(可視光)、スピッツァー衛星(赤外線)のデータを統合処理した画像。
(出典 NASA webサイト)

M97惑星状星雲(=NGC3587)愛称:ふくろう星雲(Owl nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経11h14.8m,赤緯 +55°01’ 視直径194”
  • 写真等級12.0,視等級9.9,中心星等級16.0
ロス卿(William Parsons,3rd Earl of Rosse 1800-1867 英)が、口径1.8mの巨大反射望遠鏡でスケッチしたM97惑星状星雲。ロス卿は「2つの星が中央から離れたところにあり、それぞれを暗部がらせん状に取り囲んでいる。」と記しています。

1781年メシャンの発見した大型の惑星状星雲。不規則な円盤状で内部に2か所の暗部があります。これを、ロス卿が「ふくろうの顔」に見立てて「ふくろう星雲」の愛称があります。β星の近くですので探しやすい位置にあるのですが、惑星状星雲としてはかなり大型ですので輝度が低く、小口径の望遠鏡ではなかなか難物です。観察のためには口径10cm以上が欲しいところです。月のない暗夜になるべく低倍率で探しましょう。口径15cmで、ようやく内部が均一でないことが分かりはじめます。ふくろうの顔を認めるには30cm以上の口径が必要です。

M108銀河(=NGC3556)

  • 位置(分点2000.0)赤経11h11.5m,赤緯 +55°40’ 視直径8.1’x 2.1’,等級10.0,型SB
右上はM108銀河、左下の円形の天体はM97惑星状星雲

M97のすぐ北西49’にあり低倍率で同視野に見えます。ちょうど両天体の中間には7等星があります。しかし、M97よりも微光で、やはり小口径では困難な対象です。姿を認めるには10cm以上の口径が必要でしょう。中心核のない淡い細長い姿です。写真で撮影すると、内部の濃淡が不規則な様子が分かります。

M101銀河(=NGC5457)愛称:回転花火銀河(Pinwheel Galaxy)

  • 位置(分点2000.0)赤経14h03.2m,赤緯 +54°21’ 視直径26.0’x 26.0’,等級7.9,型SAB
撮影/上田聡(鹿児島県天体写真協会)

M101銀河は、北斗七星の柄の部分に近くにある大型の典型的な渦巻銀河です。渦巻き状の姿から「回転花火銀河(Pinwheel Galaxy)」の愛称があります。中心部は小口径の望遠鏡でもよく分かりますが、腕の部分は淡く小口径では困難です。月明かりのない夜に低倍率で観察しましょう。渦巻銀河を軸方向から見た状態で、これをフェイスオン銀河と呼びます。約2000万光年の遠方にあります。天体写真の好対象で、被写体として人気があります。
NGCカタログ中の5447、5449、5450、5451、5453、5455、5458、5461、5462、5471は、M101銀河の中に含まれています。

M109銀河(=NGC3992)

  • 位置(分点2000.0)赤経11h57.6m,赤緯 +53°23’ 視直径7.6’x 4.3’,等級9.8,型SB

γ星のすぐ近くにあり探しやすい位置にありますが、たいへん淡い銀河で小口径では困難な対象です。M108銀河と同様に、メシエ番号のついた天体の中では最も淡い部類に入ります。写真では割合に広がりがありますが、眼視的にはとても淡い楕円形状です。15cm以上の口径で、中心部が明るくその周りが淡くなっていることが分かります。また、写真からは、3本のフィラメント状のアームのあることが分かります。

NGC2841銀河

  • 位置(分点2000.0)赤経09h22.0m,赤緯 +50°58’ 視直径6.8’x 3.3’,等級9.2,型SA

メシエ天体には含まれていませんが、割合に明るく観察しやすい銀河です。特に中心部が明るい特徴があり、紡錘状の広がりがあります。北東21’に6等星があり導入の目印になります。

2重星の観察

おおぐま座は面積の広い星座ですので、小口径の望遠鏡にも観察に適する重星が多数存在します。

ζ星 ミザール

  • 位置(分点2000.0)赤経13h23.9m,赤緯 +54°56’,スペクトルA1V
  • 主星2.2等,伴星3.9等,位置角154°,離角14.7”(2020年)

ミザールとアルコルはよく知られた肉眼的な重星であることは前述の通りです。さらに、ミザールそのものは望遠鏡で観察しやすい、春の空の代表的な二重星です。白色のペアで、数千年の周期で公転する連星系となっています。ミザールが重星であることを発見したのは、ガリレイの弟子のベネデット・カステリであると考えられています。重星の中でも、お互いに公転しあう系を連星と呼びますが、カステリの発見は結果的に歴史上はじめての連星の発見となりました。

これだけでも結構複雑な星ですが、ミザールの主星そのものもさらに連星系であることが分光観測から判明しています。1997年の観測で、等光度の恒星の間隔はわずか離角0.004”とされています。

ミザールとアルコルの拡大写真。右側のミザールは、さらに二重星であることも分かります。

ξ星

  • 位置(分点2000.0)赤経11h18.2m,赤緯 +31°32’
  • 主星4.3等,伴星4.8等,位置角152°,離角2.3” (2020年),スペクトルF9V+G9V
おおぐま座ξ星の軌道

ミザールとともに、おおぐま座では最も注目したい重星です。この星は、よく知られた眼視的な連星系で、59.9年の周期で公転しています。このため、数年おきに観察すると位置角と離角が変化することを観測することができます。現在の離角は2″ほどで、小口径の望遠鏡には難物ですが、今後は少しずつ開いていきます。離角が最大となるのは2035年頃で、両星は3.1″まで離れます。

α星 ドゥベ

  • 位置(分点2000.0)赤経11h03.7m,赤緯 +61°45’
  • 主星2.0等,伴星7.2等,位置角206°,離角385”(2020年),スペクトルG9III

北斗七星の先頭の恒星。明るいオレンジの主星にとても小さな薄茶色の伴星が、広い間隔を空けているペア。小口径での観察に向いています。主星も近接した2.0等と5.0等の連星系で、2013年の観測値は、位置角0°離角0.7“

Σ1193(=HIP 40889)

  • 位置(分点2000.0)赤経08h20.7m,赤緯 +72°24’
  • 主星6.2等,伴星9.7等,位置角90°,離角42.4”(2015年),スペクトルK4III+F0

明るいオレンジの主星と小さな青緑色のすばらしいペア。主星と伴星の間隔は広く空きます。小口径での観察に向いています。

41番星

  • 位置(分点2000.0)赤経09h28.7m,赤緯 +45°36’
  • 主星5.5等,伴星7.8等,位置角160°,離角69.7”(2017年),スペクトルK0III-IV

間隔の大きく開いた対象。濃い黄色の主星と青い伴星のペア。小口径での観察に向いています。実際には三重星で、伴星C(10.9等)が、位置角73°離角83.7”にありますが、小口径で見つけることは難しいでしょう。

23番星

  • 位置(分点2000.0)赤経09h31.5m,赤緯 +63°04’
  • 主星A 3.7等,伴星B 9.2等,位置角267°,離角22.7”(2016年),スペクトル F0IV
  • 主星A 3.7等,伴星C 11.8等,位置角232°,離角107.4”(2015年),スペクトル F0IV

光度差のあるすばらしい組み合わせ。薄黄の明るい恒星に、とても小さな青緑色の伴星がついています。微光なので見逃しそうですが、離角107”には消え入りそうな12等の伴星Cもあります。

Σ1415(=HIP 50433)

  • 位置(分点2000.0)赤経10h17.8m,赤緯 +71°04’
  • 主星6.7等,伴星7.3等,位置角168°,離角16.5”(2019年),スペクトルA7

明るい黄色の主星と白色の伴星が適度な間隔にあり、美しいコンビネーションです。

Σ1520(=HIP 55044)

  • 位置(分点2000.0)赤経11h16.1m,赤緯 +52°46’
  • 主星6.5等,伴星7.8等,位置角344°,離角12.4”(2019年),スペクトルF6V+F9V

明るい黄色の主星と小さな白色の伴星のペア。美しい観察対象です。

57番星

  • 位置(分点2000.0) 赤経11h29.1m, 赤緯 +39°20’
  • 主星5.4等,伴星10.7等,位置角354°,離角5.5”(2019年),スペクトル A2V

離角は5”ありますが、光度差があり、小口径では狭い離角と光度差を楽しめます。青白色の主星の傍らに、小さな青い伴星が狭いギャップでつながっています。

Σ1561(=HIP 56809)

  • 位置(分点2000.0)赤経11h38.7m,赤緯+45°07’
  • 主星6.5等,伴星8.2等,位置角246°,離角8.9”(2019年),スペクトルG0V

金色の明るい主星と小さな薄桃色の組み合わせ。コントラストの素晴らしいペアです。

Σ1695(=HIP 63143)

  • 位置(分点2000.0)赤経12h56.3m,赤緯+54°06’
  • 主星6.0等,伴星7.8等,位置角280°,離角3.7”(2020年),スペクトルA5

ほとんど触れあうような距離で黄色の主星と紫色の伴星があります。美しいコンビネーションの重星です。

Σ1831(=HIP 69699)

  • 位置(分点2000.0)赤経14h16.1m,赤緯 +56°43’
  • 主星A 7.2等,伴星B 9.6等,位置角138°,離角5.8”(2017年), スペクトル A7IV
  • 主星A 7.2等,伴星C 6.7等,位置角219°,離角112.2” (2017年), スペクトル F8V

口径10cm以上で美しい。明るい白色の主星にくっつくように小さな伴星Bがあります。伴星Cは、AB両星から大きく離れたところにあります。