冬の星座11

11おおいぬ座

大犬座

学 名
Canis Major(略号 CMa)
英語名
The Greater Dog
設 置
古代ギリシア
面 積
380平方度

天体観測の見どころ

おおいぬ座は、冬の天の川の中にあって輝星の豊富な星域です。銀河に沿っては、散開星団、散光星雲が多いのですが、おおいぬ座にはアマチュア向きの不思議と散開星団が数個あるのみです。重星にはとても恵まれていて、多数の小望遠鏡向きの対象があります。

1星雲星団の観察

M41散開星団(=NGC2287)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h47.0m,赤緯-20°44’ 視直径38’,等級4.5,星数80
シリウスとM41散開星団。M41は、シリウスの真南約4°にあります。

ぜひ見ておきたい、冬の散開星団の中でも代表的なもののひとつです。大型の星団で、暗夜には肉眼で存在が分かります。双眼鏡や望遠鏡の低倍率での観察がお勧めの、とても美しい散開星団です。星粒はやや大きく、それが少々まばらにばらまかれています。星団の中心付近によく目立つオレンジ色の星があります。
この星団は、古代ギリシアのアリストテレスが存在を知っていた可能性があり「犬の太ももの星のひとつは尾を持っている。それは淡いものだ。」と記しています。

NGC2354散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経07h14.3m,赤緯-25°44’ 視直径20’,等級6.5,星数100

おおいぬの腰にある中型の散開星団です。冬の銀河の中で星団の周囲も星があふれています。星団の西側は、大きく弧を描く星の並びがあり特徴的です。星粒はそれほど明るくなく均等に広がっています。

NGC2362散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経07h18.8m,赤緯-24°57’ 視直径8’,等級4.1,星数60

4等星τCMaを取り囲む小型の散開星団です。このτ星がとても強力なアクセントになって、印象深い星団となっています。まるで、小さな花が散りばめられた円形の花壇に、一輪の大きなひまわりが咲いているようです。τ星以外の星も粒は比較的大きいのですが、τ星が突出して明るいのです。τ星も他の星団の星々も青白色で輝いています。

2重星の観察

α星シリウス

  • 位置(分点2000.0)赤経06h45.1m,赤緯-16°43’
  • 主星-1.5等,伴星8.4等,位置角67°,離角11.3” (2021年),スペクトルA1V+DA2
シリウスの伴星(2018年2月26日 撮影:小石川正弘(元仙台市天文台))

公転周期50.1年の有名なシリウスの伴星ですが、たいへん困難な観察対象で、これを観察できるチャンスは天文台の職員でもなかなかありません。それでも、2020年~2030年は離角は10”を超えて観察の有利な時期に当たっています。このような極めて光度差のある対象は、星像の安定する屈折式望遠鏡の方が有利なことが多いです。反射式の場合でも口径30cm以上で、シーイングの良い夜に、高倍率で観察してみましょう。副鏡を支えるスポークによるハレーションは伴星を見づらくします。位置角を考慮して鏡筒を回転してセットしましょう。
ギラギラと燃えるような主星の回折リングに飲み込まれるように、目の錯覚かと思えるようなチラチラと伴星が見えてきます。

Σ3116星(=HIP 30214)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h21.4m,赤緯-11°46’
  • 主星5.6等,伴星9.7等,位置角23°,離角3.9”(2003年),スペクトルB1V+B9V

重星の好きな観察者にとって、とても面白い対象です。4等級の光度差と離角3.9”はチャレンジャブルです。乳白色の主星に、小さなグレーの伴星です。

h3869星(=HIP 31190)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h32.6m,赤緯-32°02’
  • 主星5.7等,伴星7.9等,位置角258°,離角24.7”(2010年),スペクトルB2IV

光度差がやや大きいものの大きな離角があり、明るく観察しやすい小望遠鏡向きの重星です。主星は明るい白色で、伴星はグレーです。

ν1星

  • 位置(分点2000.0)赤経06h36.4m,赤緯-18°40’
  • 主星5.8等,伴星7.4等,位置角264°,離角17.4” (2019年),スペクトルG5III

この重星も、光度差がやや大きいものの十分な離角があり、明るく観察しやすい小望遠鏡向きの対象です。主星はオレンジ色で、伴星は青みがかっています。

S534星(=HIP 32144)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h42.8m,赤緯-22°27’
  • 主星6.3等,伴星8.3等,位置角145°,離角18.1” (2016年) ,スペクトルF2V

この重星も、適度な光度差と広めの離角のある小望遠鏡で観察しやすい対象です。主星・伴星とも黄色のペアです。冬の天の川の中で、周囲は微光星にあふれます。

h3891星(=HIP 32285)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h45.5m,赤緯-30°57’
  • 主星5.7等,伴星8.2等,位置角223°,離角5.0” (2015年),スペクトルB2III

やや接近した2.5等差の重星で、可愛らしく楽しめる観察対象です。主星伴星とも乳白色に見えます。

HV108星(=HIP 32810)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h50.4m,赤緯-31°42’
  • 主星5.8等,伴星7.7等,位置角66°,離角42.7” (2015年) ,スペクトルB6V

大きな離角があり、小望遠鏡向きの容易な観察対象です。主星は乳白色で、伴星は青みがかっています。色のコントラストを楽しめるペアです。

17番星

  • 位置(分点2000.0)赤経06h55.0m,赤緯-20°24’
  • 主星A 5.8等,伴星B 8.6等,位置角147°,離角42.9” (2015年),スペクトル A3IV
  • 主星A 5.8等,伴星C 9.2等,位置角187°,離角48.5” (2015年),スペクトル A3IV

可愛らしく、あまり見ないタイプのユニークな三重星です。離角が大きく観察は楽です。明るく大きな黄色の主星に、小さなシルバーの伴星がふたつあります。楽しく観察できる重星です。

μ星

  • 位置(分点2000.0)赤経06h56.1m,赤緯-14°03’
  • 主星5.3等,伴星7.1等,位置角343°,離角2.9” (2017年),スペクトルG5III+A2

重星観察には素晴らしい離角と光度差があり、印象的な観察対象です。シーイングの良い条件が必要で、観察は容易ではありません。この観察には口径10cm以上が欲しいところです。主星の美しいオレンジ色に、青く小さな伴星です。

ε星

  • 位置(分点2000.0)赤経06h58.6m,赤緯-28°58’
  • 主星1.5等,伴星7.5等,位置角162°,離角7.9”(2008年),スペクトルB2II

光度差のコントラストの著しい対象です。伴星は8等星ですから楽に観察できそうに思えますが、光度差が6等もありますから意外と難物です。主星と伴星は250倍もの光量の差になり、主星の輝度に埋もれて小望遠鏡では伴星が見えないこともあるでしょう。オリオン座のリゲルに似た観察対象です。主星は極めて明るい白色で、伴星は黄色みがかって見えます。

h3945星(=HIP 35210)

  • 位置(分点2000.0)赤経07h16.6m,赤緯-23°19’
  • 主星5.0等,伴星5.8等,位置角50°,離角26.5” (2020年),スペクトルK3I F0

顕著な色のコントラストを持った、とても美しい観察対象です。あまり知られていないのですが、「冬のアルビレオ」とも評する声もある溜息の出るような、色のコントラストの素晴らしい重星です。アルビレオほど明るくないのですが、控えめな輝度はむしろ目に優しく可愛らしく感じます。主星は際立ったオレンジ色で、伴星は深い青色です。

BrsO2星(=HIP 35241)

  • 位置(分点2000.0)赤経07h17.0m,赤緯-30°54’
  • 主星6.3等,伴星7.8等,位置角183°,離角37.5” (2020年),スペクトルA9II

離角を広く開けた小望遠鏡で楽に観察できる対象です。乳白色の主星に、ややにぶい灰色をした伴星があります。

Σ1097星(=HIP 36251)

  • 位置(分点2000.0)赤経07h27.9m,赤緯-11°33’
  • 主星A 6.2等,伴星C 8.8等,位置角314°,離角19.8” (2020年),スペクトル G8I-II
  • 主星A 6.2等,伴星D 9.7等,位置角158°,離角23.1” (2019年),スペクトル G8I-II

明るい黄色の主星に、観察の容易な小さな伴星が2つあります。さらに主星は、6.2等と7.4等が離角0.7”で近接する連星ですが、この分離は大望遠鏡でも困難です。