冬の星座10

10いっかくじゅう座

一角獣座

学 名
Monoceros(略号 Mon)
英語名
The Unicorn
設 置
ペトルス・プランシウス
面 積
482平方度

天体観測の見どころ

いっかくじゅう座は明るい星はありませんが、中心部を冬の天の川が通っており、たくさんの散開星団と散光星雲があります。この付近を双眼鏡で散策すると次々に散開星団が視野に入ってきます。散光星雲は主に天体写真の好適な被写体となり人気があります。

1星雲星団の観察

M50散開星団(=NGC2323)

  • 位置(分点2000.0)赤経07h03.2m,赤緯-08°20’ 視直径16’,等級5.9,星数80

メシエ天体としては中型の散開星団です。冬の天の川の外れたところにありますが、星団の周囲も微光星が多くにぎやかです。双眼鏡で小さな星雲のように見えます。小さい散開星団ですが、それほど密集していません。星団の南端に赤い星があり、わりあいに目立ち星団にアクセントをつけています。

NGC2237-9,NGC2246散光星雲 愛称:バラ星雲(Rosette Nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h32.3m,赤緯+05°03’長径80’×短径60’
  • タイプHⅡ発光
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)
チャンドラーX線観測衛星によるX線と可視光の画像を合成したバラ星雲中心部。X線で撮影された部分は白線の中で、赤い色に着色されています。この中から160星もの星雲内に誕生したばかりの若い星が検出されました。
(X-ray(NASA/CXC/SAO/J.Wang et al),Optical(DSS & NOAO/AURA/NSF/KPNO0.9-m/T.Rector et al))

この美しい星雲は、天文ファンなら知らない人はいないでしょう。冬の天の川に、満月の5倍以上の広さの見事なバラの花形をつくっています。散光星雲は肉眼では見えないものが多いのですが、このバラ星雲は、暗夜に肉眼で存在が分かります。オリオン座の東にぼんやりした小さな雲のように見えます。双眼鏡でも星雲が分かります。しかし、広く広がった星雲ですから、望遠鏡では倍率が高くなり輝度が薄まってしまい、目で見ることはできません。基本的には、赤外光に感度のある天体写真の対象となります。天体写真では、星雲の中心にあるまばらな散開星団NGC2244を導入することで、星雲の中心を決めることができます。

NGC2264散光星雲 愛称:コーン星雲(Cone Nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h41.1m,赤緯+09°53’長径35’×短径15’
  • タイプHⅡ発光
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)
ハッブル宇宙望遠鏡の撮影したコーン星雲中心部。暗黒の円錐はガスとダストの柱です。冷たいガスの巨大な柱は、星の誕生の領域でよく見られます。
(NASA,H.Ford(JHU),G.Illingworth(UCSC/LO),M.Clampin(STScI),G.Hartig(STScI),the ACS Science Team and ESA)

バラ星雲の北5.5°に薄く広がる散光星雲です。この星雲の南端付近に形の明瞭な暗黒星雲があり、その形が三角錐の形をしていることから「コーン星雲」の愛称があります。写真中央の明るい星はいっかくじゅう座S星で、コーン星雲を赤く光らせるエネルギーを供給しています。このS星から南側にかけて明るい星が集まった星団(NGC2264)があり、その様がクリスマスツリーのように見えることから「クリスマスツリー星団」の愛称があります。

NGC2261散光星雲 愛称:ハッブルの変光星雲(Hubble’s Variable Nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h39.2m,赤緯+08°44’長径3.5’×短径1.5’
  • タイプHⅡ発光+反射

コーン星雲の中心部から約1°南西には、ハッブルの変光星雲と呼ばれるNGC2261散光星雲があります。たいへん小さいものですが、他にこんな風変わりな天体は見当たらず、とても興味深いものです。輝度が高く望遠鏡では倍率を上げても観察できます。この位置にある変光星R星を南端にして、星がにじむように見えます。ここを頭にした彗星のようでもあります。

1916年にエドウィン・ハッブルにより発見されました。R星は不規則に明るさの変る変光星でこのような名称があります。変光のメカニズムは、R星の周辺にある星雲がR星の全面を通過し覆うことで変光するとされています。

NGC2236散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経06h29.7m,赤緯+06°50’ 視直径6’,等級8.5,星数50

微光星の集団です。付近には冬の天の川の中の大粒の星々が多数あり、よく見ないと星団の存在が分かりません。微光星の集団を意識して探す必要があります。星団の北西側は環礁のようにリング状の星の配置となっていて美しく面白い光景です。

NGC2301散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経06h51.8m,赤緯+00°28’ 視直径12’,等級6.0,星数80

小型ながら美しい散開星団です。星団の明るい星が直線状に並んでいる特徴があり面白く観察できます。その周囲に多数の微光星が取り囲んでいます。

NGC2324散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経07h04.2m,赤緯+01°03’ 視直径7’,等級8.4,星数70

星団のすぐ北東に、10個程度の明るい星がY字に並ぶ星域があり、最初にそちらに目が行きます。明るい星々の隙間に、微光星の密集した星団があります。かなり暗い星の集団のため、見逃してしまいそうです。

IC2177散光星雲 愛称:わし星雲,かもめ星雲(Seagull Nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経07h05.3m,赤緯-10°38’長径120’×短径40’
  • タイプHⅡ発光
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)
赤い星雲がIC2177。右下の輝星はシリウス。
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)

いっかくじゅう座からおおいぬ座にまたがった、鳥のような形をした大型の散光星雲です。この形から、わし星雲,かもめ星雲などの愛称があります。この星雲も淡く肉眼で見ることはできず、天体写真の対象となります。

2重星の観察

ε星

  • 位置(分点2000.0)赤経06h23.8m,赤緯+04°36’
  • 主星4.4等,伴星6.6等,位置角29°,離角12.2” (2019年),スペクトルA5IV+F5V

小望遠鏡でも観察しやすい、たいへん素晴らしい重星です。主星は金色で、伴星は透き通った紫色です。色のコントラストが絶品です。

β星

  • 位置(分点2000.0)赤経06h28.8m,赤緯-07°02’
  • 主星A 4.6等,伴星B 5.0等,位置角133°,離角7.2” (2021年),スペクトル B3V+B3
  • 主星A 4.6等,伴星C 5.4等,位置角125°,離角9.7” (2021年),スペクトル B3V+B3

観察しやすく美しい三重星として素晴らしく、全天でも屈指です。三星すべて白色で、ほぼ同じ明るさです。伴星Bと伴星Cが接近していますが、小望遠鏡でも観察は難しくありません。

Σ921星(=HIP 31066)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h31.2m,赤緯+11°15’
  • 主星6.1等,伴星9.1等,位置角3°,離角16.2” (2019年),スペクトルB2V

適度な光度差を楽しめる重星です。主星は澄んだ白色で、これにグレーの伴星があります。離角が十分に広く小望遠鏡向きのペアです。

15番星(S星)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h41.0m,赤緯+09°54’
  • 主星A 4.7等,伴星B 7.8等,位置角214°,離角3.0” (2018年),スペクトル O7V
  • 主星A 4.7等,伴星C 9.9等,位置角15°,離角16.9” (2020年),スペクトル O7V

光度差のある三重星です。クリスマスツリー星団(コーン星雲)の最も明るい星です。明るいレモン色の主星に、シルバーの伴星Bが触れ合うようにあります。伴星Cもシルバーです。主星は、4.7等と5.9等が離角0.1秒で近接する連星系です。また、WDS重星カタログには15星以上の伴星が登録されている多重星です。しかし、ここに紹介している三星以外はいずれも微光です。

Σ1112星(=HIP 36640)

  • 位置(分点2000.0)赤経07h32.1m,赤緯-08°53’
  • 主星6.0等,伴星8.7等,位置角113°,離角23.9” (2020年),スペクトルF5V

やや光度差がありますが、離角が大きく小望遠鏡でも観察しやすい重星です。主星は明るいレモン色で、伴星は消え入りそうに小さくあります。

Σ1183星(=HIP 39673)

  • 位置(分点2000.0)赤経08h06.5m,赤緯-09°15’
  • 主星6.2等,伴星7.8等,位置角327°,離角30.6” (2019年),スペクトルB9.5IV

間隔を大きく開けた楽に観察できる重星です。主星は明るいレモン色で、伴星は薄い緑色をしています。愛らしいコントラストのペアです。