冬の星座9

9ふたご座

双子座

学 名
Gemini(略号 Gem)
英語名
The Twins
設 置
古代ギリシア
面 積
514平方度

天体観測の見どころ

1星雲星団の観察

M35散開星団(=NGC2168)

  • 位置(分点2000.0)赤経06h08.9m,赤緯+24°20’ 視直径28’,等級5.1,星数200

ふたご座の足元にある大型で素晴らしい散開星団です。視直径は、満月の大きさ程にもなります。透明度の良い暗夜なら肉眼でも存在が分かり、双眼鏡、望遠鏡の低倍率での観察が最も美しさを堪能できます。メシエは「星座から少し離れた、カストルの左足にあるとても小さな星団」、スミスは、「類のないほどすばらしい星の描く曲線」、ラッセルは、「何とも目覚ましい星団で、はじめてこれを見た人で感嘆しない人はいないだろう」と記しています。

星粒が大きく、これが200星も密集していますから、視野はとても豪華な風景となります。冬の天の川の中にあり、星団の周囲も大小多数の恒星が星団をさらに引き立てています。
M35にくっつくように南西には小型の散開星団NGC2158があります。こちらは、口径10cmの望遠鏡で淡く丸く見え、ざらつきのある星雲状に見えます。

NGC2392惑星状星雲 愛称:エスキモー星雲(Eskimo Nebula)

  • 位置(分点2000.0)赤経07h29.2m,赤緯+20°55’ 視直径15”
  • 写真等級9.9,視等級9.2,中心星等級10.5

δ星の西2°20’にある明るい惑星状星雲です。小望遠鏡でもすぐ北1.5’にある7.7等星と、まるで二重星のように見えています。小型ですので一見恒星状ですが、よく見ると、南側は輪郭のあるややぼやけた星雲であることがただちに分かります。口径15cm以上では内部の構造が何やら見えてきます。倍率を上げてもよく耐えて観察可能です。毛皮をまとったエスキモーの顔に見えるということから「エスキモー星雲」の愛称がありますが、これを見るには大望遠鏡での観察が必要でしょう。

NGC2420散開星団

  • 位置(分点2000.0)赤経07h38.5m,赤緯+21°34’ 視直径10’,等級8.3,星数100

ふたご座の東側、ふたご座の中でM35星団とは対称の位置にある小型の散開星団です。数十個の微光星が小さな三角形をつくる特徴があります。小型ながら、まとまりのよい星団です。口径15cmになると、微光星が密集して美しい姿を見せてくれるようになり、ベール状の星雲の中にザラザラした表面が見えてきます。

IC443散光星雲

  • 愛称:くらげ星雲(Jellyfish Nebula)
  • 位置(分点2000.0)赤経06h16.9m,赤緯+22°47’長径50’×短径40’
  • 超新星残骸
(撮影:上田聡/鹿児島県天体写真協会)

η星付近に広がる散光星雲です。中央右側の輝星がη星です。この星雲は淡いために肉眼で見ることはできず、天体写真の対象となります。クラゲのような形をしていることから「くらげ星雲」の愛称があります。5000年~1万年前の超新星残骸です。
ふたご座の足元は冬の天の川の中にあり、たいへんにぎやかです。この星雲のすぐ北西にはM35散開星団があります。

2重星の観察

α星カストル

  • 位置(分点2000.0)赤経07h34.6m,赤緯+31°53’
  • 主星A 1.9等,伴星B 3.0等,位置角53°,離角5.4” (2020年),スペクトル A1V+A4V
  • 主星A 1.9等,伴星C 9.8等,位置角164°,離角71.6” (2020年),スペクトル A1V+M0.5V

日本から見られる重星としてはもっとも明るい対象です。まばゆい1.6等星は1.9等と3.0等の恒星が周期467年で公転する連星系です。主星と伴星が触れ合うばかりに近接している様子は小望遠鏡から観察できる、全天でも指折りの素晴らしい重星です。両星は、薄いレモン色をしています。現在は年を追って離角の大きくなりつつある時期です。2090年には2000年の約2倍となる離角7.3”まで離れます。
この系には約70”離れたところに、もう一つの伴星Cがありますが、これは暗すぎて観察の対象にはなりません。興味深いことは、主星A、伴星B、伴星Cがそれぞれさらに連星系を作っていて、最終的にはAa,Ab,Ba,Bb,Ca,Cbの6重連星系となっています。これらは分光観測の対象で、実視することはできません。

η星

  • 位置(分点2000.0)赤経06h14.9m,赤緯+22°30’
  • 主星3.5等,伴星6.2等,位置角258°,離角1.8” (2020年),スペクトルM3.5I-II

この重星の観察は熟練者にとって、挑戦的で楽しいものでしょう。2.7等級差の伴星がほとんど主星に埋もれるように接触しています。口径15cm以上でシーイングの良い夜に観察して下さい。支配的に明るい主星はオレンジ色で、この回折リングの中に小さな伴星があります。この重星は公転周期474年の連星系となっています。

38番星

  • 位置(分点2000.0)赤経06h54.6m,赤緯+13°11’
  • 主星4.8等,伴星7.8等,位置角145°,離角7.3” (2018年),スペクトルF0V

光度差、離角のバランスの良い、お勧めの観察対象です。主星は明るいレモン色で、伴星は小さくグレーです。この重星は周期1943年で公転する連星系となっていて、現在は離角の大きな時期に当たっています。

δ星

  • 位置(分点2000.0)赤経07h20.1m,赤緯+21°59’
  • 主星3.6等,伴星8.2等,位置角229°,離角5.5” (2018年),スペクトルA9III+K3V

4.6等の大きな光度差があり、意外と観察の難しい重星です。輝星の近傍にある暗い伴星を見つけられるとうれしくなります。主星は琥珀色ですが、伴星は暗くて存在がようやく分かるほどで色は分かりません。この重星は、公転周期2239年の連星系で、現在は年を追って離角を狭めつつある時期にあります。

63番星

  • 位置(分点2000.0)赤経07h27.7m,赤緯+21°27’
  • 主星5.3等,伴星10.9等,位置角324°,離角43.0”(2016年),スペクトルF5V

離角は広いながら、とても大きな光度差があります。主星は乳白色ですが、伴星の色は分かりません。さらに主星は、5.3等と7.3等が離角0.1”で近接する連星系です。

ふたご座20 = HIP 31158

  • 位置(分点2000.0) 赤経06h32.3m, 赤緯 +17°47’
  • 主星 6.3等,伴星 6.9等,位置角211°,離角19.7” (2017年),スペクトル F8III

離角の広い等光度の重星です。双子のように可愛らしく並んだ姿が印象的な観察対象です。

3ふたご座流星群

活動期間:12月4日~12月17日。極大12月14日頃(太陽黄経262.1°)。
極大ZHR120。対地速度35km/s。

三大流星群のひとつで、年間最大の出現をほぼ一晩中見せる流星群です。ピークが長くZHR90以上の出現がほぼ24時間続くため、極大時刻が昼間になった場合にも前後の夜に十分多くの流星を楽しむことができます。極大時刻の1日前で極大時のほぼ半分の出現が見られますが、極大1日後にはほぼ4分の1に減少してしまいます。この流星群は、流星の明るさにより極大時刻が異なり、大変明るい流星のピークが全体のピークより半日程度遅れる傾向があります。

この群の出現状況は毎年安定しています。しかし長期的に見ると、20世紀前半の出現数が20~60個/時でその後徐々に出現数を増やしてきたらしいことが分かっています。極大の流星数が経年変化するのは、惑星摂動(わくせいせつどう)によって流星群の軌道面が変化するためです。母天体は1983年に発見されたアポロ型小惑星(3200)ファエトンです。アポロ型小惑星とは、近日点が地球の軌道の内側にある特殊な軌道を持つ小惑星のグループです。ファエトンの軌道はこれからさらに地球に近づいてくる見込みです。そのため、ふたご群もさらに出現数を増し、明るい流星も増える可能性があります。今後が楽しみな流星群です。

小惑星(3200)ファエトンは、元は彗星だった天体が、太陽からの放射を受けて揮発成分が失われた天体「枯渇彗星」と考えられています。遠方からやってきた彗星が、木星などの惑星の摂動を受けて、アポロ型小惑星に軌道を変えたものでしょう。このため、軌道上には豊富なダストが存在しており、このダストがふたご座流星群となって地球に降り注いでいます。
小惑星(3200)ファエトンについては、エリダヌス座の章も合わせて参照ください。

NASAの太陽観測衛星STEREOにより撮影された、近日点を通過する小惑星(3200)ファエトン。ファエトンは、かつては彗星だったと考えられていますが、まだわずかに揮発成分が残っており、短い尾を引いています。(Jewitt,Li,Agarwal/NASA/STEREO)
ふたご座流星群
12月14日0時頃(東京)でみる ふたご座流星群のイメージ
小惑星ファエトンの軌道。地球は12月14日頃にこの彗星の軌道に近づき、この頃にふたご座流星群が活動します。