もう一度プログラミングをはじめてみませんか?――人生を再起動するサバイバルガイド

著者の一言

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四半世紀以上前のこと。IT関係の仕事をしていた方の話で「同じ職場・同じフロアにいる人にもメールで話しかける職場」が出てきました。一人一台パソコンが与えられ,一日中ディスプレイに向かい合い,無駄な会話のない勤務環境。その中で,その人は調子を崩されていました。⁠なぜすぐそばにいる人との会話がパソコン上になってしまうんだろうね」と話題にするのは,当時としては決しておかしなことではありませんでした。

現在,私の職場でもパソコン上での会話が当たり前の勤務環境になっています。パソコンが一人一台与えられ,チャットで同部屋の人とも,他の勤務地にいる人ともリアルタイムで話ができる環境にいてすっかりそれになじみ,便利であるとさえ思っています。仕事の調整等も電話ではなくさっとチャットで済ませることができます。研修等で行われるグループワークもオンラン上で行われるようになりました。四半世紀以上前に抱いた違和感はもうそこにはありません。

このように,現在ではパソコンやスマホが当たり前のように私たちの生活にの中にあり,それにつれてプログラマーやエンジニアといったIT人材もますます求められています。2020年からは小学校でもプログラミング学習が必修となりました。2021年度からは中学生で必修化され,2022年度からは高校で「情報」として必修化されました。IT社会においてそれは必要なことといえるかもしれません。

一方で,冒頭の「そばにいる人ともコンピューターを介して」会話を行うことへの違和感は,現代において本当に不要なものでしょうか。さらに,IT業界で働く人々の数が増加するにつれて,心身の不調を訴える人も増えているとされています。この現象は決して無視できない問題だと感じています。

本書のテーマはレディネスです。これは,何かを身に付けていく準備段階を指します。教育心理学では,レディネス形成がその後の学習に重要な意味を持つという話があります。⁠早く習えばよく身に付く」という考えではなく,⁠準備段階を整えてこそよく身に付く」という考え方です。

プログラミングのレディネスはどういうものなのでしょうか。

人が生きる社会の中にプログラミング能力があるのだとすれば,早期からのプログラミング学習が最重要課題とは言い切れません。幼少期の具体的な生活体験や人とのやりとりから得られる学びは多くあるはずです。これらの経験や体験の上に,自身の得意不得意を確認し,自分に合ったやり方を見つけていくということが,真のレディネス形成だと考えられます。それゆえに,たとえ最初の挑戦でうまくいかなかったとしても,それを理由にすべてを諦めてしまう必要もないでしょう。

そして,何をするにしても心身ともに健康な状態であるということも,とても大切なことです。プログラミングに興味を持つ人の幅は広いですが,時に,人に頼ったり相談したりということが得意ではない人がいるように見受けられます。ぜひ本書がそれらの人たちにとっての一助になりますように,と心から祈っています。

著者プロフィール

山崎晴可(やまざきはるか)

高知県高知市出身 1968年生

大阪芸術大学文芸学科中退・ダイアモンドアプリコット電話研究所所長,プログラマーの社外メンターとして企業のエンジニア指導。14歳よりOh!mz(ソフトバンク)掲載・ハッカージャパン(白夜書房)インターネットアスキー(アスキー)等で連載・単著に『インターネットツール構築論』(白夜書房)・ストーカー対策ボランティアグループを主宰しフジテレビNONFIX「ストーカーバスター」シリーズとして放送


山崎彩子(やまざきあやこ)

神奈川県横浜市出身 1972年生

武蔵大学文学部社会学科卒・白百合女子大学大学院文学研究科発達心理学専攻修士課程修了・臨床心理士・公認心理師・精神保健福祉士。精神科クリニック,スクールカウンセラー,児童養護施設勤務等を経て2009年より海上自衛隊心理療法士,現在防衛省海上幕僚監部首席衛生官付衛生企画室勤務