科学の扉 身近なやわらか物質の謎に迫る! 中学生からわかる現代ソフトマター学
- 古川英光 著
- 定価
- 1,980円(本体1,800円+税10%)
- 発売日
- 2025.11.12
- 判型
- 四六
- 頁数
- 320ページ
- ISBN
- 978-4-297-15202-4
サポート情報
概要
『ソフトマターの世界へようこそ ― やわらかい物質が変える未来』
ゴム、ゲル、プラスチック、液晶、コラーゲン、寒天──
私たちの身のまわりには、金属やセラミックとは異なる「やわらかい物質」が溢れています。
これらは、変形しても壊れにくく、水や光、電気といった外部刺激に敏感に応答するユニークな性質を持ち、食品から医療、ロボット工学、宇宙開発にまで応用が広がっています。
本書は、身近な生活用品から最先端の機能性材料まで、やわらかい物質=ソフトマターの魅力をわかりやすく解説します。
特に注目は、日本発の“最強ゲル軍団”や、天然素材に学ぶ高機能材料の秘密。そして3Dプリンティングやフードテクノロジー、次世代ロボットなど、ソフトマターが切り拓く未来の姿を描きます。
SDGsの課題解決や新産業の創出にもつながる材料科学のフロンティアを、この一冊で探検してみませんか。
こんな方にオススメ
- ソフトマターに興味のある人
- 高分子に興味のある人
- 未来の材料について興味のある人
- フードプリンターに興味のある人
目次
第1章 やわらか物質のメカニズム
- 1-1 身近なやわらか物質① ゴム:やわらかさを表す『弾性』
- 1-2 身近なやわらか物質② プラスチック:変形したら戻らない性質『塑性』
- 1-3 身近なやわらか物質③ わかめ:水分を含み膨らむ『ゲルの膨潤』
- 1-4 身近なやわらか物質④ 洗剤:汚れを落とす『疎水性相互作用』
- 1-5 身近なやわらか物質⑤ 液晶:周期構造が生む構造色
- 1-6 電気を通すプラスチック:導電性プラスチック
- 1-7 液体と固体が共存する不思議:相分離
- 1-8 物性の違いを把握する指標:分子量分布
- 1-9 ランダムに動き回る性質:酔歩
- 1-10 コロイド粒子の性質:ブラウン運動
- 1-11 高分子同士の重なり合い
- 1-12 ゲル同士の絡み合い
- 1-13 アメとゴムのふしぎ:伸長粘度
- 1-14 繊維強化樹脂の特徴
- 1-15 レオロジーと食品の関係性
- 1-16 高分子電解質の特徴
- 1-17 高分子説一世紀 ~高分子が長い長い分子からできていると、人類が確信したお話~
第2章 ウェットやわらか物質『ゲル』を知る
- 2-1 ゲルの定義
- 2-2 ゲルの不思議な現象:パーコレーション
- 2-3 人工筋肉の作成
- 2-4 不均一なゲルの特徴
- 2-5 ゲルの網目サイズ
- 2-6 ゲルはどのように反応するのか
- 2-7 ゲルの体積相転移
第3章 日本発 最強ゲル軍団
- 3-1 変形に強い環動ゲル(SRゲル)
- 3-2 力学的強度と伸縮性に富む有機ー無機ナノコンポジット(NCゲル)
- 3-3 最強ゲルの秘密-犠牲結合(DNゲル)
- 3-4 超高強度DNゲルの接着から生まれたパーティクルDNゲル
- 3-5 機械特性に優れた相互架橋網目ゲル(ICNゲル)
- 3-6 変形しても元に戻る形状記憶ゲル
- 3-7 新しい構造のジャングルジムゲル
- 3-8 光で曲がるゲル
- 3-9 知能材料になるバッキ―ゲル
- 3-10 混ぜると固まるテトラPEGゲル
- 3-11 穴の開いた分子と入り込む分子
- 3-12 イオンゲルによるソフトセンサー
- 3-13 摩擦を低くする超低摩擦ゲル
第4章 自然に学べ!天然やわらか物質のひみつ
- 4-1 3重らせん
- 4-2 水晶体
- 4-3 寒天
- 4-4 人工イクラ
- 4-5 そば打ちに一番大事なのは?
- 4-6 肉の硬さとやわらかさ
- 4-7 ふわふわ雪とトランプ氷
- 4-8 タンパク質のフォールディング
- 4-9 OCTで飛蚊症が見えた
- 4-10 やわらかいチョコレートのひみつ
- 4-11 チーズ
- 4-12 じゃがいものふしぎ
- 4-13 澱粉をレーザーで固める3Dフードプリンター
- 4-14 分子ガストロノミー ~科学を活かした調理の革命~
- 4-15 水の状態図
- 4-16 食べ物と飲み物のスケール~国際標準化の取り組み例から~
- 4-17 作ったマヨネーズをずっと安定させるには?
第5章 やわらか物質が拓く新世界
- 5-1 クレンジングクリームから学ぶ性質
- 5-2 ゲルの毛によるロボットのセルフクリーニング
- 5-3 3Dバイオプリンター~使い方はあなた次第!~
- 5-4 物質通信 ~物質の情報を転送し、離れた場所に再現する未来技術~
- 5-5 食品の3D印刷の未来
- 5-6 味を再現できるピクセルフードプリンター
- 5-7 宇宙エレベータ開発とカーボンナノチューブ
- 5-8 物理リザバー・コンピューティング
- 5-9 クラゲの動きから学ぶ身体知
- 5-10 いろんな形をつくれるやわらかブロック(MORI-A)
- 5-11 4Dプリンティングには多様性が大事
- 5-12 AM
- 5-13 食品のおいしさは長期保存できるのか~低温凍結粉砕技術~
- 5-14 バイオものづくり革命はセルロースで!~地球最大のバイオマス~
- 5-15 コロイドと粒子分散~コーヒーはろ過してもなぜ茶色いの?~
- 5-16 メタマテリアル~ありえないを可能にする技術~
- 5-17 生体直交反応~生体の中で独立に進む有機化学反応がもたらす創薬の革命~
プロフィール
古川英光
山形大学大学院理工学研究科機械システム工学専攻ソフト&ウェットマター工学研究室教授、兼やわらか3D共創コンソーシアム会長。高分子科学×機械工学を掛け合わせた『やわらかサイエンティスト』として活躍しており、高分子学会「高分子未来塾」塾長、日本科学未来館「知的やわらかものづくり革命」プロジェクト代表を務めている。