シン・SNS論 テック・ファシズムの支配に、どう立ち向かうか?
- 米田智彦 著
- 定価
- 1,980円(本体1,800円+税10%)
- 発売日
- 2026.1.7
- 判型
- 四六
- 頁数
- 424ページ
- ISBN
- 978-4-297-15345-8
サポート情報
概要
2026年、あなたとSNSの関係が変わる!!
最高の1冊!
報道の現場に立つ者として、そして「公共圏」を信じたい一人の市民として、私はこの本を読んで背筋が凍った。
堀 潤(ジャーナリスト/8bitNews代表)
この一冊は、私たちがこれから向き合わざるを得ない「メディアと社会の未来」を理解するための、極めて重要なガイドとなるだろう。
ロッタ・パスカル(京都大学准教授)
スマートフォンを手にした瞬間から、私たちの日常はSNSに囲まれています。タイムラインには怒りや断罪の声があふれ、気づけば心も時間も吸い込まれていく。本来「つながりの場」であったはずのSNSは、いつしか「依存」「監視」「操作」の装置へと変わってしまいました。今や私たちは、SNSを“使っている”つもりで、実はSNSに“使われている”のです。
本書は、単なるSNS批判ではありません。初期のmixiやFacebookにあった黎明期の希望、Twitter(X)が“公共空間”として果たした役割、YouTubeやInstagramが広めた承認と比較の文化、そしてTikTokに象徴される「注意の奪い合い」まで──SNSの光と影を立体的に描き出します。
その背景にあるのは、クラウド上に集まる膨大な個人データと、それを解析するアルゴリズムです。SNSのアルゴリズムは私たちの行動や感情を学習し、次に何を見せ、どう反応させるかをコントロールしていきます。便利さの裏で、私たちは「選んでいるようで選ばされている」状態に近づいているのです。
本書は、現在進行形の危機にも目を向けます。米上院でのテック企業CEOへの追及や、子どもの依存や自死をめぐる問題、日本で施行された「情報流通プラットフォーム対処法」など、SNSが社会制度や民主主義に突きつける現実を記録。「なぜ有害な情報を止められないのか」「なぜ言論の自由が制約されるのか」という、相矛盾する、かつ根源的な問いを投げかけます。
SNSはもはや「無料の便利な道具」ではなく、感情や行動、資本を吸い上げる巨大な経済装置へと進化しました。監視資本主義、感情資本主義、アルゴリズムの最適化──こうした構造にのみ込まれるなかで、私たちはどうすれば生き延びることができるのか。答えの1つは、プラットフォームに依存しない「共同体」や「コミュニティ」にあります。人と人とのつながりを見直すこと、それがテック・ファシズムの時代を生き抜く術なのです。テック・ファシズムの支配に、どう立ち向かうのか? そのヒントが、この1冊に詰まっています。
こんな方にオススメ
- 昨今のSNSの状況に不安や違和感を感じている人
目次
Part1 知識
01:歴史
- SNSの誕生と幸福な季節
- Facebook:「誰が、いつ、どこで、何をしていたか」
- Twitter:「現実の延長」から「公共空間」へ
- YouTube:「感情の消費と拡散」のループ
- Instagram:「自己表現」と「他者からの承認」の強力なサイクル
- TikTok:アルゴリズムによる「注意の奪い合い」
- ポケットの中のSNS──常時接続という生活の新基盤
02:構造
- 「監視資本主義」と「社会的アイデンティティの視覚化」
- 「即時性」と「パーソナライズの精度」
- 「感情のループ装置」と「感情資本主義」
- 「内省空間の喪失」と「アルゴリズムへの最適化」
03:統制
- 民主主義の危機──熟議なき社会と「感情ポピュリズム」の時代
- ネパール「Gen Z革命」と一日にして政府転覆したSNS抗議
- 「認知の設計者」と「思考する主体の再起動」
- SNS×AIによる「見えざる編集」の時代
- 中国贔屓のザッカーバーグとアメリカ資本による中国投資
- Facebook:暴かれる「グローバルSNS」の真実
- プラットフォーム資本主義の収奪システム
- クラウドに浮かぶ檻──新しい封建制の正体
- アルゴリズムによる支配と「透明性の罠」
- Google:検索の軍事的起源と支配戦略
04:監視
- Twitter Files:自由な言論空間の終焉を告げる内部告発
- TikTokが映し出す情報統制の最前線
- 現代の最強の武器──SNSを使った「認知戦」
- プラットフォーム統制という「見えない検閲」
- 諜報機関によるテックの利用
05:収益
- SNSマーケティングの終焉
- SNSのビジネスモデルは破綻するのか?
06:炎上
- 炎上はなぜ起こるのか?──SNSという負の感情増幅装置
- 炎上はSNSにおける宿命的現象である
- 「掲示板×投票」の政治性――Redditという公共圏の設計とゆらぎ
- 炎上に対する規制強化とSNSの責任
- 考察ノート/次章への問い
Part2 思考
07:自己
- 欲望の設計者たち ― アルゴリズムが人間の行動をデザインする
- SNSは新たな「空気」を創造したー「空気」と「現実」を混同しない知性
- 人間の“予測可能性”を数値化し、利用する
08:共同体
- デジタルとリアルの境界が曖昧になるとき、「自分」と「共同体」はどこに存在するのか?
- 「誰ともつながらずに生きていける」──デジタル社会における人間関係の再定義
- 団塊世代のつながり──「所属と義務」の共同体
- SNS──新しい公共空間への変容
- 「価値観のズレ」から「小さな共同体」へ
- 「共‐存在(être-avec)」の思想
09:ブランディング
- 企業・個⼈ブランドはどのように変化するのか?
- SNS の使い方を見直す:発信とブランディング
10:生成AI
- 生成AIによるSNSへの影響と情報洪水の構造
- SNSはAI基盤の「フロントエンド」にすぎなくなる
- 検索の終焉:Googleがもたらす“調べる”という行為の終わり
- SNSが増幅する「AI×人間ハイブリッド」のエコーチェンバー
- AIとSNSアルゴリズムはどう進化するか?
11:転換
- 生成AIバブルとSNS帝国の終焉──「1社総取り」時代へ
- GPU領主とSNS小作人の地獄絵図
12:自由
- 欧州連合、ついに自国民への制裁を開始
- 言論の自由を破壊する「デジタルサービス法」
- 管理・監視の全体主義に対抗するには、どうすればよいのか?
- テックファシズムによる支配──選ぶべきは“脱接続”か、“擬似的な幸福”か
Part3 再生
13:抵抗
- テクノロジーは人間の創造性と関係性のために機能するのか?
- ブロックチェーン技術が変えるデジタルアイデンティティ
- プライバシーを守るための法律と独立系メディア・市民ジャーナリズムへの支援戦略
- 草の根ホワイトハッカー連合──ネット自由の砦としての倫理的サイバー抵抗
- SNSによる監視への対抗戦略
- アルゴリズムによる言論統制と分散型SNSによる脱却
- 分散型SNSの最大の障壁──利用者の認知度と習慣の壁
14:暗号
- Telegram──暗号化SNSに宿る言論・表現の自由の未来
- Telegram──多機能で検閲に強いSNS
- 暗号化メッセージングアプリ「Signal」
15:規制
- そもそも「SNS規制」は誰のためのものか?
- 「誰が・どのように・何を基準に」規制を行うのか?
- SNSの規制は「自由を守るための制御」でなければならない
16:コミュニティ
- コミュニティの変化──つながり⽅のシフト
- ポストSNS時代の3つの潮流
- クローズドなコミュニティの台頭──Discord、Slack
- 「趣味コミュニティ」の分散化と新たな居場所探し
- 発信の最適化と居場所の再定義
- コミュニティがプラットフォームの中核となる時代
17:警鐘
- 「エコーチェンバー」と「フィルターバブル」──異なる社会的環境での交流
- デジタルミニマリズム──つながりすぎの逆襲
- インターネット普及率とSNS特有のリスク要因
- 陰湿なSNSいじめやリベンジポルノが人々を追い詰めている
18:再生
- SNSとAIの先にある「人間性の復権」
- 言論と表現の自由を守るための「使いこなすSNS」
- 生成AIと新たな統制――平均化に呑まれない
- 国境を越える声――生成AI翻訳の可能性
- 未来への提言――アルゴリズム時代に人間らしさを取り戻すために
- それでも、人は人として生きたい
- 未来のSNSは私たちが作る
- SNSと生成AI支配の時代を生き抜く四つの哲学
- 終幕:世界がどれほど変わろうとも──人間に残された二つのこと
プロフィール
米田智彦
作家、コンテンツディレクター、Web3 Research Lab所長、CBEA特任教授。福岡市出身、青山学院大学、デジタルハリウッド、京都VR Innovation Academy、NY StartupPilot Global卒。『ライフハッカージャパン』編集長、『FINDERS』創刊編集長、株式会社メディアジーン執行役員、株式会社シー・エヌ・エス・メディア代表取締役を歴任。著作に『これからを面白くしそうな31人に会いに行った。』(2008年、ピエ・ブックス)、『僕らの時代のライフデザイン』(2013年、ダイヤモンド社)、『デジタルデトックスのすすめ』(2014年、PHP研究所)、『僕らの時代の移住地図』(2017年、ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。2023年、国際テックカンファレンス「Internet2.0 DUBAI SUPRING 2023」にて日本人初の「Outstanding Leadership Award」受賞。他にも『GLOBAL GAME CHANGERS 2023』『FORTTUNA GLOBAL EXCELLENCE AWARD』『Education Invester Award』等ノミネート。同年、「世界一の起業家育成プログラム」と名高い、ピーター・ティールやサム・アルトマンが経営に関わり、AirBnBやBoxを輩出した「Y Combinator」に参加。