業務設計の教科書
- 武内俊介 著
- 定価
- 2,640円(本体2,400円+税10%)
- 発売日
- 2025.12.25
- 判型
- A5
- 頁数
- 304ページ
- ISBN
- 978-4-297-15372-4 978-4-297-15373-1
概要
近年、システム・AI導入やDX推進が目的化し、現場の非効率が温存されたままプロジェクトが進行してしまうケースが増加しています。本書『業務設計の教科書』は、デジタル技術を真の成果につなげるための土台、すなわち業務プロセスの構造化と再設計を体系的に解説した実用書です。本書の主な特徴は、以下3点にあります。
特徴の1つが、「業務設計の基礎から継続的改善までを体系的に学べる」点です。本書は、業務改善を単発の取り組みで終わらせず、組織能力として定着させるための道筋を、理論と本質的な思考法に基づいて体系的に解説しています。要件定義の前段階として、システム化すべき業務プロセスそのものを明確にする方法を提供します。
特徴の2つ目が、「現場主導で進める多角的な現状分析と可視化のための実践的なWORKINGを収録している」点です。本書で取り上げている数々のワークシートを通して、業務部門とシステム部門が共通認識を持ちながら、部分最適に陥ることなく全体最適な業務プロセスを構築する方法を詳述しています。
特徴3つ目が、「DXプロジェクトが主題のストーリーで理論の実践と定着を追体験できる」点です。本書の最終章(第7章)では、架空の中堅メーカー『高山技研』のDXプロジェクトを舞台にしたストーリーを通して、これまでに解説された業務設計の理論が、現場でどのように適用され、成功へと導かれるのかを追体験できます。
これらの充実したコンテンツと業務設計の初心者に向けての購入者特典を通して、業務プロセスの可視化から改善の実践、そして組織への定着といった業務設計の基本を学ぶことができます。「技術ありき」ではなく「業務ありき」の視点で変革を進めたい方にとって、確かな指針となる1冊です。
購入者特典
WORKING 0 対象の業務を決める
TRAINING 1 整理する
こんな方にオススメ
- システム開発の上流工程に携わるエンジニア、情報システム部門の方、ITコンサルティングの方々
- システム導入を通して業務設計、業務改善に取り組みたい経理・人事・総務などバックオフィス部門の方々
- 属人化を解消し、変化に強い組織能力を構築したいと考える方々
目次
第1章 本書の読み方と論文を読み解く技術
1.1 目的化したシステム導入と開発の罠
- RPA導入の罠
- システム導入が最良の解決策なのか
- 業務設計の原点
1.2 対立する情報システム部門と業務部門
- DXブームの中での水掛け論
- SaaSの普及による変化
- どちらが要件定義をやるべきか
1.3 人間とシステムの最適な組み合わせ
- デジタル化は仕事を奪うのか
- 業務の3分類
1.4 システム導入・開発の前に業務設計が必要
- 兵站の重要性
- テクノロジーの社内実装
第2章 業務設計の重要性を理解する
2.1 業務の地図を作る
- チームを機能させる
- ホワイトカラー業務における設計の重要性
- 業務の継続性の担保
2.2 視点を切り替えながら設計する
- 業務設計を支える3つの目
- 暗黙知を形式知に昇華する
2.3 具体と抽象を行き来する
- 抽象化するから理解できる
- AIと業務設計の関わり
第3章 現状の業務を分析する
3.1 業務の全体像を把握
- すべての仕事は繋がっている
- 現状を正しく把握する
- 業務定義シートと業務の地図
3.2 業務の手順を整理する
- タクミのシクミ化
- ムダ時間の排除
第4章 業務の本質に迫る
4.1 必要な業務の見極め
- 頑張りすぎる弊害
- 仕事と作業の区別
4.2 まずはルートを見極める
- 情報の流れを把握する
- DX・デジタル化のために現状を認識する
4.3 ムダの特定と撤廃
- 業務のスリム化
- 自動化の前の整理がすべて
4.4 理想の業務プロセスを設計する
- 後工程からの逆算
- 具体化した後に、抽象化する
- 短期の非効率が、中長期の効率をつくる
第5章 適材適所にシステムを活用する
5.1 すべての業務をデジタル化する必要はあるか
- 現時点でのAIの限界
- システム化にこだわる罠
5.2 業務を支えるシステムを選定する
- ベスト・プラクティスの限界
- 業務設計を活かしたシステム選定
- 新しい業務プロセスのすり合わせ
第6章 アジャイルな継続的改善を実施する
6.1 業務設計は一度では終わらない
- 業務は常に変化する
- なぜ業務設計は継続的に行うべきなのか
6.2 業務変化とともに生まれるムダと非効率
- 小さな変化が積み重なり、ムダが生まれる
- 属人化が生む非効率
- ブラックボックス化が生む混乱
- 業務と人を切り離すことの重要性
6.3 業務を再設計しやすくする
- 業務の変更をスムーズに進めるために
- システムの変更と業務の関係
6.4 小さな改善を日々積み重ねる重要性
- 業務設計におけるアジャイル思考
- 改善し続けることを前提に業務を設計する
- オペレーショナル・エクセレンスを実現する土台としての業務設計
第7章 ストーリーで学ぶ業務設計
7.1 DXプロジェクトの失敗
- 突然の抜擢
- システムの選定と役員会
- プロジェクトのキックオフ
- 準備不足の要件定義
7.2 業務設計という光
- 役員会後の重圧と自責
- プロジェクト崩壊の危機
- 同期からの指摘
- 先輩からの助言
- 小さなチームの再出発
- 小野寺の空回り
7.3 現状分析と現場の壁
- 対象業務の選定
- 立ちはだかる現場の壁
- 砦の守護者、城ヶ崎課長
- 業務定義シートと業務の地図
- 突破口は現場にあり
- 小さな一歩
7.4 ムダの発見と変化の兆し
- ECRSとの格闘
- ムダの発見
- 城ヶ崎課長との対話
- 城ヶ崎の告白と変化の兆し
7.5 再構築とシステムの選定
- 業務プロセスの再構築
- 最適なシステムの選定
7.6 次の業務設計へ
- 役員会での報告
- 業務の棚卸しと継続的な改善
- 経理の業務設計
- 終わりのない旅
WORKING 1 業務設計の重要性を理解する
- なぜ業務定義シートが必要なのか
- 業務定義シートの構成
- OUTPUTと目的の違いについて
- 書き方のポイント
- 例:請求書発行業務の業務定義シート
WORKING 2 業務の地図を作る
- 業務のつながりを見える化する
- 業務の地図が必要な理由
- 2つのテンプレート
- 書き方のポイント
- 例:請求書発行業務の業務定義シート
WORKING 3 個別定義シートを作る
- なぜ個別定義シートが必要なのか
- 個別定義シートの構成
- 書き方のポイント
- サンプル:請求書作成業務
WORKING 4 前後の業務のすり合わせを行う
- 業務は自分の工程だけでは完結しない
- WORKING4の進め方
WORKING 5 情報の地図 を作る
- 業務の地図と情報の地図の違い
- 情報の地図の作成
WORKING 6 課題を洗い出す
- 内容のすり合わせと修正
- 現状を共有した上で、課題を洗い出す
WORKING 7 業務のスリム化施策の検討
- WORKING7の進め方
- 優先順位マトリクス
- 活用のポイント
WORKING 8 理想の具体化とギャップ分析
- 理想の状態を決める
- ギャップを洗い出し、必要な施策を明らかにする
- 施策リストを統合・再整理する
- システムの導入検討に向けて
WORKING 9 導入するシステムを検討
- システム選定の5つのステップ
- マトリクス評価のポイント解説
WORKING 10 システム導入後の業務を再設計
- ステップ1 システム導入による変更点を整理する
- ステップ2 業務定義シートを修正する
- ステップ3 業務の地図を修正する
- ステップ4 個別定義シートを工程ごとに修正する
- ステップ5 整合性の確認をする
- ステップ6 最終チェックをする
購入者特典
- WORKING 0 対象の業務を決める
- TRAINING 1 整理する
プロフィール
武内俊介
1981年生まれ。業務設計士、税理士。株式会社KEELL及び株式会社リベロ・コンサルティング代表取締役。金融、会計事務所、スタートアップを経て、2018年に業務設計コンサルティングを開始。DX推進プロジェクトにおける「業務の可視化と構造化」を中心にさまざまな企業を支援している。X:@Libero_shunsuke
著者の一言
「DX」や「AI導入」を成功させる鍵は、システムやAIの性能ではなく業務を整理し、仕組みとして整える「業務設計」にあります。日々の業務を誰でも理解し、再現できるかたちで体系化したのが本書です。現場主導で業務を変えていく力を一緒に身につけていきましょう。