2009年11月20日
印刷だけの欠礼状が主流ですが
12月も近づき,そろそろ年賀状の図案を考え始める頃。場合によっては,その頃までには出しておかなければならないものに,年賀の欠礼状があります。
喪中の年賀欠礼の葉書は,表も裏も印刷されただけの状態で出すのが今や主流のようです。これには受け取る側も,ひと目見て「欠礼状」と認識出来るという利点はあります。しかし受取った方が故人と親しかった場合,その素っ気なさ故に寂しい気持ちに拍車がかかるでしょう。
いわゆる「欠礼のマナー」などには,よく喪中とする範囲として「故人から見た2親等以内,同居の場合は3親等も」と書いてあります。
さらには「叔父叔母・甥姪が3親等にあたりますが,仕事関係の方でしたら,2親等であっても祖父母や孫の喪中の欠礼はしないのが一般的……」などなど。とても事務的な振り分け方ですね。
「欠礼状が届いたから返事を出さない」わけではありません
そのように,かなり儀礼的に出されることの多い欠礼状に対して,皆さんは返事を出していますか?
近頃では,「欠礼状が届いたら,年賀状を出さないことがマナーである」と思っていらっしゃる方が多いようです。しかし,実は「年賀状を出さない」のであって,「返事を出さない」ということではありません。「寒中見舞い(※)」として,お悔やみの言葉を添えてお返事するのがよろしいでしょう。
このように,出した方へ多少なりとも負担をおかけするのですから,表裏ともに印刷のみというのはとても失礼なことのような気がします。
一方で,「家族全員がそれぞれの知り合いの知り合いである」という,サザエさん一家のような家庭に,現代ではあまりお目にかかることはありません。ですから急なご不幸に際し,残された家族が全ての欠礼状にひと言を添えるのが難しいことは,無理もありません。
しかし,いつか来るであろう自身の「そのとき」の為に,毎年の年賀状でそれぞれの相手に,「これが最後であっても悔いの無いひと言」を添えておくことは出来ます。その積み重ねによって残された言葉達が,残された方の寂しさを癒す最後の年賀状となってくれるでしょう。
頂いた年賀状は,やはり大事に保管しておきたいものです。生前の故人を思いながら書かれた,相手からのひと言を読み返すことで,例えお会いした事がなかったとしても,その方への欠礼状にひと言を添えることが出来るかもしれません。
そして故人から頂いた年賀状を,残された家族の方にお見せする機会がありましたら,それもまたご家族の癒しとなるでしょう。
最後に,年賀状は「社会人としての常識」や「マナー」から“義務的に出すもの”ではありません。
すべての儀式,風習,慣習にはそれぞれに意味が込められています。表面的なものだけを次の世代に渡したとしても,本質の伴わないものは,やがて廃れて行くでしょう。
皆様の年賀状が,今年もより一層素敵なものになりますよう,心から願っております。
- ※ 寒中見舞い
- 寒の入り(1月5日)頃から立春の前の日(2月4日)頃に出す見舞い。ここでは葉書を指す。