あなたに伝えたい⁠Web API開発の技と知恵

「Web APIをきちんと説明できますか?」――この問いから離れて

Web APIとは何でしょうか。きちんと説明できますか?――世の中の入門書には、こういう問いから解説が始まるものがあります。今回はあえてそうした問いではなく、なぜWeb API開発実践ガイドを企画したのかについて、Software Design別冊の意義をふまえつつ振り返ってみます。

そもそも、Software Design別冊とは……?

「Software Design別冊」は、その名のとおり、Software Design誌の過去記事を特定のテーマで再録、再編集した書籍です。いわゆるムックですね。本書に関心をお持ちの方は、Software Designについて特別な説明は不要な気がしますが、簡単にお伝えするとITエンジニア向けの総合技術解説雑誌です。現行のキャッチコピーは、⁠OS・Web・プログラミング、技術者のスキルアップのための総合誌⁠⁠。おかげさまで、創刊から優に30年を超えました。

そんなSoftware Designで好評を博した記事のベストセレクション、それがSoftware Design別冊なのです。

なぜ『Web API開発実践ガイド』を企画したのか

ここでようやく本題です。なぜ『Web API開発実践ガイド』を企画したのか。その答えは簡単です。今のWeb API開発、ひいてはWeb開発について、私(本記事の筆者)自身があらためて概観をつかみたかったのです。

今や、⁠APIファースト」なんて言葉がごく普通に使われるようになるほど、開発者にとってWeb APIは重要な存在になっています。みなさんが携わっているサービスもきっと、Web APIを開発・提供していますよね。だからこそ、Web APIの特集記事にフォーカスし、再編集することで、Web APIを起点に、現代のWeb開発で要求されるものは何か……そう、Web開発の現在地を私自身が見つめ直したいと考えました。

Web APIのプロへ!

本書のキャッチコピーは、⁠プロのためのWeb API開発入門⁠⁠。ここには、プロ志向の人に読んでほしいという思いに加え、現場の声を最大限に詰め込んだという意図も込めています。すなわち、Web APIがまるごとわかるという意味でプロ志向であり、プロフェッショナルな著者陣がそれぞれの現場で得たノウハウを収めたという意味でアツい本でもあります。

今回は、一部、二部などに分けてはいませんが、第1~3章でREST API、gRPC、GraphQLのエッセンスを学び、第4、5章でテストやセキュリティといった品質向上に関わるツボを押さえられる、という構成にしています。なかなかよくばりな1冊ですよね。

と言いながら、各章それぞれ独立した内容ゆえに、どこから読んでも役立つのも本書の強みです。課題や目的ごとに章を大きく分けると、だいたい次のようになるでしょうか。

  • Webの歴史から振り返りたいあなた→第1章
  • 難しい技術のエッセンスをつかみたいあなた→第2、3章
  • より良いWeb APIを作りたいあなた→第4、5章

経験上、1冊の書籍を読み進めるのはなかなか大変な印象がありますが、どうでしょう、章単位なら案外するっと読み通せる気がしませんか?

ただ、企画者の立場としては、第1章の「1-1. Web APIの目的と技術要素」は外せないことをお伝えしておきます。というのは、この記事はREST APIそのものというより、それこそ本記事の冒頭でも触れた、⁠Web APIとは何か?」ということをかみ砕いているためです。私自身、かつてSoftware Design編集部でWeb開発の記事を企画編集していた際、この記事を何度も振り返り、読み直していました。その意味でも非常に印象深い記事です。今回、本書を編集するにあたり、あらためて読み返しましたが、今もなおイントロダクションにふさわしい、基礎学習に役立つ内容だと思います。


ちなみに、来る9月には、Webセキュリティをテーマとした別冊の刊行も控えています。合わせて読むと、鬼に金棒ですよ。

山本紘彰(やまもとひろあき)

技術評論社第5編集部所属。2024年度までSoftware Design編集部で月刊誌『Software Design』の編集に従事。現在は技術書を中心に書籍の企画・編集を担当。
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山本紘彰(やまもとひろあき)

Software Design編集部所属。2019年度入社。