データ基盤構築への「次の一歩」踏み出そう

ビジネスのあらゆるデータを、形式を問わず「生のまま」1箇所に集約する「データレイク⁠⁠。データ活用の柔軟性を高め、ニーズに応じてさまざまなツールを使い分けられるようにするこのコンセプトは、データの可能性を引き出したい企業の多くで採用されています。ただし、こうしたアプローチ特有の課題も見逃すわけにはいきません。やみくもにデータを貯めこむだけでは、次のような課題が生じてしまいかねないのです。

  • 一貫しないデータ:複数のシステムが同時にデータを書き込むと、処理の途中で不整合なデータが生じてしまう
  • 非効率な更新:特定のレコードだけを更新・削除する場合でも、巨大なファイルを丸ごと書き直す必要がある
  • 複雑な運用:データの構造(スキーマ)が変更されると、過去のデータとの互換性を保つための対応が煩雑になる

こうした課題は、データレイクを本格的な「基盤」として運用するうえでの大きな障壁となっていました。そして、この状況を打破するために生まれたのがApache Icebergに代表される新しいテーブルフォーマットです。

データレイクを「基盤」へと進化させるIceberg

テーブルフォーマットは、データレイク上にある単なるファイルの集まりを、あたかも高性能なデータベースの「テーブル」のように扱えるようにするための技術です。なかでもIcebergは、従来のデータレイクが抱えていた先のような課題を改善するために生まれた新しいテーブルフォーマットの代表です。Icebergを適切に運用することで、以下のような機能を実現できるのです。

  • データベースのような信頼性:ACIDトランザクションをサポートしており、安全なデータの読み書きを実現できる
  • タイムトラベル機能:「昨日の15時時点のデータ」といった要求に即座に応え、誤った更新を元に戻す(ロールバック)ことも容易
  • 柔軟なスキーマ進化:カラムの追加やデータ型の変更があっても、データ全体を書き直すことなく柔軟に対応可能
  • 圧倒的なパフォーマンス:独自のメタデータを活用しクエリ実行時に不要なファイルの読み込みをスキップすることで、分析速度を向上させられる

また、Icebergの持つ「オープンさ」と、それにともなう高い相互運用性も重要です。Icebergはオープンソースとして開発されており、Apache SparkやFlink、Trinoといったさまざまなエンジンから同じデータを直接読み書きできます。これにより、データを都度コピーすることなく、分析、バッチ処理、ストリーミングといった用途に応じて最適なツールを使い分けるという、データレイクの理想像に近づけるのです。

以上のように、Icebergは現代のデータ基盤における「共通言語」と言えるでしょう。

理論を実践に繋げる、最初の1冊

そんなIcebergを理論だけでなく実践を通して身につけたいエンジニアにおすすめの1冊が実践Apache Icebergです。

Icebergを中心としたデータ基盤構築の基礎から応用までを体系的に習得することを目的とした本書の何よりの特徴は、Dockerだけで完結する実践的なハンズオン環境にあります。Apache Spark、Apache Flink、Trino、Apache Hive、PyIcebergといった、現場で使われる主要クエリエンジンでのIceberg操作をしっかりと網羅することはもちろん、各種ユースケースに応じた実践的なハンズオンや、AWSでのIcebergの活用、運用管理・パフォーマンス最適化といった応用トピックまで、ハンズオンとともに学んでいくことが可能です。

データ基盤構築の「次の一歩」を踏み出すために、本書とともに学んでいきましょう。