いま注目を集める「技術広報」何をしているのか

「技術広報」は、企業が持つ技術力や技術的な取り組みを、主に社外のエンジニアコミュニティに向けて発信し、共有する活動です。これは単なる自社のアピールに留まらず、技術的な知見を世に還元し、エンジニアリングの発展に貢献することを通じて、結果として自社のファンを増やしていく、息の長い取り組みです。

その究極的な目標は、エンジニアが自社の技術や組織、エンジニアリングカルチャーに共感や好感を持つ状態を実現することです。採用広報との最大の違いは、⁠エンジニアリングへの貢献」という視点が不可欠である点にあり、技術コミュニティの利益を第一に考えるバランス感覚が求められます。

テックブログの運営、イベントの開催、カンファレンススポンサー

2023年頃から、技術広報のポジションを設ける企業が急速に増えており、その背景にはコロナ禍以降のエンジニア採用ニーズの高まりや、人材エージェントの手数料上昇があります。ITエンジニアの採用難易度が深刻化する中で、企業が採用競争に勝ち抜くためには、エンジニアが自社に好印象を抱き、認知度を高めることが不可欠だからです。

技術広報の主な活動には、テックブログの運営、自社イベントの開催、カンファレンススポンサーなどがあります。これらは金銭的コストが比較的低い第一歩となるものから、参加者と直接コミュニケーションを取り、深い技術的議論や交流を可能にするもの、特定の技術領域のエンジニアに効率的に認知を獲得するものまで多岐にわたります。

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技術広報は即時的な成果を求める活動ではなく、長期的な視点でコツコツと育てていく取り組みです。効果を体感できるまでには最低でも1年ほどの地道な活動が求められます。この分野は比較的新しいため、多くの企業では人事、採用広報、現場のエンジニアなどが兼務で取り組んでいるのが実情です。

技術広報には、エンジニアと非エンジニアのギャップを埋めるコミュニケーションスキル、イベントや協賛を効率的に組織・実行するプロジェクトマネジメントスキル、相手の感情を揺さぶり行動を引き出す巻き込み力がキースキルとされます。また、変化の激しい技術分野に対応するための高い学習意欲、社内の発信文化を醸成する「褒めファースト」の姿勢、謙虚さ・尊敬・信頼を意味するHRTの精神、そしてコミュニティの成長を優先するギブの精神といったマインドセットも重要です。

エンジニアとしての経験は歓迎されますが、必須ではなく、エンジニアとの協業経験やチームを越えた連携で成果を出した経験が特に重視されます。

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技術広報は企業を成長させる

技術広報は、企業の認知度やブランド力を高めるだけでなく、採用競争力の強化、社内エンジニアの成長支援、そして組織全体の技術力向上に寄与する、企業成長の重要な柱となる活動と言えるでしょう。

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