異常検知でデータ分析の戦略の幅を広げよう!

データ分析の世界は広く、⁠次に何を勉強すべきか?」に悩む方も多いのではないでしょうか。そんな方におすすめしたいテーマが異常検知です。その理由は次の2つです。

  • 実務で使える場面が多い、実用性の高い手法であること
  • 教師なし学習や統計モデリングなど、発展的な機械学習・統計手法を学ぶのに適した題材であること

この記事では、異常検知がなぜデータ分析スキルを広げるのに最適なのか、そして本書がどのようにその学びをサポートするかを紹介します。

異常検知は「実務で使える」テーマ

ビジネスにおいて「成果を伸ばす」ことは重要ですが、⁠損失を防ぐ」ことも同じくらい重要です。不良品や装置の故障、不正アクセス、疾患など、マイナスの兆候を早期に察知して被害を最小化する、そのための技術が異常検知です。

熱中症を例に挙げると、次の図のように気象データをもとに異常を検知して早期に対策することで、健康被害のリスクを未然に防ぐことができます。

図1

損失防止というメリットにダイレクトに寄与する異常検知は、製造業・セキュリティ・金融・医療など、あらゆる分野で活用が進んでいます。このように実際に成果が出ている技術を題材に学べることが、異常検知の大きな魅力です。

異常検知は「機械学習・統計の学びを深められる題材」でもある

データ分析の基礎を身につけた方が次に悩むのが、より発展的な内容をどのように学ぶかです。

たとえば機械学習では、まず線形回帰やランダムフォレストのような教師あり学習を学ぶことが一般的ですが、次のステップとして人気があるのが、密度推定やクラスタリングのような教師なし学習です。東京大学のデータサイエンス養成プログラムでも、教師あり学習の直後に教師なし学習を学ぶ構成となっています。

一方で、予測というわかりやすい目的を持つ教師あり学習と比べ、教師なし学習は「何に使えばいいのか」が見えづらく、実務での活用イメージがつかめずに挫折しがちなテーマでもあります。異常検知は教師なし学習の代表的な応用領域であり、明確な目的と実務的なイメージを持って学べる題材です。

また統計分野においても、発展的な学習対象として人気が高い統計モデリング・ベイズ統計モデリングを、代表的な応用先である異常検知と組み合わせて学ぶことで理解がぐっと深まります。

10月27日発売のまるごと学べる 異常検知の実践知は、このような実践的なスキルの幅を広げたい方にピッタリの一冊です!データの前処理から教師あり・教師なし学習、ベイズ統計モデリング、性能評価の方法まで、多彩なデータ分析手法を「異常検知」というテーマを通じて体系的に学べます。

図2

実践で直面する課題にも対応

本書ではこのような手法の紹介に加え、異常検知を現場で活かすために避けては通れない課題とその解決策を、実例を交えながら丁寧に解説しています。

  • 異常データが十分に集められない
  • 計数(カウント)データで誤判定が増えやすい
  • 変数が多く、どれをモデルに入れるべきか分からない
  • 時間の経過でモデルの性能が落ちる(モデルドリフト)

これらの問題に向かい合いながら、実務で使える「異常検知の考え方」を身につけていきます。

Pythonで実装しながら学べる!

サポートページでは、書籍の内容に対応したJupyter Notebook形式のサンプルコードを多数公開しています。読むだけでなく「動かして学ぶ」ことができるため、ぜひこのサポートページものぞいてみてください。本文だけでは得られない気づきがきっとあります!

また書籍中では扱いきれなかった内容を理論を中心に解説しており、異常検知や統計・機械学習の理論を深めたい方にもおすすめです。

異常検知でデータ分析の「次のステップ」

このように本書は、⁠異常検知を学びたい方」だけでなく、データ分析の知識と戦略の幅を広げたいすべての方におすすめの1冊です。

ちなみに、来年度には画像を対象とした深層学習による異常検知を扱う『深層学習編』の刊行も予定しています。教師なし深層学習や生成モデルの理解を深めたい方は、ぜひあわせてご期待ください!

プロフィール

中村謙太

Qiita@c60evaporatorなどの技術発信プラットフォームで、Pythonを用いた機械学習、クラウド、IoTの記事を多数公開。