書籍概要

【システム開発】火事場プロジェクトの法則
〜どうすればデスマーチをなくせるか?

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概要

IT業界永遠の問題に真っ向から挑んだ1冊。独自の「デスマーチ・チェックリスト」で失敗プロジェクトを生み出す体質を診断 → 改善につなげるアクションを提示。システム開発に14年間従事した著者が,自らの体験をもとに,理論だけでは伝わらない真実を解き明かします。

こんな方におすすめ

  • プロジェクトの失敗(デスマーチ)をなんとかしたいSE/プログラマ/プロジェクトマネージャーの方
  • IT業界に関心のある方/システム開発を外部に委託している会社の方
  • 理論はわかっているものの、実践(成功)につながらない方

目次

  • 本書の構成・使い方 ―― デスマーチ・チェックリスト

■第1部 火事場プロジェクトの○と×

B:バードビュー 全体指向/継続指向

  • ■B1
  • 【個人】顧客が本当に必要としているモノ(「ありがとう」と言ってもらえるモノ)がわかる
  • 【組織】顧客が必要としているモノを探り出す仕組みがある
    • ×:顧客の要望が曖昧
    • ×:顧客の要求が大きすぎる
    • ×:顧客からの仕様変更が多い
    • ×:良い物は無条件に売れると信じている
    • ○:複数のレベルの解決策を提案する
    • ○:顧客にとっての良い物を考える
    • ○:だれがどのような「ハッピー」を感じるのか考える
  • ■B2
  • 【個人】自分の「強み」をきちんと理解している
  • 【組織】チームの「強み」をきちんと理解している
    • ×:なんでもできる
    • ×:最新の知識が強みだと思っている
    • ○:自分/チームにできることを書き出してみる
    • ○:地図を持つ/Must-Will-Canの図を描く
  • ■B3
  • 【個人】わかりやすさを優先している
  • 【組織】ルールを減らす努力をしている
    • ×:自分が理解できればいいと思っている
    • ×:無駄なルールがある
    • ○:わかりやすいコードを書く
    • ○:無意味なルールをなくす
  • ■B4
  • 【個人】目の前にある作業に没頭せず,まわりの状況も把握している
  • 【組織】部分的な効率よりも全体的な効率を優先している
    • ×:全力疾走している
    • ×:歯車になる
    • ×:隣の人が何をしているのかよくわからない
    • ○:最も弱い部分を効率化する
    • ○:常に,より良い方法を探し続ける
    • ○:すべての作業工程を理解する
    • ○:クリティカルパスを知る
    • ○:大切なことから実行する
    • コラム ウォーターフォールはすべての作業がクリティカルパス
  • ■B5
  • 【個人】作業項目ではなく,要件単位に仕事を分割している
  • 【組織】人数とスキルから納期やコストを計算している
    • ×:人材が足りないと思っている
    • ×:人海戦術
    • ×:人月計算で人数をわりだしている
    • ○:並列に分割する
    • ○:「人数×期間=規模」で計算する
    • コラム:どんぶり勘定/人月計算
  • ■B6
  • 【個人】仕事だけを優先しない
  • 【組織】コストとパフォーマンスの両立を目指している
    • ×:仕事が一番大切だと思っている
    • ×:コストを避ける
    • ○:コストとパフォーマンスが両立する点を探す

C:コミュニケーション 共有指向

  • ■C1
  • 【個人】「こんにちは」「ありがとう」などの基本的なあいさつがきちんとできている
  • 【組織】ルールで縛らずに,個人の誠実さやモラルを尊重している
    • ×:あいさつと仕事は無関係だと思っている
    • ○:きちんとあいさつする
    • ○:気持ちを込める
  • ■C2
  • 【個人】いつでも相談できる相手がいる
  • 【組織】気軽に話せる場がある
    • ×:会議を開くまでの段取りが長い
    • ×:雑談はムダだと考えている
    • ○:雑談を活用する
    • ○:喫茶室や喫煙室を有効に使う
    • ○:スタンドアップミーティングをする
  • ■C3
  • 【個人】上司にいつでも気軽に話ができる
  • 【組織】部下の意見を大切にしている
    • ×:上意下達の一方通行
    • ×:まちがったやり方を押し付ける
    • ×:上司を敵だと思っている
    • ○:話を聞く
    • 〇:信用を大切にする
    • ○:頼られる存在になる/頼れる人を探す
  • ■C4
  • 【個人】顧客の声を直接聞いている
  • 【組織】開発だけでなく,いろいろな仕事を経験させている
    • ×:言った!言わない!の水掛け論が多い
    • ×:歩み寄ろうとしない
    • ○:相手の要求を積極的に聞き出す
    • 〇:自ら顧客にアポをとる
    • ○:顧客の現場に足を運ぶ
    • 〇:飲みに(食事に)行く
    • コラム 情報が正しく伝わらない/ノイズが多い
  • ■C5
  • 【個人】担当を超えて,アイディアを発信したり,練り上げることができる
  • 【組織】チーム間,部門間で情報(意見やアイディア)がとおりやすい
    • ×:部門間での勝ち負けを重視する
    • ○:人の交流を加速する
  • ■C6
  • 【個人】メールばかりに頼らず,直接対話も大切にしている
  • 【組織】情報を共有するための仕組みがある
    • ×:黙々と,淡々と仕事をする
    • ○:直接会って話し合う
    • ○:ホワイトボードを使う
    • ○:手書きで描く
    • ○:大きな紙に描いて壁に張る

E:エモーション 人間指向

  • ■E1
  • 【個人】チームや組織のビジョンに共感できる(近くに目標となるようなあこがれの人物がいる)
  • 【組織】ビジョンに対するチームの位置を把握できる
    • ×:チームがバラバラ/どの方向に進んでいるのかわからない
    • ○:ビジョンを共有する
    • ○:マイルストーンを置く
  • ■E2
  • 【個人】やりがい,達成感,充実感(まわりからの期待や信頼)がある
  • 【組織】地位や金銭以外の報酬(対価)に力を入れている
    • ×:報酬のみを増やす
    • ○:金銭以外の報酬に力を入れる
    • ○:ほめる/認める
  • ■E3
  • 【個人】顧客の役に立っていると感じている
  • 【組織】顧客の感情が全員に届くようになっている
    • ×:何を作っているのかわからない/何のために仕事しているかわからない
    • ○:作業に意味を持つ/意味や意義を「見える化」する
    • ○:笑顔,感謝,喜びに触れる
  • ■E4
  • 【個人】上司や仲間の言葉に納得できる
  • 【組織】「命令」より「共感」を優先している
    • ×:人を物のように扱う
    • ×:根性論
    • ○:感情を大切にする
  • ■E5
  • 【個人】仕事量は適切だと感じている
  • 【組織】チーム全員の疲弊度を把握する仕組みがある
    • ×:いつもいそがしい/家に帰れない
    • ×:残業が美徳になっている
    • ×:割り込みが多い/兼業が多い
    • ○:1つのプロジェクトに集中させる
    • ○:ゆとりをとる/バッファをとる
    • ○:感情を表してみる
  • ■E6
  • 【個人】仕事に誇りを持てている
  • 【組織】人に誇れるチームである
    • ×:不誠実/後ろめたさを感じる
    • ○:誠実さを大切にする
    • ○:やるべきことをきちんとやる

F:フィードバック 適応指向

  • ■F1
  • 【個人】顧客の声を改善に活かしている
  • 【組織】顧客の声がスムーズに流れている(対応が早い)
    • ×:顧客を敵だと思っている
    • ×:クレームを受け付けない
    • ○:プロトタイプを出す
    • ○:アンケートをとる
    • ○:反復開発をする(アジャイル開発を意識する)
    • コラム 永遠のベータ版と考える
  • ■F2
  • 【個人】失敗をすばやく正確に報告することができる
  • 【組織】失敗を受け入れている
    • ×:失敗を隠す/問題を隠す
    • ×:失敗を恐れる/失敗を避ける
    • ○:失敗を共有する
    • ○:失敗を怒らない
  • ■F3
  • 【個人】問題を話せる人(解決できる人)がすぐ近くにいる
  • 【組織】問題や失敗を大きくしないうちに見つけだし,すばやく修正し,検証できる
    • ×:表面を取り繕う
    • ○:根本原因を探る/なぜを5回繰り返す
    • ○:全員の距離を近くする
    • ○:顧客を巻き込む
  • ■F4
  • 【個人】新しい技術ややり方に積極的に挑戦している
  • 【組織】変化やリスクを受け入れる仕組みがある(リスクに過剰に反応しない)
    • ×:変化を避ける
    • ○:フィードバックしながらリスクを最小限にする
    • ○:ゆとりを持つ/安全域を持つ
    • ○:単体テストをする/自動テストをする
    • ○:デイリービルド/常に動くコードを維持する
  • ■F5
  • 【個人】現場の経験や勘を大切にしている
  • 【組織】理論ばかりではなく実践や実験を重視している
    • ×:現実を見ない/現状を知らない(特に上司が)
    • ×:数字しか見ない/理論にこだわる/技術にこだわる
    • ×:現場に権限がない/やらせない
    • ○:やってみる/体感する
    • ○:数字よりも意味や価値を見る
    • ○:検証済み/実践済みの知識を重視する
    • ○:権限を委譲する/委譲してもらう
  • ■F6
  • 【個人】積極的に知識や知恵を共有している
  • 【組織】1つの作業を2人以上が理解している(作業のバックアップやフォローする体制ができている)
    • ×:仕事を休めない/休むと全体の作業が止まる
    • ○:レビューをする
    • ○:ペアプログラミングをする

■第2部 デスマーチを斬る

1章 デスマーチはなぜ生まれるのか

  • 一生,飢えない
  • 1-1 おかしいことを疑問に思わない
    • モノづくりが好き
    • 人と関わらなくても仕事が終わる
    • ルールの意味がわからない
    • 無駄なルール
    • 作業の意味がわからない
    • だれも読まないドキュメント
    • 顧客は何もわからない
    • テスト=ハンコをもらう仕事
    • やり方を変えようとしない
    • コラム 家を建てる話
  • 1-2 こまったときの根性論,話の通じない上司
    • 残業するのがあたりまえ
    • 残業代 > 基本給
    • 常に全力疾走(スパート)
    • パニック状態でまわりが見えない
    • 根性論による過度なプレッシャー
    • まわりの人が次々に辞めていく
    • 過度なプレッシャーによる悪循環
    • いそがしいことより上司がストレス
    • コラム 問題上司には2つのタイプがいる
  • 1-3 技術力がすべて
    • 変わるパラダイム・変わらない考え方
    • ひたすら技術を磨く
    • 技術は見ても顧客は見ない
  • 1-4 見える数字が見えない問題を増やす
    • 要求があいまい
    • 人海戦術の罠
    • 人が増えるコストを考慮しない
    • 人がいても効率は上がらない
    • 人数が10倍=コミュニケーションの負荷は100倍
    • 規模ではなく複雑度の問題が大きい
    • 威張る上司
    • お金があってもデスマーチは防げない

2章 どうすればデスマーチを防げるのか

  • 2-1 現場に行けば楽になる
    • 顧客と話してすべてを決める
    • 顧客と自分でルールを決める
    • 顧客と対立しない
    • 顧客から本当の希望を引き出す
    • 入力と出力は比例する
    • コラム コミュニケーションを隔てる3つの壁
  • 2-2 ルールを変えれば逃げられる
    • 規模が大きすぎて全体を把握できない
    • 仕様書を鵜呑みにしない
    • 自分が動けばルールは変わる
    • 意味あるルールに変えていく
    • シンプルにすればうまくいく
    • 対立してはダメ
    • コラム 無意味な検収
  • 2-3 問題は根本から断ち切る
    • プロジェクトの途中で人を増やす
    • 最悪の条件とルール
    • 臭い物には蓋をする,ことなかれ主義
    • できることからやっていく
    • 分割リリースでしのぎ切る
    • コラム 問題を増やす業界構造

3章 会社を辞める,そして見えてきたもの

  • 3-1 デスマーチから逃げるためには
    • スキルがあっても逃げられない
    • 自分で仕事を取りに行く
    • 仕事=社会に価値を生み出すこと
    • 働くだけでは価値にならない
    • 雇われていると見えないもの
    • 視点の変化はパラダイムの変化
    • 自分1人じゃどうにもならない
    • スーパー火消しなどいない
  • 3-2 サラリーマン生活からの脱出
    • 会社に気持ちを踏みにじられる
    • 辞める不安と手にする自由
    • 自分でお金を管理する
    • 人のつながりで仕事をもらう
  • 3-3 技術だけでは見えないもの
    • お金の本質とは
    • 「人」についての本を読む
    • 技術書の限界?
    • 技術書からビジネス書へ
    • 求めなければ手に入らない
  • 3-4 人との出会いが価値を生む
    • 従業員から投資家へ
    • 価値に対して投資する
    • 価値とは何か
    • 自分の価値観と他人の価値観は違う
    • 「人」を見ないと利益は出ない
    • 価値を生むのは開発者ではない
    • 顧客は価値を語れない
    • プロジェクトの価値とは

4章 1人の力を最大限に活かすには

  • 4-1 チーム(組織)はやはり必要
    • 1人の限界
    • なぜ組織は価値を発揮できないのか
    • ムダを増やす合理主義
    • モチベーションを下げる管理者
    • 臭いものに蓋をする成果主義
    • 意味ない効率化につながる分業化/専門化
    • 現場を萎縮させる変化への恐れ
  • 4-2 どうすれば人の力が発揮されるのか
    • 人がすべての中心
    • 人は意味を求めて動く
    • 「意味」「つながり」「誠実さ」がモチベーションを高める
    • 管理するのは「チームが進む意味」
  • 4-3 組織のために個人は何をすべきか
    • 対立から共存へ
    • 「自分だけ『ハッピー』」にはなれない
    • give and given
    • BCEF
    • ハンマーは捨てるな,磨き続けろ
    • お互いが価値を高め合うために
    • 幸運は,努力し続けた人にのみ渡される

サポート

ダウンロード

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補足情報

著者の山崎敏さんのサイトは,以下になります。

正誤表

P.

本書の以下の部分に誤りがありました。ここに訂正するとともに,ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

P.6 C コミュニケーション 4

組織
□組織

P.70 C コミュニケーション 4

思うわけない
思うわけない

P.104 C コミュニケーション 4

課題を解決
課題解決

P.163 過度なプレッシャーによる悪循環の図

「過度なプレッシャー」
過度なプレッシャーの

P.166 コラムの(4)

部下にすり付ける
部下になすり付ける

P.194 コラムの(4)

爆撃干渉エリア
爆撃緩衝エリア

P.201 コラムの(4)

会社やめてもいい
会社辞めてもいい

P.232 コラムの(4)

バリューストリーム
バリューチェーン

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