書籍概要

SIerの教科書
――クラウド時代のSEの常識

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概要

クラウドコンピューティングが普及することで,情報サービス産業(システムインテグレータ=SIer)のビジネスモデル,またそこで働くSEや営業担当者の常識が大きく変わろうとしています。さらに,技術要素だけではなく既存の収益モデルも根底から揺らいでいます。
そこで,本書では,最新のクラウドサービスの状況を踏まえ事例も盛り込みつつ,企業情報システムの開発現場で求められる知識をわかりやすく解説します。SIerを志望する学生にもお勧めです。

こんな方におすすめ

  • SIerに勤めるエンジニア,営業担当者
  • 企業の情報システム部門の方
  • SIerを志望する学生

目次

1章 SIerの特徴

1.1 SIerとは

  • 会社の仕事に欠かせないシステム
  • システムは仕事の流れを正確につなげる
  • 会社ではさまざまな媒体を使って仕事をしている

1.2 SIerの歴史

  • システムの発展とともにSIerも発展した
  • 電子計算センターの設立
  • メインフレーム/オフコン全盛時代
  • オープン化時代
  • 全体最適化時代
  • インターネット時代
  • SIerは,システムとともに発展した

1.3 SIerの種類

  • 今では,SIerの分類による差はほとんどない

[CoffeeBreak]SIerで働く人の仕事風景

2章 クラウド時代のSIer

2.1 これまでのSIerの問題点

  • 経営者の情報システム部門への期待
  • 情報システム部門の問題点
  • SIerは現場のいいなり?
  • ボトムアップの問題整理
  • トップダウンでもうまくいかない
  • 空白の時間
  • システム化構想が絵に描いた餅になる

2.2 これからのシステムは「作らずに作る」が主流

  • これからのシステムのつくり方
  • ユーザ企業のシステムに対する期待
  • システムへの期待は,「守り」から「攻め」へ移った
  • システムを「速く,正確に,安く」作ってほしい
  • システムを作らずに,システムを作る
  • システムを,ビジネスチャンスを広げる手段にしたい

2.3 クラウドサービスとは

  • クラウドコンピューティングがSIerの仕事を変える
  • クラウドサービスの登場でシステム投資の考えが変わる
  • 「使いたいものを」「使いたいときに」「使いたいだけ」「低料金で」
  • クラウドサービスの形態/種類
  • クラウドサービスは,システムの実現方法を多様化した
  • ハイブリットクラウド
  • クラウドサービスは,TPOを選ばない

2.4 クラウドの価値を高める3つの視点(柔軟,迅速,共感)

  • クラウドサービスの価値を高める3つの視点
  • つながることも価値になる

2.5 ユーザ企業へのクラウドサービスのメリット

  • クラウドサービスによるユーザ企業へのメリット
  • 「守り」の投資から「攻め」の投資へ
  • IT資産の監視から解放される
  • 必要な機能に限定して利用できる
  • 安全性に優れている
  • ハードウェアのスペックは,過剰に見積もられている
  • 身の丈にあった,スペック(CPU,メモリ,ハードディスク)での利用
  • システムを持たない経営が主流に

2.6 SIerへのクラウドサービスのメリット

  • クラウドサービスはSIerにもメリットがある
  • IT(余剰)資産を有効に活用できる
  • 運用保守業務が効率化される
  • リーディング企業への躍進の可能性
  • クラウドサービスは,SIerのビジネスをシビアにする

2.7 クラウド時代のSIerの種類

  • クラウドサービスを提供する2種類のSIer

[CoffeeBreak]SIerは,3K(きつい,厳しい,帰れない)職場?

3章 激変するSIerのビジネスモデル

3.1 クラウドは,各産業界や社会インフラを支える手段となる

  • クラウドサービスは,業界や社会インフラを支える手段となる
  • 健康医療クラウド
  • 自動車クラウド
  • クラウドサービスによるさまざまなビジネスチャンス

3.2 クラウドがもたらすSIerへのビジネスチャンス

  • ビッグデータビジネス
  • BCP(Business Continuity Plan 事業継続計画)
  • BPaaS(Business Process as a Service)への取り組み
  • BPOとBPaaS

3.3 ユーザ企業のシステム内製化の動き

  • SIerの取り巻く環境はビジネスチャンスばかりではない
  • システムの内製化
  • 自社で作れば変更も簡単
  • 内製化のSIerへの影響/問題点
  • 内製化を進めるためのユーザ企業の取り組み

3.4 クラウドの価値を支える開発手法~ウォーターフォール型からアジャイル型システム開発へ

  • システム開発手法
  • ウォーターフォール型システム開発
  • ウォーターフォール型システム開発は,環境変化に追随できない
  • ウォーターフォール型システム開発は,無駄な要求が多発する
  • ウォーターフォール型システム開発は,膨大な紙で確認する
  • アジャイル型システム開発手法
  • ビジネスの環境変化に迅速な対応が可能
  • 「要件定義」から「導入」までの工程を短期間で繰り返す
  • あったらいいなは,後回し

3.5 開発と運用の垣根の排除~DevOps(開発と運用の相互協力)

  • 互いの仕事の役割の違いが,開発(Dev)と運用(Ops)に壁を作る
  • DevOpsとは
  • DevOpsは,システムの本番適用だけではない
  • DevとOpsは互いに相容れない感情を抱いている
  • DevOpsに自動化は不可欠

3.6 SIer収益モデルの多様化~人月単価,サブスクリプション(定額制),レベニューシェア(継続報酬)

  • これまでのSIerの収益モデル
  • 「請負型」の問題点
  • システムに対する費用の考え方
  • サブスクリプション(定額制)
  • 利用量に応じたサブスクリプション
  • ユーザ企業にとって負担が分散する
  • サブスクリプションの問題点
  • レベニューシェア(継続報酬)
  • レベニューシェアのメリット

3.7 多様化したSIerのキャリア

  • 多様化したキャリアパス
  • プログラマ
  • システムエンジニア
  • プロジェクトマネージャ
  • コンサルタント
  • 営業/セールスエンジニア
  • システムアーキテクト

3.8 SIerの新たなキャリア

  • SIerに新しい職種が誕生している
  • サービスプロデューサ
  • データサイエンティスト

[CoffeeBreak]SIerでは,エンジニアが評価されない

4章 ユーザ企業はSIerの“ここ”を見る

4.1 “提案力”はあるのか? 提案する力がなければ,ユーザ企業は振り向かない

  • システムへの投資は抑制される
  • 提案が受け入れられない理由
  • いま,提案の改善するとき

4.2 “業界の知見”はあるのか? 業界の知見がなければ,絵に描いた餅になる

  • システムは企業活動を俯瞰する
  • SIerは,ユーザ企業の理解が欠かせない
  • 業界の知見とは
  • 「業界の知見」の3つのレベル
  • ユーザ企業が求める知見とは

4.3 “安全性”はあるのか? 安全でなければ,大事な資産を預けられない

  • ユーザ企業は,安全性に最も関心が高い
  • システムの脆弱性
  • アクセス制御と権限管理
  • ログ管理
  • データがどこで,どのように管理されているか
  • クラウドサービスの運用保守
  • 第3者機関の証明も安全性の証明を後押しする
  • 責任範囲を明確にすることが重要

4.4 “サービス基準”はあるのか? サービス基準がなければ,判断できない

  • サービス・レベル・アグリーメント
  • SLAで合意する項目
  • SLAは定期的な分析と評価で証明する
  • SLAを合意するメリット

4.5 クラウドサービスは“自社の戦略”と合うのか? 戦略上,外部とのつながりが必要か

  • ユーザ企業の業務改革が支援できるか
  • ユーザ企業のビジネス創造ができるか
  • 維持管理業務は適切か
  • IT資産は,安全に管理されているか

4.6 クラウドサービスは“制限”があるか? 制限があれば,オンプレミスと変わらない

  • 目的に合わせたアーキテクチャを提供
  • これまでのシステム構成の問題点
  • スケールアウト

[CoffeeBreak]プロジェクトマネージャの人気

5章 これからのITエンジニアに求められる3つの力

5.1 ビジネスを創造する力 ユーザ企業のビジネスを創造する力が,強いシステムを作る

  • ビジネスニーズの見つけ方
  • 今までと正反対のものを考えてみる
  • システム開発の表と裏
  • 結合と分散
  • 他の組織の仕組みをあてはめてみる
  • これまで疑う余地がなかったものを疑う
  • ユーザを集める方法を検討する

5.2 課題抽出力 ユーザ企業や業界内の課題を見抜く力が良いシステムを作る

  • ユーザ企業が思っている問題は表層的
  • 問題の発見方法
  • 問題の抽出はモレなくダブりなく
  • 問題の確からしさを検証する
  • なぜなぜ分析

5.3 デザイン力 組み合わせにより,新しいシステムを作る

  • クラウドサービスをデザインする
  • マッシュアップの技術が欠かせない
  • 地図情報がマッシュアップの代表選手
  • マッシュアップ可能なシステムや情報はすでに数多く存在する
  • デザイン力が欠かせない

[CoffeeBreak]SIerが働く場所

6章 クラウドサービス構築でも大切な3ステップ

6.1 【ステップ1】なぜ?を明らかにする

  • 2W1H
  • クラウドサービスには,2W1H
  • 新しいビジネスにチャレンジするにはコンセプトが必要
  • 会社は常に数字を求められる
  • 数字が読めないことが,SIerにビジネスモデルの変革を迫る
  • 数字以上の根拠(コンセプト)を示す
  • どのような会社にクラウドサービスを提供するか

6.2 【ステップ2】なに?を明らかにする~ユーザ企業のニーズや悩みを分解し,価値を明らかにする

  • コンセプトの実現によって,“なに”がもたらされるか
  • ユーザ企業に“なに”を価値として与えるか
  • 価値の種類
  • 定量価値と定性価値
  • 価値は増えたり,減ったりする

6.3 【ステップ3】どうやって?を明らかにする~ターゲット(対象)をモデル化し標準化する

  • コンセプトの実行にむけた手順を明らかにする
  • コンセプトと価値によってHowは変わる
  • お客さまに迅速なシステム開発を実現するためのIT環境を提供
  • お客さまのIT資産に対する維持管理コストを低減する
  • SaaSによるグループウェア提供の際のコンセプト
  • 低価格ですべての機能が利用できる
  • 必要な機能を必要な分だけ購入して利用できる

[CoffeeBreak]お客さま先で働くエンジニアの悩み

7章 クラウド時代のSIer,4つのケーススタディ

7.1 IT設備の維持管理業務負担の削減

  • 背景
  • A社が直面する課題
  • SIerによる解決策
  • 解決策実現の効果と今後の展開

7.2 「小売/卸/メーカー」を一気通貫で需要予測して流通在庫の精度を向上

  • 背景
  • B店舗が直面する課題
  • SIerによる解決策
  • 解決策実現の効果と今後の展開

7.3 営業マンの商談状況を見える化

  • 背景
  • C社が直面する課題
  • SIerによる解決策
  • 解決策実現の効果と今後の展開

7.4 住居の施工/改築実績分析

  • 背景
  • D社が直面する課題
  • SIerによる解決策
  • 解決策実現の効果と今後の展開を考える

サポート

正誤表

本書の以下の部分に誤りがありました。ここに訂正するとともに,ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

(2016年2月26日更新)

P.xi(目次),p.68~70(本文),p.191(索引)

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P.117 図 業界知見の3つのレベル-Level 1

協業他社との差などを
競合他社との差などを

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