書籍概要

エンジニアとして世界の最前線で働く選択肢
~渡米・面接・転職・キャリアアップ・レイオフ対策までの実践ガイド

著者
発売日
更新日

概要

世界のソフトウェア開発の本場で働けたら ―― エンジニアならば一度は考える可能性を実現するにはどうすればいいか?

アメリカで職を得るために必要なこと,レジュメを書くときの注意点,面接官の前で実際にコーディングをする面接を突破するためのコツ,日本との仕事環境の違い,転職やレイオフとの向き合い方までを具体的に教えます。

シリコンバレーやシアトルで計15年,従業員数十人のスタートアップでも10万人以上の大企業でも働き,面接する側も数多く経験した著者だからこそ書けるリアルが満載。

こんな方におすすめ

  • 「アメリカ企業で働くのはどんな感じだろう?」と思っている方
  • アメリカで働きたい方,働いている方
  • シリコンバレー礼賛記事に疑念を抱いている方(海外の企業が特別優れているわけではないと思っている方)
  • IT企業で働きたい方,働いている方(特に,コーディング面接を受ける可能性がある方)
  • 外資系企業で働きたい方,働いている方

著者から一言

「世界のソフトウェア開発の本場で働くのはどんな感じだろう」

ソフトウェア業界に関わっている方ならば,一度はそう考えたことがあるのではないでしょうか。技術系のWebページを読んでいると盛んに出て来る「シリコンバレー」の文字に憧れを抱き,

「自分もアメリカの有名企業で働いてみたい」
「スタートしたばかりのベンチャー企業で大きな成功を収めてみたい」

などと,ちらっとでも思ったことはないでしょうか。しかし,

「チャンスがあればチャレンジしてみたい気はするけど,自分の現状から何をどうすればチャレンジできるのかわからない」
「入社試験がどのようなものかわからないし,職場環境が日本とどう違うのか想像できない」

という状況の方が多いのではないかと思います。

そういった漠然とした将来のイメージ,はっきりしない次のステップを具体的なものに変えるのが,この本の一番の目的です。アメリカで職を得て働き続けていくために,レジュメを書くときに気をつけること,面接官の前で実際にコーディングをする面接を突破するためのコツ,日本との仕事環境の違い,転職,レイオフに至るまでの

「アメリカで働くというのはどういうことか?」

をお伝えします。

私はソフトウェアエンジニアとして,サンフランシスコベイエリア(シリコンバレー)で10年以降,シアトルエリアで4年以上,働いた経験があります。その間に勤務した会社は5社,会社規模は従業員数十人のスタートアップから十万人以上の大企業までさまざまです。業種も,ソフトウェアと同じぐらいハードウェアが重要な測定器業界から,ソフトウェアが本業のWeb業界まで,気がついたら非常に多岐にわたるものになっていました。

それだけ就職面接をたくさん受けてきたわけですが,面接する側も数多く経験しました(アメリカでは,エンジニアが面接官を務めるのはあたりまえです)。特に,前職のAmazon.comでは,100人近くの応募者にホワイトボードや電話を使ってコーディングの面接を行いました。

大人になってからのアメリカ在住期間はかなり長くなっていますが,別に帰国子女というわけではありません。幼稚園から大学院まで,今までに通ったすべての学校が仙台市内の半径3kmの円内に収まっています。実際にアメリカに住み始めるまで,英語の勉強は学校の授業と受験勉強以外に特別なことはしていませんでした。

現在は,Microsoft CorporationでSr. Software Engineer(シニアソフトウェアエンジニア)として働く傍ら,ワシントン州シアトル周辺で活動するNPO法人Seattle IT Japanese Professionals(SIJP)でVice-President(副会長)として,シアトルエリアに住む技術系の日本人のために講演会や勉強会などのイベントを催し,ネットワーキングやキャリアアップを支援しています。その中で開催したエンジニア向けの就職・転職講座で講師を務めた経験を通じて,自分の今までのキャリアから得たさまざまなノウハウが日本人エンジニアに役立つことに気づき,この本にまとめることにしました。

とは言っても,「日本人エンジニアはだれもが,アメリカで働くべきである」と主張したいわけではありません。エンジニアとしての能力の高さに関わらず,アメリカに合う人,日本のほうが向いている人,どちらも当然存在します。アメリカという外国に住んで働くことには,メリットとデメリットの両方が存在します。メリットの宣伝だけに偏ることなく,デメリットも同じように知っていただきたいと思います。

本書によって,「アメリカで働いてみたい」という思いが強くなり,具体的な行動を起こす方がいらっしゃれば,本書の目的は達成されたことになります。また,すでにアメリカでの就職・転職を目指している方が「目標実現の参考になった」と思ってくださるならば,それもまた本書の目的が達成されたことになります。そして,それとは逆に,本書を読むことで「やはり自分は,日本で働くほうが合っている」という思いが以前より強固なものになった方がいらっしゃるならば,本書のもう1つの目的が達成されたことになります。

この本は,以下のような方を読者として想定しています。

  • 「アメリカ企業で働くのはどんな感じだろう?」と思っている方
  • アメリカで働きたい方,働いている方
  • シリコンバレー礼賛記事に疑念を抱いている方
    (海外の企業が特別優れているわけではないと思っている方)
  • IT企業で働きたい方,働いている方
    (特に,コーディング面接を受ける可能性がある方)
  • 外資系企業で働きたい方,働いている方

最近は,日本のソフトウェア業界でも人材の流動化が進んでいるようです。国境を超えたさらなる流動化と働く人たちの適材適所が,少しでも促進されることを祈っております。

目次

はじめに

第1章 あなたはアメリカに合っているのか

活躍できる条件をすべて揃えてから渡米する人はほとんどいない

アメリカで働くメリット ― エンジニアは優遇されている

  • ソフトウェアエンジニアはベストジョブ
  • 管理職でなくても年収の中央値は1,000万円を超える
  • 社会全体からも尊敬されている/li>
  • 外国人のハンディが少ない
  • 転職が不利にならない
  • 自由で合理的な職場環境
  • キャリアパスの選択肢がある

コラム 趣味で幸せ度アップ

アメリカで働くデメリット ― 外国人として生きていけるか?

  • 外国人として働く
  • プライベートでも外国人
  • 「外国語」を使ってコミュニケーションしなければならない
  • 管理職への昇進が難しい
  • クビになる確率が高い
  • 家族と離れて暮らす
  • 【田舎限定】食べ物の良し悪しは無視できない

メリット > デメリット? Then why not?

シリコンバレーはメジャーリーグ?

コラム 子どもは簡単にはバイリンガルにならない

第2章 どうやったら渡米できるか

「どれぐらい英語ができればいいんですか?」

  • ソフトウェアエンジニアは一番英語能力が要求されないポジション
  • シリコンバレーは一番英語能力が問われない場所
  • 一番大事なのは「情報伝達速度」
  • 日本人の英語能力は高い

コラム 英語が下手でも夢に見るし,喧嘩はできる。意図せずに相手を怒らせたら上達の証?

立ちはだかるビザの壁

  • H-1Bビザ(Professional Workers)
  • L-1ビザ(Intracompany Transferrees)
  • Oビザ(Persons with Extraordinary Ability)

留学後に現地就職 ― ヤル気と能力があれば一番確実

日本で就職後に移籍 ― 一番簡単,でも運任せ

日本から直接雇用 ― ハードルが一番高く,運も必要

雇用とは別に永住権・市民権を得る

  • 抽選による永住権
  • アメリカ人との結婚による永住権
  • 出生による市民権

第3章 アメリカ企業に就職・転職する

レジュメ作成 ― ポジションごとに内容を変える

  • 大事な項目から順に書く
  • 転職サイトでキーワードマッチングにひっかかるようにする
  • ポジションにあわせてレジュメを変える
  • ネイティブスピーカーのチェックを受ける
  • 自分の名前まで変える?

応募 ― 公式ページよりも社員からの紹介

リクルーターとの"chat" ― やりたいことを明確に,給与額は不明確に

  • 「自分にとって欠かせないものは何か?」を意識する
  • 希望給与額を言ってはいけない

電話面接 ― 電話しながらコーディング

  • 静かな部屋を確保し,ヘッドセットを使う
  • 面接では何が行われるか
  • コーディングでの注意点
  • 結果をふまえて次に備える

オンサイト面接 ― こちらも相手を面接している

  • 事前に会場を下見する
  • 働いている人の中で一番きちんとした服装で行く
  • 閃きの可能性と自信を高める
  • 面接官との距離を縮めて,緊張をほぐす
  • たとえ途中で失敗しても,最後まで最善を尽くす
  • 「ランチは面接に含まれない」は信用しない
  • こちらも相手を面接している
  • 面接の最後に質問する
  • オフィスを見せてもらう

結果通知 ― フィードバックをもらう最大のチャンス

  • すぐに「入社します」と言わない

コラム 転職面接は時の運 ― "false negative"を恐れない一流企業

最終決断 ― 舞い上がったままオファーを受けるな

  • まずは仕事の内容を検討
  • 仕事の技術レベルを考えてみる
  • 会社の文化と自分の相性を見極める
  • 条件を交渉する
  • 「交渉したらオファー取り消し」はない
  • バックグラウンドチェック ― 経歴詐称はここでバレる

辞職 ― 転職イコールすべてリセット,とはならない

  • 退職日で収入が変わる
  • 日本以上に円満退社が大事

コラム 面接も円満に進めるのが大事

第4章 ホワイトボードコーディング面接を突破する

「仕事の実力」だけでは不十分

コーディング面接の流れ

  • 自分のペースをつかむ,緊張を避けられることは何でもする
  • 一般的な質問には短くまとまった返答をする
  • ネガティブなことを言わない
  • 問題を出されたら,とにかく確認する
  • 最適でなくても方針を説明する
  • ホワイトボードに余白を確保する
  • 処理の塊ごとに説明する
  • バグを見つけて修正する
  • コーディング終了でも面接終了ではない
  • 終了後は次に集中する

ノーヒントで解くより「こいつと一緒に仕事をしたら楽しそうだ」

「コミュニケーション能力」とは,アイディアを説明すること,人のアイディアを取り込むこと

問題に出しやすい技術,出しにくい技術

  • Big-O notation(ランダウの記号)
  • Hash table(ハッシュテーブル)
  • Recursion(再帰)
  • Tree(木構造)
  • Array(配列)

【例題】複数の解法とコストのバリエーション

  • 必要な情報を聞き出す
  • O(n2)の解法
  • O(n log n)の解法
  • O(n)の解法

どこで練習するか

第5章 アメリカで働くと何が違うのか

飲み会なし,ほとんどすべてランチで済ませる

残業代なし,コアタイムなし,好きなときに家で働く

ミーティングの量は最低限

開発プロセスは適量を追求

360度評価による成果主義

人事権まで握るマネージャー

日本式は通用したり,しなかったり

反対意見はしっかり表明

Disagree & Commit

感情を爆発させるのは,プロとして失格

メンタリングによりスキルアップ

エンジニアがおもな面接官

オープンオフィス,個室オフィス,キュービクル

  • オープンオフィス
  • 個室オフィス
  • キュービクル

モラルイベントが催される

コラム 外国人の同僚と仲良くなるには飯を食え

第6章 転職を通してキャリアアップする

転職のタイミングは,自分よりも「周りの状況」がカギ

コラム 予期せぬ良い知らせ

ポジション探し ― 「できること」より「したいこと」

  • 仕事の内容も環境も大事
  • 技術系の会社でもソフトウェアテクノロジーが主体とは限らない
  • 「ソフトウェアを主体とした会社が一番」とは限らない
  • 安定の大企業
  • 何でもありえるスタートアップ
  • 日本人の強みを活かすポジションとは
  • 日本関係のポジション特有のリスク
  • 迷ったら「難しいポジション」を選べ

一生,エンジニアとして生きていく

  • 技術系とマネジメント系のキャリアトラックが用意されている
  • 歳をとれば能力が衰えるのは避けられない
  • 再就職のチャンスも減ってくる
  • リスクを認識したうえで決断する

第7章 解雇に備える

「ファイア」は悪い解雇

  • なぜ,わざわざ解雇する理由を説明するのか
  • ファイアに至る理由
  • 「パフォーマンス不足」はほかとは違う

「レイオフ」は必ずしも悪いとは言いきれない解雇

  • 退職日は「その日のうち」とは限らない
  • 解雇手当は会社によって大きな差が出る
  • 雇用保険,健康保険の制度について知っておく
  • 転職支援サービスは既成事実を作るのが目的?
  • 「社内異動」という選択肢
  • 「私をレイオフしてください」で臨時収入

グリーンカードのありがたみ

レイオフに備えるには

  • 昇進直後にレイオフがあると危険?
  • 噂レベルで囁かれる“対策”
  • 「転職可能な状態」が一番のレイオフ対策

コラム 私のレイオフ体験

おわりに

「雇用の流動性」という違い

「アメリカで働けば幸せ」とは限らない

二面性を伝える

“壁”はなかった

サポート

正誤表

本書の以下の部分に誤りがありました。ここに訂正するとともに,ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。

(2015年11月9日更新)

P.189 第2段落

勤続年数手当が半年分
勤続年数手当が半

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