概要
納期遅延,コストオーバー,機能や品質の不全で訴訟にまで発展 ――
そんな紛争の処理を担う特別法務部,通称“トッポ―”の部員である中林麻衣が数多くの問題にあたるなかで目の当たりにするプロジェクト失敗の本質,そして成功の極意とは?
東京地方裁判所で民事調停委員・IT専門委員を務め,数多くの紛争を見てきた著者だからこそ書けた,かつてないプロジェクト小説!
こんな方におすすめ
- システムを発注する立場の方
- システム開発会社(ベンダー,SIer)にお勤めの方
著者から一言
ITプロジェクトの成功率は,さまざまなプロジェクト管理の方法論や,それを実践するためのツールが世に出ている今でもなお低く,「納期,コスト,品質を遵守して完了するプロジェクトの割合は約七割」というデータもあります。これは,ほかの産業,たとえば建築などと比べてもかなり低い数値で,だからこそ私のいる東京地方裁判所にも数多くのIT紛争が絶えることなく持ち込まれています。
物語に出てくるRMKは世界的なITのトップランナーですが,そんな会社でもやはり,かなりの確率でプロジェクトに失敗し,裁判沙汰になることが珍しくありません。このことは,現実社会のITベンダーでも同じです。
どうすれば,より安全にITプロジェクトを実施し,品質が高く業務に寄与するモノを作れる確率を上げられるのか? そのために,実際のIT紛争を反面教師にはできないだろうか? 私はそんなことを考えてこの本を書くことにしました。
この本を物語仕立てにしたのは,裁判所の判例やITプロジェクトの失敗を単なる事例集やべからず集にするよりも,読者の皆様にリアルに感じていただき,ご自分の組織やプロジェクトと比較してみていただきたいからです。もしも「この中に描いてある問題を自分たちも起こしそうだ」と感じたら,単に参考にしていただくだけでなく,できれば「自分たちならもっとこうするのに……」ということにまで想いを馳せ,ご自身のノウハウとしていただきたいと思います。
また,「こんな失敗,自分たちはやらない」とお考えの方は,「なぜ,自分たちにはそうした危険がないと思うのか?」を考えてみてください。それはきっと,あなたやあなたの組織が持つ強みであり,今後も守り,育てていくべきノウハウだと思います。