概要
「ユーザーの心をとらえるゲームAIはどのように作りだせばよいのか?」ビッグタイトルや壮大なMMOを除けば,じつは現在も80~90年代のAI技術をベースに多くのゲームは制作されています。しかし,世界に通用する優れたゲームを提供するためにはより自由さを表現することが必要となっています。
本書はFFシリーズはじめ,最新ゲームテクノロジーの事例を用いて,より高度な「~らしさ」を求めるAI制作のため,認知科学や自然科学の分野まで縦横無尽に思考していきます。ゲーム開発者のみならず,人工知能に興味をもつすべての人におすすめできます。著者初,渾身の書き下ろし。
こんな方におすすめ
- 人工知能に興味のある人
- ゲームAIについて学びたい人
- 最新ゲーム開発の動向を知りたい人
著者から一言
たくさんの他の学問の知見を利用し,ゲームに必要な人工知能をつくる。それは最終的な解答でないにしても,知ることとつくることのリズムによってわたしたちは進歩するのです。そして,逆の見方をすれば,あらゆる自然科学(サイエンス)が宇宙とは何か,という問いによって結ばれているように,あらゆる人間についての科学は知能とは何か,という問いによって結ばれているのです。
(中略)
この本を読みながら,知識よりも問いを大切にすること,問いを抱えて歩けば,必ず知能という森の内奥へたどり着けることを学んでいただければと思います。この本に入り,この本から出るときに,新しい出口から出られるよう,知能の冒険を用意しましょう。(「序章」より一部抜粋)
目次
序章 知能の海へ
1章 知能ってなんだろう? ~自然知能と人工知能
- 知能と宇宙 知能とは何かを考えてみよう
- AI の歴史とゲームAI の歴史 人工知能の60年をたどる
- デジタルゲームの2つの進化 大型化とプロシージャル化
- 考えてみよう
2章 知性を表現する手法 ~ゲームAI 基礎概念
- デジタルゲームにおける人工知能 ゲームの面白さを支える技術
- 現実感(リアリティ) を追求する 不気味の谷を越えて
- 3つのゲームAI でユーザー体験を作る ゲームデザインの決定
- 生きているということ 「らしさ」を作る
- メタ思考とメタ知識 思考を組み立てる
- ブラックボードで情報を把握する
- ブラックボード・アーキテクチャで世界を認識する
- 考えてみよう
3章 人工知能の根底にあるもの ~ AI の根本概念
- 反射から自律へ 感覚と身体をつなぐ情報の経路
- モジュラーデザインを作る 中央集中構造・多層構造・階層構造・サブサンプション構造
- 人工知能の中心課題「フレーム」 問題を設定する能力
- 人工知能はコンテキストを理解できるか 物事の流れを理解すること
- 創造と選択 人工知能の持つ2つの側面
- ゲームにおいて知能を感じる 知能感受性と知能方程式
- 現実を作る秩序 本能と習性にみる領域制御
- 考えてみよう
4章 キャラクターの意志はどう決められるか ~意志決定のアルゴリズム
- 意思決定の7つのアルゴリズム 人工知能の意志の作り方
- ①ルールベースAI ルールを基本に組み立てる
- ②ステートベースAI 世界や人間の行動を状態で表す
- ③ビヘイビアベースAI 振る舞いや行動レベルでキャラクターを動かす
- ④タスクベースAI タスクに分解して実行順序を選択する
- ⑤ゴールベースAI 目標の達成から行動を組み立てる
- ⑥ユーティリティベースAI 効用・見返りから行動を決定する
- ⑦シミュレーションベースAI 事態を予測して想像させる
- 7つのAI はどう活かされるか? 長所と短所を理解して組み合わせる
- 考えてみよう
5章 ゲームAI は世界をどう認識するか ~ゲームAI 基礎概念(深部)
- 知覚空間と作用空間で世界を認識する 物の見ている世界
- 物・事・世界 モノ・コト・セカイ
- キャラクターが学習していく仕組み 行動に対する結果を記憶する
- AI 同士の連携 メッセージングとアルゴリズムを使う
- 物語の力 ゲームAIとインゲーム・シネマティクス
- 考えてみよう
6章 成長するAI ~学術・ゲームにおける共通概念
- 不確かな情報の信頼度を使って思考する
- ソーシャル・ネットワーク・グラフ 社会的関係を表現する
- 学習・適応・進化 アルゴリズムで変化を起こす
- ニューラルネットワーク入門 ディープラーニングまでの流れ
- 考えてみよう
7章 身体とAI ~身体感覚をつなぐインターフェース
- 運動の統合 キャラクターの思考と運動を結びつける
- 協応の原理 知能と身体をどのように接続するか
- キャラクターのセンサーを作る 知能とセンサーの関係
- 身体と知能 想像する身体
- キャラクターの身体を認識するということ
- ゲームとアフォーダンス キャラクターの行動を生成する
- 環境にキャラクターを操作させる 環境からの制御
- 考えてみよう
8章 集団の知能を表現するテクニック ~群衆AI の技術
- 街を作る 楽しい仲間,社会,生き物
- セルベースの群衆制御法 大量のキャラクターを動かす
- 群衆をたくさん作るためのLOD 段階的な思考の実験
- チーム表現 「組織的に動く」ユーザー体験を作る
- 複数の思考による投票システム メタ思考の入れ替え
- プレイヤーを包囲する方法 ターゲッティングの質を上げる
- 考えてみよう
9章 人間らしさの作り方 ~ゲームを面白くするためのAI
- キャラクターの生活感を出す リズムとリアリティを与える
- メタAI でユーザーの緊張度を測る
- これからのゲームAI ゲーム世界の密度
- 人工知能のための資料とブックガイド
- おわりに
- 索引
サポート
正誤表
本書の以下の部分に誤りがありました。ここに訂正するとともに,ご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
(2016年12月7日更新)
P.195 欄外※17 URL
P.238 図下2行目