概要
「情報が隠される」「社員同士が協力しない」「疑心暗鬼の空気が広がる」
そんな人間不信から,Great Place to Work(働きがいのある会社)ランキング1位(従業員100~999人部門),4年連続ベストカンパニーを受賞するまでに至った,その秘密とは?
SAP,マッキンゼーを経て,コンカーの社長として年平均成長率86%という飛躍を実現してきた著者が,その成果を支える文化・仕組み・制度の裏側を初公開。
すべての社員から会社の課題や改善策を吸い上げる「コンストラクティブフィードバック」
業務を離れて問題や未来を議論する「オフサイトミーティング」
社員の立候補で課題の解決にあたる「タスクフォース」
四半期に一度,会社の戦略・方向性を分かち合う「オールハンズミーティング」
処遇の不平等感をなくす「ジョブグレード」
タテ・ヨコ・ナナメで双方向のコミュニケーションを活性化させる「コミュニケーションランチ」「タコランチ」 「マメランチ」「タメランチ」「ミムランチ」
採用率を3%に抑え,採用候補の分母を増やしていい人材を獲得する「採用エージェントへの方針説明会」
全社員の心身の健康状態を把握する「パルスチェック」
など,あなたの職場をいますぐ変えるためのヒントが満載!
こんな方におすすめ
自社のパフォーマンスを最大化したい経営者の方 自部署の成果を高めたい管理職の方 人材の採用,教育,働き方の改善などの具体策を知りたい人事担当者の方
著者から一言
最悪の状況から,いかにして「働きがいのある会社」になれたのか
2023年2月9日,Great Place to Work Institute Japan(以下,GPTW)が,2023年度 日本における「働きがいのある会社」ランキングを発表しました。ここで,従業員100人から999名の中規模部門において2018年から6年連続で第1位となったのが,私が社長を務めている株式会社コンカーです。このランキングで過去に連続して第1位になった最長記録は米Googleの日本法人であるグーグル合同会社が持つ5年連続でしたが,コンカーの6年連続での第1位は同ランキングにおいて史上最長記録となります。
また総合ランキングのほかにも,「働きがいのある会社」女性ランキング(中規模部門)でも2019年,2021年,2022年に1位となり,さらに若手ランキングでも2020年,2021年に1位となっています。
2021年には,総合ランキング,女性ランキング,若手ランキングの3部門で1位となり,3部門での1位獲得は同ランキングでは史上初の快挙となりました。
コンカーは,"コンカーエクスペンス","コンカートラベル"など,クラウドによる出張・経費管理ソリューションを提供しているIT企業です。日本市場で創業以来,年平均96%という驚異的な成長を遂げてきました。これは,コンカーの世界市場の中で歴史的に見ても最速。現在では,ヨーロッパの主要国を抜いて,米国に次ぐ世界第2位の規模になっており,コンカー全体の成長の牽引役となっています。利用企業には,トヨタ自動車,野村證券,三井物産,ファーストリテイリング,ソニー,KDDI,三井住友ファイナンシャルグループなど,日本を代表する企業がずらりと並んでおり,日本の時価総額トップ100企業における普及率は65社(2023年2月時点)。じつに国内トップ企業の2/3が,コンカーを使って経費精算や出張業務をおこなっています。
なぜコンカーの日本法人が,このような成長を遂げることができたのか。その背景としてまちがいなく言えるのが,働きがいのある会社になれたことだと私は考えています。
私は,「人材こそ最大の経営戦略」という経営方針のもと,人を大切にする経営を徹底してきました。情報を公開する。建設的なフィードバックをし合う。採用を厳選する。フェアな人事制度を作る……。
何より私が目指したのは,よい文化を作ることでした。社員同士が「高め合う」文化を持つ企業です。社員同士が立場や役職に関係なく活発にフィードバックし合う。それが社員の成長を促進し,風通しのよい雰囲気を生み出す。さらに,さまざまな仕組みや制度を結びつけることによって,日本における「働きがいのある会社」ランキングで6年連続の第1位という結果,さらには現在の驚異的な業績の成長につながったのだと考えています。
しかし,会社設立後,私がコンカーの最初の社長として就任した2011年からの1年間,コンカーは今とはほど遠い状況でした。社内にはオープンマインドはなく,「情報を手放すと自分のバリューが下がる」という一部の社員の考え方から,情報はまったく共有されない。だれもが疑心暗鬼になるような状況でした。一部の社員同士はいがみ合いから,怒声を飛ばし合うこともありました。結果として業績も大きく低迷してしまいました。
当初,さまざまな立ち上げ業務に追われていた私は,正しい人を採用し,正しい文化を築くような余裕がありませんでした。「とにかく即戦力を取らねば」と自分なりの吟味もせずに採用を推し進め,結果として「自分の結果だけ出せばいい」といった殺伐とした雰囲気が蔓延してしまいました。到底,働きがいどころではありません。
この状況から,いかにしてコンカーを「働きがいのある会社」へと変えていくことができたのか。それをお伝えしたくて,本書は生まれました。なぜなら,多くの会社に「働きがいのある会社」になってほしいから。それが,そこで働くビジネスパーソン1人ひとりのやりがいと幸せにつながり,そしてそのことが会社の成長にまちがいなくつながるからです。
政府が主導した“働き方改革”によって,日本のビジネスパーソンの働き方は大きく変化し,残業が常態化していたかつての状況から比較して「働きやすさ」は大きく改善したと言えます。特にコロナ禍を経てリモートワークも定着し,働き方改革も総仕上げの段階に入りつつあります。そうした状況で,多くの企業が次のステージとして取り組まなければならないと気づき始めているのが,本書のテーマである「働きがい」です。
しかし,残業削減,有休消化,リモートワークなど,打ち手が比較的わかりやすい「働き方改革=働きやすさ」に比較して,「働きがい」はつかみどころがなく,多くの企業がどこから手をつけたらいいかわからず悩んでいます。そんな悩みに本書が少しでもヒントになるよう願いながら,コンカーでの数々の取り組みや,その背後に流れる考え方をお伝えしていきたいと思います。
三村真宗(みむらまさむね) 株式会社コンカー代表取締役社長。1993年,慶應義塾大学法学部卒業。同年,日本法人の創業メンバーとしてSAPジャパン株式会社に入社。以後13年間に渡り,BI事業本部 長,社長室長,CRM事業本部長,製品マーケティング本部長,戦略製品事業バイスプレジデント等を歴任。2006年,マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し,金融,通信,ハイテク企業等の戦略プロジェクトに従事。2009年,電気自動車インフラ会社であるベタープレイス・ジャパン株式会社において,シニア・バイスプレジデント。2011年10月から現職に就任。
2002年に日経コンピュータ「ITを変える50人」に選出。著書として『新・顧客創造』(ダイヤモンド社,2004年),『次世代自動車 実用化と普及拡大に向けて』(共著・化学工業日報,2011年),寄稿など多数。