概要
「ここにあったはずのモノがまたどっかにいった……」
「あの人のせいで,こっちまで巻き添えを食ってるよ」
「ウチって,相変わらずここがダメだよね。みんなわかってるのに,どうして何年たっても変わらないんだろう?」
そんな問題をいつまでも放置して苦しみ続ける管理不在・経営不在の組織を変えるにはどうすればいいか?
創立70年,町工場から一部上場企業まで900社以上の多様な業種の生産性・品質向上を支援してきた中部産業連盟の精鋭メンバーが,泥臭い現場のリアルをもとに,職場の生産性を根本から向上させるノウハウを教えます。
こんな方におすすめ
- 「ここにあったはずの○○○(物,書類,データなど)がまたどこかへ消えた。みんな忙しそうだし,また聞いて回るのもうんざり」
- 「あの人(あの部署)のおかげで,こっちまで巻き添えを食ってるよ」
- 「この仕事のやり方は変えたほうがまちがいなく効率がいいと思うけど,そんなこと○○○さん(先輩,上司)に言えないよなあ……」
- 「あれもしなきゃ,これもしなきゃ。もうパンク状態だけど,だれにも頼れない……」
- 「今日の仕事はもう終わったから早く帰りたいけど,だれも帰る気配がない。みんな何してるんだろう?」
- 「ウチって,相変わらず△△△なところがダメだよね。みんなわかってるのに,どうして何年たっても変わらないんだろう」
といった悩みを1つでもお持ちのビジネスパーソン,管理者,経営者の方
著者から一言
はじめに
机の上に積まれた書類の山,机の下にもあふれかえった書類。キャビネットに目をやると,そこにも雑然と置かれた書類や備品,何が入っているのかわからない段ボール箱。机も棚も,一部はまるで“ゴミ屋敷”同然。そして,シーンとした静けさの中に漂うギスギス感。自分の守備範囲外には無関心を決め込み,パソコン画面を見つめる従業員たち──そのような職場からは,次のようなため息が聞こえてきます。
「ここにあったはずの○○○(物,書類,データなど)がまたどこかへ消えた。みんな忙しそうだし,また聞いて回るのもうんざり」
「あの人(あの部署)のおかげで,こっちまで巻き添えを食ってるよ」
「この仕事のやり方は変えたほうがまちがいなく効率がいいと思うけど,そんなこと○○○さん(先輩,上司)に言えないよなあ……」
「あれもしなきゃ,これもしなきゃ。もうパンク状態だけど,だれにも頼れない……」
「今日の仕事はもう終わったから早く帰りたいけど,だれも帰る気配がない。みんな何してるんだろう?」
「ウチって,相変わらず△△△なところがダメだよね。みんなわかってるのに,どうして何年たっても変わらないんだろう?」
筆者らは,年間で約180日間,10年のキャリアがあれば1800日間も企業に朝イチで直行し,ほぼ終日,改善指導を通じて組織の中にどっぷりと浸かるなかで,このようなため息に象徴される次のような問題点を日本中の職場で目にしています。
- モノ探し,書類探し含め,不毛なことに時間やエネルギーを奪われている
- 関係するほかの人の仕事が見えていない,あるいは相互に関わりのある他部署の仕事が見えていないので,職場内・職場間で利害の対立を起こし,組織力が発揮されていない
- 過去に起きたミス,ほかの人やほかの部門が起こしたトラブルが共有化されておらず,再発を繰り返している
- 職場のさまざまなムダや問題点は昔から共通認識がある(みんなわかりきっている)のに,いっこうに改善されない
もし,あなたの職場がこれらのどれかに当てはまる場合,ほかの恵まれた職場やライバル企業との間で,残業時間や従業員の定着率,パフォーマンスに格差が生まれていることでしょう。これらの問題を生み出す真犯人は,1つのキーワードに集約できます。それが,「マネジメント格差」です。
マネジメントとは「組織を動かして成果を上げる」ことですが,業種も規模も多種多様な企業に訪問する中で,それができている企業や職場と,そうでないところとの間にある厳然たる格差を目にします。マネジメント格差を生み出す犯人は,マネジメントを機能させる動機やきっかけづくりへの,経営層や管理者の無頓着・怠慢です。それが,マネジメント格差を生み,企業や組織の低迷,従業員の不条理な苦しみを定着させているのです。
しかも,経営者が動機をきちんと認識し,全社的に改善のきっかけをつかんで前に進もうとしても,立ちはだかるハードルがあります。それは,ヒトという要素です。マネジメント改善への道に立ちはだかる抵抗勢力は,マネジメント格差が生んだ申し子であると同時に,マネジメント格差を再生産する当事者でもあります。
このような考え方から,マネジメント格差を解消するキモは,次の2つであるという結論に至りました。
- 個人のスキルや資質に頼らず「しくみ」化する
- しくみ化を進めると同時に,1人ひとりに働きかけ,行動改革や意識改革を促す
そのような考えの下におこなっている筆者らのコンサルティングの現場では,企業側の幹部の方から「10年かけてできなかったことが,たった半年でできた」など感嘆のお言葉をいただくこともあれば,反対に,思い出したくもないようなプロジェクトのつまずきや,思わぬ不当な対応や扱いを受けることもあります。そうした良くも悪くもディープな経験を源泉とする本書は,単なるハウツー本ではありません。筆者らが膨大な失敗事例,残念な事例を目にする中で,無邪気なハウツーという対症療法では,マネジメント格差という根深い問題に太刀打ちできないことを知っているからです。本書では,応用の利く原理原則として,
「そうした現状をもたらしている原因は何なのか?」
「そうした現状とあるべき姿とのギャップを埋めるために何をするといいのか?」
を深掘りし,さまざまなケースに適用できることを目指しました。そのうえで,実践を手助けするためのヒントとして,what(課題)を具現化するためのhow(方法)を示します。つまり,目先の実用性でなく,長期にわたって応用の利く汎用性を持たせました。
やや乱暴な言い方をすると,多くの人にとって,仕事とは苦しいものです。一見すると,恵まれ,充実した様子の会社員でも,心の内に一歩足を踏み入れると,それなりに深い闇を抱えているものです。知恵や余力の助けがほんの少しでもあれば解決しそうなのに,1人で抱え込んで孤立無援のまま納期や品質のプレッシャーに押しつぶされそうになる。にもかかわらず,ムダなことに時間を浪費し,焦って苛立つ。そして,そうした状況が“被害者意識”を育て,職場の人間関係に影響を与えて,ますます孤立無援のループにはまる――そのようなつらい状況や悩みを和らげ,職場として本来持つ力を発揮する一助となれば幸いです。