マネジメント格差
「苦しい職場」を変えてくれるしくみ・行動・考え方とは?

[表紙]マネジメント格差 ~「苦しい職場」を変えてくれるしくみ・行動・考え方とは?

紙版発売
電子版発売

四六判/240ページ

定価1,848円(本体1,680円+税10%)

ISBN 978-4-297-10116-9

ただいま弊社在庫はございません。

電子版

→学校・法人一括購入ご検討の皆様へ

この本の概要

「ここにあったはずのモノがまたどっかにいった……」
「あの人のせいで,こっちまで巻き添えを食ってるよ」
「ウチって,相変わらずここがダメだよね。みんなわかってるのに,どうして何年たっても変わらないんだろう?」

そんな問題をいつまでも放置して苦しみ続ける管理不在・経営不在の組織を変えるにはどうすればいいか?

創立70年,町工場から一部上場企業まで900社以上の多様な業種の生産性・品質向上を支援してきた中部産業連盟の精鋭メンバーが,泥臭い現場のリアルをもとに,職場の生産性を根本から向上させるノウハウを教えます。

こんな方におすすめ

  • 「ここにあったはずの○○○(物,書類,データなど)がまたどこかへ消えた。みんな忙しそうだし,また聞いて回るのもうんざり」
  •  「あの人(あの部署)のおかげで,こっちまで巻き添えを食ってるよ」
  •  「この仕事のやり方は変えたほうがまちがいなく効率がいいと思うけど,そんなこと○○○さん(先輩,上司)に言えないよなあ……」
  •  「あれもしなきゃ,これもしなきゃ。もうパンク状態だけど,だれにも頼れない……」
  •  「今日の仕事はもう終わったから早く帰りたいけど,だれも帰る気配がない。みんな何してるんだろう?」
  •  「ウチって,相変わらず△△△なところがダメだよね。みんなわかってるのに,どうして何年たっても変わらないんだろう」

といった悩みを1つでもお持ちのビジネスパーソン,管理者,経営者の方

著者の一言

はじめに

机の上に積まれた書類の山,机の下にもあふれかえった書類。キャビネットに目をやると,そこにも雑然と置かれた書類や備品,何が入っているのかわからない段ボール箱。机も棚も,一部はまるで“ゴミ屋敷”同然。そして,シーンとした静けさの中に漂うギスギス感。自分の守備範囲外には無関心を決め込み,パソコン画面を見つめる従業員たち──そのような職場からは,次のようなため息が聞こえてきます。

「ここにあったはずの○○○(物,書類,データなど)がまたどこかへ消えた。みんな忙しそうだし,また聞いて回るのもうんざり」
「あの人(あの部署)のおかげで,こっちまで巻き添えを食ってるよ」
「この仕事のやり方は変えたほうがまちがいなく効率がいいと思うけど,そんなこと○○○さん(先輩,上司)に言えないよなあ……」
「あれもしなきゃ,これもしなきゃ。もうパンク状態だけど,だれにも頼れない……」 「今日の仕事はもう終わったから早く帰りたいけど,だれも帰る気配がない。みんな何してるんだろう?」
「ウチって,相変わらず△△△なところがダメだよね。みんなわかってるのに,どうして何年たっても変わらないんだろう?」

筆者らは,年間で約180日間,10年のキャリアがあれば1800日間も企業に朝イチで直行し,ほぼ終日,改善指導を通じて組織の中にどっぷりと浸かるなかで,このようなため息に象徴される次のような問題点を日本中の職場で目にしています。

  • モノ探し,書類探し含め,不毛なことに時間やエネルギーを奪われている
  • 関係するほかの人の仕事が見えていない,あるいは相互に関わりのある他部署の仕事が見えていないので,職場内・職場間で利害の対立を起こし,組織力が発揮されていない
  • 過去に起きたミス,ほかの人やほかの部門が起こしたトラブルが共有化されておらず,再発を繰り返している
  • 職場のさまざまなムダや問題点は昔から共通認識がある(みんなわかりきっている)のに,いっこうに改善されない

もし,あなたの職場がこれらのどれかに当てはまる場合,ほかの恵まれた職場やライバル企業との間で,残業時間や従業員の定着率,パフォーマンスに格差が生まれていることでしょう。これらの問題を生み出す真犯人は,1つのキーワードに集約できます。それが,「マネジメント格差」です。

マネジメントとは「組織を動かして成果を上げる」ことですが,業種も規模も多種多様な企業に訪問する中で,それができている企業や職場と,そうでないところとの間にある厳然たる格差を目にします。マネジメント格差を生み出す犯人は,マネジメントを機能させる動機やきっかけづくりへの,経営層や管理者の無頓着・怠慢です。それが,マネジメント格差を生み,企業や組織の低迷,従業員の不条理な苦しみを定着させているのです。
しかも,経営者が動機をきちんと認識し,全社的に改善のきっかけをつかんで前に進もうとしても,立ちはだかるハードルがあります。それは,ヒトという要素です。マネジメント改善への道に立ちはだかる抵抗勢力は,マネジメント格差が生んだ申し子であると同時に,マネジメント格差を再生産する当事者でもあります。

このような考え方から,マネジメント格差を解消するキモは,次の2つであるという結論に至りました。

  • 個人のスキルや資質に頼らず「しくみ」化する
  • しくみ化を進めると同時に,1人ひとりに働きかけ,行動改革や意識改革を促す

そのような考えの下におこなっている筆者らのコンサルティングの現場では,企業側の幹部の方から「10年かけてできなかったことが,たった半年でできた」など感嘆のお言葉をいただくこともあれば,反対に,思い出したくもないようなプロジェクトのつまずきや,思わぬ不当な対応や扱いを受けることもあります。そうした良くも悪くもディープな経験を源泉とする本書は,単なるハウツー本ではありません。筆者らが膨大な失敗事例,残念な事例を目にする中で,無邪気なハウツーという対症療法では,マネジメント格差という根深い問題に太刀打ちできないことを知っているからです。本書では,応用の利く原理原則として,

「そうした現状をもたらしている原因は何なのか?」
「そうした現状とあるべき姿とのギャップを埋めるために何をするといいのか?」

を深掘りし,さまざまなケースに適用できることを目指しました。そのうえで,実践を手助けするためのヒントとして,what(課題)を具現化するためのhow(方法)を示します。つまり,目先の実用性でなく,長期にわたって応用の利く汎用性を持たせました。

やや乱暴な言い方をすると,多くの人にとって,仕事とは苦しいものです。一見すると,恵まれ,充実した様子の会社員でも,心の内に一歩足を踏み入れると,それなりに深い闇を抱えているものです。知恵や余力の助けがほんの少しでもあれば解決しそうなのに,1人で抱え込んで孤立無援のまま納期や品質のプレッシャーに押しつぶされそうになる。にもかかわらず,ムダなことに時間を浪費し,焦って苛立つ。そして,そうした状況が“被害者意識”を育て,職場の人間関係に影響を与えて,ますます孤立無援のループにはまる――そのようなつらい状況や悩みを和らげ,職場として本来持つ力を発揮する一助となれば幸いです。

著者プロフィール

小坂信之(こさかのぶゆき)

一般社団法人 中部産業連盟 理事,東京事業部長,主幹コンサルタント。食品製造販売会社にて製造担当,営業担当,経営企画担当,改善事務局を経て,現職に至る。VM(見えるマネジメント)活動の普及と推進,新工場建設,VM-FMS(見えるフレキシブル生産システム)の構築,生産現場改善,開発・管理・間接部門の改善などのテーマについて,「他人の喜びを我が喜びとせよ」を信条に指導。


丸田大祐(まるただいすけ)

一般社団法人 中部産業連盟 東京事業部所属の上席主任コンサルタント。大手ゼネコンの経営企画室にて戦略立案,全社改善事務局を担当。経営改革の限界を感じながらも,コンサルタントに転職。5S,品質改善,生産性向上のコンサルティングに従事。担当企業発展のために,組織と人のより良い変化と成果をもたらす「黒子」をモットーに,日々,全国各地を駆け巡る。


鈴木秀光(すずきひでみつ)

一般社団法人 中部産業連盟 東京事業部所属の主任コンサルタント。出版社にて雑誌編集者を経て,現職に至る。本書で紹介されているようなマネジメント改善コンサルティングを中心に,ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証取得支援,労働安全活動支援のコンサルティングなども担当している。


藤田伸之(ふじたのぶゆき)

一般社団法人 中部産業連盟 東京事業部所属の主任コンサルタント。精密機械メーカーのサービスエンジニアとして従事するなか,品質改善プロジェクトなどを通じて企業改善にやりがいを感じるようになり,コンサルタントに転身。企業の喜びを我が喜びと考え,マネジメントの指導をベースに,収益・原価管理や品質管理,設計開発部門のコンサルティングにも携わる。


中部産業連盟 東京事業部(ちゅうぶさんぎょうれんめいとうきょうじぎょうぶ)

一般社団法人
1948年に設立された中部産業連盟(本部・名古屋)の東京事務所。中部産業連盟は,トヨタ自動車をはじめ,全国約800社が会員として加盟している国際的水準のマネジメント専門団体。東京事業部としてはコンサルティング,企業内研修やセミナーで1990年頃からVM(Visual Management)手法の普及を図り,クライアント企業のオフィスや現場の生産性向上,品質向上などの支援を手がける。指導先の業種は製造業,エネルギー産業,商社,金融機関,公的機関など多岐に亘り,規模も年間売上高1兆円超の大企業から従業員10人未満の家族経営的な組織まで多岐に亘る。VM手法の指導実績は900社以上(2018年8月現在)。所属のコンサルタントや営業担当による『新・まるごと5S展開大事典』『「目で見る管理」大事典』など著書多数(おもに日刊工業新聞社より)。
ホームページ:https://www.chusanren.or.jp/tokyo/