マネジメント格差
~「苦しい職場」を変えてくれるしくみ・行動・考え方とは?
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小坂信之,丸田大祐,鈴木秀光,藤田伸之 著
中部産業連盟 東京事業部 編 - 定価
- 1,848円(本体1,680円+税10%)
- 発売日
- 2018.10.16[在庫なし]
- 判型
- 四六
- 頁数
- 240ページ
- ISBN
- 978-4-297-10116-9 978-4-297-10117-6
サポート情報
概要
「ここにあったはずのモノがまたどっかにいった……」
「あの人のせいで、こっちまで巻き添えを食ってるよ」
「ウチって、相変わらずここがダメだよね。みんなわかってるのに、どうして何年たっても変わらないんだろう?」
そんな問題をいつまでも放置して苦しみ続ける管理不在・経営不在の組織を変えるにはどうすればいいか?
創立70年、町工場から一部上場企業まで900社以上の多様な業種の生産性・品質向上を支援してきた中部産業連盟の精鋭メンバーが、泥臭い現場のリアルをもとに、職場の生産性を根本から向上させるノウハウを教えます。
こんな方にオススメ
- 「ここにあったはずの○○○(物、書類、データなど)がまたどこかへ消えた。みんな忙しそうだし、また聞いて回るのもうんざり」
- 「あの人(あの部署)のおかげで、こっちまで巻き添えを食ってるよ」
- 「この仕事のやり方は変えたほうがまちがいなく効率がいいと思うけど、そんなこと○○○さん(先輩、上司)に言えないよなあ……」
- 「あれもしなきゃ、これもしなきゃ。もうパンク状態だけど、だれにも頼れない……」
- 「今日の仕事はもう終わったから早く帰りたいけど、だれも帰る気配がない。みんな何してるんだろう?」
- 「ウチって、相変わらず△△△なところがダメだよね。みんなわかってるのに、どうして何年たっても変わらないんだろう」
- といった悩みを1つでもお持ちのビジネスパーソン、管理者、経営者の方
目次
- はじめに
第1章 「あー、もういや」を生み出す絶望オフィスの正体
- マネジメント格差、誕生
- ケース1 人がいない、人がバラバラの「学級崩壊」状態に無頓着
- ケース2 面倒な業務改善は「若手に押しつけ」という怠慢
- ケース3 “瞬間的な改善”祭りが生む「改善アレルギー」に鈍感
- マネジメントを機能させるのに必要な3つのこと
第2章 整理・整頓で「動き」を「働き」に変える
- 「小さなムダに無頓着」「一匹オオカミ体質」をなくすためには標準化が必須
- 引き出しに2本以上の黒ボールペン、ホチキスの針があったら要注意
- 「たかが文房具」への無頓着さが生み出す2つの問題
- 「1日に1回以上使うモノ」だけを個人持ちにする
- “姿堀り”で1つひとつのモノの置き場所を指定席化する
- 姿堀りへの2つの反発とその対策
- 私物も書類も整理して「表示」することで、リバウンドに歯止めをかける
- 「私は知っているからいい」「担当者はわかってるからいい」という身勝手な考え方を一掃する
- “マネジメントの万病のもと”机上に山積みされた書類をどう片づけるか
- 「きれいにしろ」「片づけろ」というかけ声だけでは整理は進まない
- 継続的に整理するための5つの工夫
- 仕掛り書類の「平積み」は禁止
- 仕事の「状態」がわかる仕掛り書類ボックスを設置する
- 案件管理と仕掛り書類を結びつける
- 月に1~2回の相互チェックが職場のコミュニケーションを向上させる
- 仕掛り書類の整頓が「助け合える職場」を作る
- 「職場の生活習慣病のしるし」棚の中・上に放置されたオフィスの共用品を整理するには
- 「まだ使うかもしれない」「捨てていいかわからない」から要らないものが放置されてしまう
- 「再入手の容易さ」と「使っていない期間」に着目して、妥協点を定める
- 判断が割れた場合の処遇決定者とプロセスを決める
- 「要らないモノ判定リスト」を設ける
- セーフティネットを設けつつ、大掃除をする
- 共用備品の迷子、行方不明が生む無数の「ムダ」と相互不信をなくすには
- 共用備品に「保護者」がいないと生まれる5つのムダ
- グルーピング・専用化で置き場を明確に
- 「指定席化」「セット化」で見つけやすく、取り出しやすく
- 「置き場」「位置」「現品情報」の表示でまちがい防止を
- 月15分の一斉掃除でチョイ置きや放置品をチェック
第3章 情報共有で属人化・部分最適病をなくす
- 「情報」「知識」「意識」の壁が職場のブラックボックス化をもたらす
- 業務を“人質”にとられている状況から抜け出す第一歩
- 「39度の高熱が出た時も這って会社に来ました」
- 書類の共有化レベルを見れば、業務の共有化レベルがわかる
- 組織のお仕事・書類マップを作成してみる
- 勝手気ままなファイリングによる職場の“ムラ社会”化を解消する
- 「ファイルの背表紙の表記が自分ルールでわからない」けれどだれも困らないのはなぜか
- 悲願の「背表紙統一」のための要件とは
- 業務を基点としたファイリングをするための2つのステップ
- 「保管」と「保存」を分けて期間を設定する
- マンションは共用廊下やゴミ捨て場、組織はファイルサーバを見れば管理レベルがわかる
- 「修正版や更新版が乱立」「どんなファイルも閲覧し放題」など問題が多い
- なぜ、ファイルサーバの中は荒れるのか?
- まず一致団結して“ゴミファイル”の整理が必要
- 「お仕事・書類マップ」をベースに管理ルールを明文化して歯止めをかける
- フォルダツリー体系、フォルダ名称、電子ファイル格納場所を決める
- ファイルの保管・保存ルールを決める
- ファイルの命名規則を標準化する
- 維持できるかどうかは管理レベルが問われる
- 減らない残業の主犯“オフィス単純労働者”をゼロにする
- 情報が共有できていても、お互いがフォローできなければ「マネジメントできる組織」とはいえない
- 各人の“できる業務”の範囲を広げ、マルチスキル化する
- あらためて「なぜ」を説明する
第4章 明確な目標設定とPDCAの威力を味方につける
- 「目指す方向性」と「フィードバック」がなければ組織は疲弊する
- 「何がしたいのかわからない」方針・目標が招く疲弊から逃れる
- 病巣は「目的と評価指標の示し方」にある
- 言葉の定義を明確にし、組織全体のゴールへ導く
- 方針を正しく決めるための4つのステップ
- 方針・目標をきちんと定めても目標の乱立が起こりうる
- 複数の部門を「1つのゴール」に向かわせるための4つの手順
- ゴールに至る道筋が不明な目標管理、どうすれば視界良好にできるか
- 目標が展開されたからといって、管轄グループがひとりでに組織化されることはない
- 「何を」「どのように」「だれが」「いつまでに」の観点で目標を実現するための計画を具体化させる
- 行動と実績の現実を月の途中で確認する
- 実績は「なぜそうなったか」をチェックして軌道修正を図る
- 社内の割り込み・トラブル、外部の環境変化への処置や対策を
- PDCAサイクルを回すことも計画的に
- 仕事の遅れ、悪いのは担当者だけか?
- 手待ちにより、後工程は尻拭いに追われ、指示待ち社員は増え、会社は機会損失を被る
- 部門別業務日程を共有し、個人の業務日程と連動させる
- 業務日程計画を定期的にフォローする
- 時間を奪うだけの「仕事のようで仕事でないもの」を排除するには
- 「前からやっているから」「変える、見直すのがめんどうだ」から脱する
- 「何で」という視点からムダな残業を見直す
- ムダな会議を見直す5つのポイント
- 管理指標を設定して改善を進める
第5章 立ちはだかる「抵抗勢力」、その傾向と対策
- 抵抗勢力の5つのパターン
- 「しょうがない」と諦めるのか、「変えなくてはならない」と対処するかが格差の分かれ目となる
- 「一体化度」「無関心度」で抵抗勢力を分類すると
- 「今のままでだれも困ってません」無関心・仏頂面型
- 対策1 強気に持ち上げて、相手の自信を刺激する
- 対策2 まわりの成果を耳に入れて焦らせる
- 対策3 ハシゴを外すふりで、反省を促す
- 「とにかく人の指図は受けたくない」直情反発型
- 対策1 「○○さんだから相談したい」で会議前に封じ込める
- 対策2 行動パターンや価値観を尊重し、怒らせない
- 対策3 あいさつで警戒心を弱める
- 「ああ言えばこう言う」評論屁理屈型
- 対策1 念入りに準備し、勢いで押し切ってしまう
- 対策2 当事者にして協力してもらう
- 対策3 周囲の人間から攻め落とし、弱体化を狙う
- 「いろんな経緯があって、職場の腫れ物」へそ曲げ型
- 対策1 過去に放った“一瞬の輝き”を探り当て、くすぐる
- 対策2 アプローチを我慢して、ひたすら待つ
- 対策3 「うん、うん、そうだよね」──傾聴と迎合で陥落する
- 「“逆らわず、従わず”のれんに腕押し」面従腹背型
- 対策1 手順や基準を明確化する
- 対策2 業務日誌でタスク管理とコミュニケーションを図る
- 対策3 相手の関心事を聞いて、互いの価値観を近づける
- 「ボトムアップ幻想」から抜け出せる組織がうまくいく
- 敵だけでなく、己も知る
- 抵抗勢力を活かして組織を活性化する
- 組織の目的や価値観を共有する「場づくり」が大事
- 「話せばわかる」「相手が悪い」で終わらせない、伝え方の3つの工夫
- 抵抗勢力を嘆く前にマネジメントができる努力はある
- おわりに
プロフィール
小坂信之
一般社団法人 中部産業連盟 理事、東京事業部長、主幹コンサルタント。食品製造販売会社にて製造担当、営業担当、経営企画担当、改善事務局を経て、現職に至る。VM(見えるマネジメント)活動の普及と推進、新工場建設、VM-FMS(見えるフレキシブル生産システム)の構築、生産現場改善、開発・管理・間接部門の改善などのテーマについて、「他人の喜びを我が喜びとせよ」を信条に指導。
丸田大祐
一般社団法人 中部産業連盟 東京事業部所属の上席主任コンサルタント。大手ゼネコンの経営企画室にて戦略立案、全社改善事務局を担当。経営改革の限界を感じながらも、コンサルタントに転職。5S、品質改善、生産性向上のコンサルティングに従事。担当企業発展のために、組織と人のより良い変化と成果をもたらす「黒子」をモットーに、日々、全国各地を駆け巡る。
鈴木秀光
一般社団法人 中部産業連盟 東京事業部所属の主任コンサルタント。出版社にて雑誌編集者を経て、現職に至る。本書で紹介されているようなマネジメント改善コンサルティングを中心に、ISO9001(品質マネジメントシステム)やISO27001(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証取得支援、労働安全活動支援のコンサルティングなども担当している。
藤田伸之
一般社団法人 中部産業連盟 東京事業部所属の主任コンサルタント。精密機械メーカーのサービスエンジニアとして従事するなか、品質改善プロジェクトなどを通じて企業改善にやりがいを感じるようになり、コンサルタントに転身。企業の喜びを我が喜びと考え、マネジメントの指導をベースに、収益・原価管理や品質管理、設計開発部門のコンサルティングにも携わる。
中部産業連盟 東京事業部
一般社団法人
1948年に設立された中部産業連盟(本部・名古屋)の東京事務所。中部産業連盟は、トヨタ自動車をはじめ、全国約800社が会員として加盟している国際的水準のマネジメント専門団体。東京事業部としてはコンサルティング、企業内研修やセミナーで1990年頃からVM(Visual Management)手法の普及を図り、クライアント企業のオフィスや現場の生産性向上、品質向上などの支援を手がける。指導先の業種は製造業、エネルギー産業、商社、金融機関、公的機関など多岐に亘り、規模も年間売上高1兆円超の大企業から従業員10人未満の家族経営的な組織まで多岐に亘る。VM手法の指導実績は900社以上(2018年8月現在)。所属のコンサルタントや営業担当による『新・まるごと5S展開大事典』『「目で見る管理」大事典』など著書多数(おもに日刊工業新聞社より)。
ホームページ:https://www.chusanren.or.jp/tokyo/
著者の一言
はじめに
机の上に積まれた書類の山、机の下にもあふれかえった書類。キャビネットに目をやると、そこにも雑然と置かれた書類や備品、何が入っているのかわからない段ボール箱。机も棚も、一部はまるで“ゴミ屋敷”同然。そして、シーンとした静けさの中に漂うギスギス感。自分の守備範囲外には無関心を決め込み、パソコン画面を見つめる従業員たち──そのような職場からは、次のようなため息が聞こえてきます。
「ここにあったはずの○○○(物、書類、データなど)がまたどこかへ消えた。みんな忙しそうだし、また聞いて回るのもうんざり」
「あの人(あの部署)のおかげで、こっちまで巻き添えを食ってるよ」
「この仕事のやり方は変えたほうがまちがいなく効率がいいと思うけど、そんなこと○○○さん(先輩、上司)に言えないよなあ……」
「あれもしなきゃ、これもしなきゃ。もうパンク状態だけど、だれにも頼れない……」 「今日の仕事はもう終わったから早く帰りたいけど、だれも帰る気配がない。みんな何してるんだろう?」
「ウチって、相変わらず△△△なところがダメだよね。みんなわかってるのに、どうして何年たっても変わらないんだろう?」
筆者らは、年間で約180日間、10年のキャリアがあれば1800日間も企業に朝イチで直行し、ほぼ終日、改善指導を通じて組織の中にどっぷりと浸かるなかで、このようなため息に象徴される次のような問題点を日本中の職場で目にしています。
もし、あなたの職場がこれらのどれかに当てはまる場合、ほかの恵まれた職場やライバル企業との間で、残業時間や従業員の定着率、パフォーマンスに格差が生まれていることでしょう。これらの問題を生み出す真犯人は、1つのキーワードに集約できます。それが、「マネジメント格差」です。
マネジメントとは「組織を動かして成果を上げる」ことですが、業種も規模も多種多様な企業に訪問する中で、それができている企業や職場と、そうでないところとの間にある厳然たる格差を目にします。マネジメント格差を生み出す犯人は、マネジメントを機能させる動機やきっかけづくりへの、経営層や管理者の無頓着・怠慢です。それが、マネジメント格差を生み、企業や組織の低迷、従業員の不条理な苦しみを定着させているのです。
しかも、経営者が動機をきちんと認識し、全社的に改善のきっかけをつかんで前に進もうとしても、立ちはだかるハードルがあります。それは、ヒトという要素です。マネジメント改善への道に立ちはだかる抵抗勢力は、マネジメント格差が生んだ申し子であると同時に、マネジメント格差を再生産する当事者でもあります。
このような考え方から、マネジメント格差を解消するキモは、次の2つであるという結論に至りました。
そのような考えの下におこなっている筆者らのコンサルティングの現場では、企業側の幹部の方から「10年かけてできなかったことが、たった半年でできた」など感嘆のお言葉をいただくこともあれば、反対に、思い出したくもないようなプロジェクトのつまずきや、思わぬ不当な対応や扱いを受けることもあります。そうした良くも悪くもディープな経験を源泉とする本書は、単なるハウツー本ではありません。筆者らが膨大な失敗事例、残念な事例を目にする中で、無邪気なハウツーという対症療法では、マネジメント格差という根深い問題に太刀打ちできないことを知っているからです。本書では、応用の利く原理原則として、
「そうした現状をもたらしている原因は何なのか?」
「そうした現状とあるべき姿とのギャップを埋めるために何をするといいのか?」
を深掘りし、さまざまなケースに適用できることを目指しました。そのうえで、実践を手助けするためのヒントとして、what(課題)を具現化するためのhow(方法)を示します。つまり、目先の実用性でなく、長期にわたって応用の利く汎用性を持たせました。
やや乱暴な言い方をすると、多くの人にとって、仕事とは苦しいものです。一見すると、恵まれ、充実した様子の会社員でも、心の内に一歩足を踏み入れると、それなりに深い闇を抱えているものです。知恵や余力の助けがほんの少しでもあれば解決しそうなのに、1人で抱え込んで孤立無援のまま納期や品質のプレッシャーに押しつぶされそうになる。にもかかわらず、ムダなことに時間を浪費し、焦って苛立つ。そして、そうした状況が“被害者意識”を育て、職場の人間関係に影響を与えて、ますます孤立無援のループにはまる――そのようなつらい状況や悩みを和らげ、職場として本来持つ力を発揮する一助となれば幸いです。