概要
累計15万部『職場の問題地図』『仕事の問題地図』『働き方の問題地図』,『職場の問題かるた』に続く働き方改革のバイブル,シリーズ最新作! 「システムを新しくしたらかえって仕事が増えた,なんとかしてくれ」「こんなシステム使うなんてめんどくさい,元に戻せ」現場の生産性を向上させるためのシステムが,なぜ使えない・使われないものになってしまうのか? システムを「使う人」「作る人」「守る人」いずれの立場も経験した著者が,問題の原因を図解で示しつつ,解決策を教えます。【巻頭付録】システムの問題 全体マップ
こんな方におすすめ
- お金がかかるわりに使えないシステムに苛立つユーザーの方(情報システム部門,経営者,エンドユーザー)
- ユーザーの要求に振り回されて疲弊しているITベンダーの方(開発,運用,営業,プロジェクトマネージャー,経営者)
著者から一言
どうして生まれる!?「使えない」「使われない」残念な情報システム
人手でやっていたらとても終わらない,キリがない仕事を一手に引き受けてくれるスグレもの。それが情報システム(以下,システム)。メールはもちろん,営業,広報,人事,経理,CRM,購買……企業のあらゆる活動は,もはやシステムなしには成り立ちません。
しかし,すべてのシステムが重宝がられているかというと,そうではない。「残念なシステム」も存在します。
「こんなシステム,使えない!」
「かえって仕事が増えた,なんとかしてくれ」
「めんどくさい。元に戻せ」
「そんなシステムあったんですか?だれも使ってないっすよ……」
現場から非難ごうごう。
本来,働く人をラクにするはずのシステム。現場の生産性を向上させるためのシステム。なぜ,こんな本末転倒なことになってしまうのでしょうか?そこにはこんな問題が潜んでいます。
- 「だれのため?」「何のため?」な目的
- 無駄に複雑で高機能
- 「とりあえず作っとけ!」で作られる
- 抜け漏れだらけの要件
- 何もしない,何もわからない無邪気なユーザー(システム企画部門や情報システム部門)
- 必ず火を吹くプロジェクト
- 関係者の間で言葉が違う,問題意識が違う
- マネジメント不全
- 「言われないことはやらない」「仕様ですから」と受け身すぎるベンダー(ユーザーから請け負ってシステムを開発/運用/提供する企業)
とほほ。こんな状態で,いいシステムが生まれるハズがありません。
では,いったいだれが悪いのか?システムを取り巻く人たちは,それぞれ不満をもっています。
まずはユーザーから……。
業務部門(システム担当)
「俺たちはシロウトなんだ。ITのことなんてわからなくて当然!」
「これくらい,ちゃちゃっとスグ作れるよね?」
「徹夜してでもやれ!」
「保守費用?そんなの,壊れないシステムを作ってくれればいらないでしょ」
情報システム部門
「費用対効果を出してくれないと動けません」
「業務のことはわかりません」
「……というわけで,業務がそう言っているから,ベンダーさんしっかりやってね。後はよろしく(マル投げ)」
「とりあえず,納期厳守で」
「(じつはITのことよく知りません)」
一方,ベンダーからはこんな不満が……。
営業
「はい,おっしゃられたことはなんでもやります!」
「費用については,とりあえず後で検討しましょう」
開発
「僕たちは,言われたことだけをやればいい」
「要件にありません。できません」
「ぬおっ,仕様変更。なんとしてでも阻止しろ!」
「とりあえず作ればいいんでしょ。使われるかどうかなんて知ったこっちゃない」
「運用でなんとかすればいい!」
運用
「またボロボロのシステム作りやがって……」
「マニュアル作ってくれないとできません。受けられません」
「営業が安値で受けてきやがった。こんな少人数で回せるわけがない!」
「え,そんな運用が発生するなんて聞いてない!」
いい加減にしなさい!
それぞれが,それぞれの立場で,勝手なことばかり主張している。
同じシステムを作って使う仲間同士,本来協力しあわなければいけないのに,仲違いだらけ,すれ違いだらけ。少なくともここ20年,ずっと変わっていません。
こんなことを繰り返していたら,だれも幸せにならない。なにより,スピードと生産性重視のこれからの時代,私たちは生き残っていけません。
この悲しい景色,そろそろナントカしたい!そこで本書が生まれました。
私はこれまで,ユーザーとベンダー両方の立場を経験しました。ユーザー企業に勤務していたときは,広報部門と購買部門でユーザー代表として,情報共有基盤やWebポータル,購買システムの企画・導入・運営を。NTTデータ(いわゆるベンダー企業)では,プロジェクトリーダーの立場で,グループ会社共通の認証基盤の立ち上げと運用,そして社内とお客様向けのシステムの運用責任者(ITサービスマネージャー)を務めました。
システムを「使う人」「作る人」「守る人」,いずれの立場も知っている。だからこそ,もっとお互いのことをわかり合ってほしい,寄り添ってほしい――そう思っています。
「俺たちはシロウトでいい」
「言われたことしかやらない」
「とりあえず作ればいい」
この無益な意地の張り合い,おしまいにしましょう。そんなことを続けていても,いいシステムは生まれません。何より,ユーザーもベンダーも,自分たちの価値を下げ,個人としても組織としても成長しません。「使えないシステム」を生み続けていると,いつの間にか「使えない自分たち」になってしまいます!
本書では,企業のシステムをとりまく残念な「あるある」を地図にしました。いずれも,私がユーザー部門,調達部門,情シス部門,ベンダー,運用管理者,それぞれの立場で体験し,かつ今ではクライアント先やIT勉強会仲間と話していて見聞きしていることばかり。そして,「それぞれの立場でどうしたらいいか?」を提言します。
それぞれの立場で,それぞれのリアルと向き合ってください。なおかつ,自分と違う立場の人の悩みを疑似体験していただけたらうれしいです。
「だから,ウチのシステムは使えないんだ!」
「そうか,ユーザーはここに困っているのか」
「へえ,情シスの人って大変なんだね」
「ベンダーの考え方って,こうなんだ」
「そうか,こうすれば運用の人に心地よく動いてもらえるんだ」
自分たちの立場でできるところから改善していきましょう。
2017年冬太田川ダム(静岡県森町)のほとりにて
沢渡あまね