概要
累計18万部突破の問題地図シリーズ最新作!
「昨年以上の成果を出せ」
「生産性を上げろ」「雑談力も上げろ」
「チームの一体感やモチベーション向上も管理職の責任だ」
「ただし予算は増やせない」「人も増やせない」
「残業はさせるな」
そんなプレッシャーと制約で悩む中間管理職の問題,どこから,どう手をつけていけばいいか?
マネージャー1人で抱え込まず,チームプレイでともに成長しながら乗り切る! そのための方法を教えます。
【巻頭付録】マネージャーの問題 全体マップ
こんな方におすすめ
- 上司と部下の板挟みになりつつ,残業削減や少ないリソースなどの制約の下,成果を出せないといけない中間管理職
著者から一言
「残業させるな」「予算目標は達成しろ」「部下のモチベーションも上げろ」いったいどうすりゃイイんですか!?
いま,マネージャー(管理職)が重苦しい。働き方改革,生産性向上,社員満足向上,人材の獲得/定着……さまざまなマネジメントキーワードが踊る中,次から次に新たなミッションが降ってくる。
「昨年以上の成果を出せ」
「生産性を上げろ」「雑談力も上げろ」
「チームの一体感やモチベーション向上もマネージャーの責任だ」
「ただし予算は増やせない」「人も増やせない」
「残業はさせるな」
あれもこれも,部長や課長,あるいはグループリーダー(以下,すべてを総称して「マネージャー」と称します)に押し付けられる。仕方なしに,部下の仕事を肩代わりして深夜残業・持ち帰り残業・休日出勤の日々。そうすると,今度は部下たちはこんなヒソヒソ話を始めます。
「いやー,マネージャーなんて絶対なるもんじゃないよね……」
こんなことを続けていても,だれも幸せになりません。
- マネージャー自身が疲弊する
- 若手が成長しない
- マネージャー自身も成長しない
そして
この悲しき景色,なぜ生まれてしまうのでしょうか? それを考えるには「管理」というコトバの意味をひもといていく必要があります。
「管理」には3つある
ひとことで“管理”といっても,さまざまな意味があります。英語で考えたほうがわかりやすいかもしれません。日本語の「管理」。英語では,次の3つに分けられます。
- Management(やりくり)
- Control(統制)
- Administration(事務執行)
どうも日本でいうところの「管理職」や「マネジメント職」は,このすべてを1人の人に求めがち。そして,機能不全に陥りがち。この3つに求められる要件も違えば,遂行に必要なスキルもメンタリティも異なります。1人で全部できなければ,役割分担すればいいのです。
さらに,従来の日本型組織のマネジメントには2つの大きな弱点があります。
- 前例踏襲型。過去の組織文化の中で成功してきた「スーパープレイヤー」「エース級」人材がマネジメント職に登用されてきた
- (その結果)マネージャー個人の成功体験や属人的なスキルとメンタリティだけでナントカしようとしてきた
これでは,組織運営が場当たり的,近視眼的になって当然。厳しいことをいえば,マネジメント職の役割,タスク,要件を未定義あるいはアップデートしないまま突っ走っている。これが日本の多くの組織の現状です。
これからのマネージャーにとって重要な5つのマネジメント
マネージャーとは,本来何をすべきなのでしょうか? とりわけ,これからの時代のマネージャーにとって重要,かつ日本の組織に弱い5つのマネジメントを挙げます。
- 【A】コミュニケーションマネジメント
⇒上司と部下,メンバー同士,部署間,社外と社内など業務遂行に必要なコミュニケーションを定義し,設計して,発生させる。
- 【B】リソースマネジメント
⇒必要なヒト・モノ・カネ・情報・能力・機能を特定し,調達する。
- 【C】オペレーションマネジメント
⇒日々の業務が効率よく回る/問題やトラブルを迅速に解決できるようなプロセス/仕組みを整える。
- 【D】キャリアマネジメント
⇒組織と個人の成長に必要な要件(スキル,経験など)やストーリーを定義する。メンバーに機会(教育,経験の場)を提供する。
- 【E】ブランドマネジメント
⇒組織および担当業務の価値を高める。社内外からよりいい人材が集まるようにする。
マネージャーに求められる9つの行動
そして,これらのマネジメントに求められる行動は次の9つです。
- ①ビジョニング 【A】【D】【E】
⇒「その組織(会社/部門/課/チーム)が目指す方向は? 何を大切とするか?」を示し,メンバーに方向づけできる。
「この組織でどんな仕事ができて,どんなスキルが身につくのか?」少し先の未来を示すことができる。
その組織“らしさ”を語ることができる。
“らしさ”を体現している人(ロールモデル)を承認する/正しく評価する。
- ②課題発見/課題設定 【A】【C】【D】
⇒その組織が解決する問題を特定し,課題設定できる。
チームと個人が成長するためにチャレンジするテーマを設定できる。
メンバー全員の問題,課題に対する景色を合わせる。
- ③育成 【B】【D】【E】
⇒その組織のミッションを完遂するために/より高い価値を出すために必要なスキルを定義できる。
メンバーになにが足りていて/なにが足りていないかを可視化できる。
OJT/OFF-JTを計画し,実行・管理できる。
将来(個人と組織の成長)に対して投資する。
- ④意思決定 【A】【B】【E】
⇒迅速かつ適切に意思決定する。
自らが意思決定をする。または部下に権限委譲し,意思決定や優先度づけを支援する。
- ⑤情報共有/発信 【A】【E】
⇒その組織のビジョン,ミッション,方向性,意思決定に重要な情報などをメンバーに迅速に共有する。
検討状況や進捗状況を共有する。社内外の情報をメンバーに共有する。
自組織の“らしさ”や方向性,取り組みや成果を社内外に発信する。
- ⑥モチベート/風土醸成 【A】【D】【E】
⇒メンバーをモチベートする。
メンバーが課題解決や組織の価値向上に向けてチャレンジする機会や大義名分を作る。
- ⑦調整/調達 【B】【C】
⇒組織のミッションを完遂するために,足りないリソースを明確にし,予算を確保して社内外から調達する。
メンバー同士の組み合わせにより/外の人の力を借りることで,ミッションを達成できる。
- ⑧生産性向上 【A】【B】【C】
⇒個人個人の生産性が最も上がる環境を提供する。
成果の見えにくい仕事/すぐに結果の出ない仕事を評価する。
- ⑨プロセス作り【A】【C】
⇒メンバーが安定して成果を出せるためのプロセスを整備する/再構築する。
「え,これ全部やらなければならないんですか? ますます気が遠くなりそうです……」
心配ご無用! なにもあなたが全部やれとは言っていません。マネージャーが全部やらなくても結構。
ずばり言います。マネージャーのみなさん。あなた1人で抱え込んで悩むのそろそろやめましょう。あなたは社長でもなければ,個人事業主でもありません。チームを束ねる人です。であれば,チームでマネジメントできるようにすればいいのです。チームで解決しましょう。
マネジメント不全とおさらばするための,3つの割り切り
では,チームでマネジメントをうまく回せるようにするにはどうしたらいいか? 3つの割り切りをしましょう。
- ①プレイングマネージャーは「仕方ない」
「マネジメントもせよ。しかし,メンバーの一員として成果も出せ」
いわゆるプレイングマネージャー。マネージャーはマネジメント業務に専念できるにこしたことはありませんが,そうはいっても人があてがわれるワケではない。予算も限りがある。
少子高齢化で労働力の確保が厳しい時代,プレイングマネージャーはある意味仕方がない事象といえるでしょう。多くの組織において,脱プレイングマネージャーは現実的ではありません。「必要なマネジメントができていない状態」問題はそこです。重要度高×緊急度低の仕事(改善,研究,学習など)がいつまでたっても手つかず。生産性もモチベーションも低いままの状態。
プレイングしながらマネジメントできるようにするためにはどうしたらいいか?
プレイしながらメンバーに「らしさ」を見せるには?
マネージャーとしての背中を見せるにはどうしたらいいか?
それを考えて実践したいものです。
- ②「マネージャーは何でもできなければならない」を捨てる
これがマネージャーを追い詰め,時に機能不全(さらにメンタルヘルス不全)に追いやる。そして,マネージャーになりたがる若手を減らす。
自分でなんでもできるようにならなくていい。部下や派遣社員に任せればいい。要は,リソースマネジメントしてナントカすればいいのです。
マネジメントに求められるテーマは,日々刻々変わります。最新のテクノロジーやトレンドに追いつくのは,シニアなマネージャーが無理してがんばったところで,若手の俊敏性にはかないません。だったら,若手に任せたほうが実践的かつスピード感がありますし,若手の育成にもなります。チーム内のリスペクト醸成にもなります。
- ③自分たちだけでやろうとしない
マネジメントの一部を外注してやってもらうのもありです。
「自分たちでできなければ,外の専門スキルを頼る」
これはきわめて健全な行動です。繰り返しになりますが,マネージャーに求められる役割は年々増えますし,高度化します。すべてを自分たちでやろうとしたらすぐさまブラック職場に。問題なのは,本来やらなければいけないマネジメントが手つかずのまま放置されている,由々しき状況です。それを放置するくらいなら,外の力を借りてでも前進しましょう。「外の力を借りる」これは,若手に対して
「あ,苦手なことは無理に自分たちだけでやろうとしなくてもいいんだ」
「会社のお金を使ってもいいんだ」
という心理的な安心感も醸成することができます。
この3つは“開き直り”といっても過言ではありません。このくらい割り切って考えなければ,いつまでたってもマネージャー依存のマネジメント不調の景色は変わらないのです。
繰り返します。1人のマネージャーが全部やろうとしなくていいのです。1人で悩まない。必要なマネジメントの全体像を把握し,足りていないものを明確にし,チームで解決する。外の力を借りながらこなれさせていけばいいのです。
この本は,マネージャーが1人で頭を抱えて疲弊する今日を,チームのみんなが笑顔で成長する明日に変えるための本です。成長する組織に向かって,いっしょにページをめくりましょう!