概要
ベテランのデザイナーやイラストレーターにとっても地図デザインはやっかいな仕事です。資料価値を高め,購入者にアピールできる作業ですが,詳細に作り込めば時間がかかる反面,予算は限られていることが多いです。昨今は,地図アプリやGIS(地理情報システム)を使えば便利だという話を聞いてはいるものの,調べている余裕もなく,結局はいつものように一からIllustratorで作成しているのではないでしょうか。
そこで本書では,パブリックドメインになっている各種地図データの扱い方,加工できる無料ツール,さらに仕上げにIllustratorを使った地図デザインの方法を解説します。本書のとおりに作成すれば,「地形入りのタウンマップ」「遠近感のある地形図」「正確な市区町村図」「正確な鉄道路線図」「世界の陰影地形図」などが簡単に作ることができます。
こんな方におすすめ
- 「旅行」「歴史」「グルメ」「お店紹介」などの書籍/雑誌で,地図画像をIllustratorのみでトレースして作成するデザイナー,イラストレーター
目次
Chapter 1 利用するソフトウェアの準備と地図データ利用のための利用者登録
- 1 「基盤地図ビューア」と「基盤地図標高変換」の準備
- 2 「ジオ地蔵」の準備
- 3 「QGIS」の準備
- 4 「基盤地図情報ダウンロードサービス」の利用者登録
Chapter 2 トレース作業なしで地図を作成する【基盤地図ビューア】
- Step1 地図データをダウンロードする
- Step2 基盤地図ビューアで書き出す
- Step3 Illustratorに読み込む
- Step4 地図要素をレイヤーに分配する
- Step5 地色をオレンジ系,道を白にする
- Step6 JRの線路を表現する
- Step7 歩道の色,線幅を設定する
- Step8 建物を選んでコピーし,色を設定する
- Step9 主要施設の文字を入れる
- Step10 路線名・通り名を入れる
- Step11 紹介ポイントを作成する
- Step12 見出しを作り,出所を明示する
- 応用① 大規模な公園の案内図を作成する
- 応用② 文庫本用のモノクロ地図を作成する
Chapter 3 地形入りタウンマップを作成する【基盤地図ビューア】
- Step1 地図データをダウンロードする
- Step2 標高データを変換する
- Step3 基盤地図ビューアにデータを読み込む
- Step4 表示設定を変更する
- Step5 PDFに書き出す
- Step6 Illustratorで読み込む
- Step7 道などのアピアランスを調整する
- Step8 文字やポイントを加えて仕上げる
- 応用① 城址公園の地図を作成する
- 応用② 渋谷周辺の地形図を作成する
Chapter 4 遠近感のある地形図を作成する【ジオ地蔵】
- Step1 地形データをダウンロードする
- Step2 標高データを変換する
- Step3 標高データを読み込む
- Step4 作成する範囲を決める
- Step5 色分け設定をする
- Step6 Photoshopで河川部分を着色する
- Step7 Illustratorに読み込んでトリミングを検討する
- Step8 Illustrator上で整える
- 応用① 高尾山の鳥瞰図を作成する
- 応用② ジオ地蔵の展望図機能を使う
Chapter 5 さまざまな図法の世界地図を作成する【QGIS】
- Step1 Natural Earth地図データをダウンロードする
- Step2 データをQGISに読み込んで,「塗り」と「線」を設定する
- Step3 国境を作成する
- Step4 緯度経度,赤道などの地理学的な線を作成する
- Step5 海の色を作成する
- Step6 モルワイデ図法に変換する
- Step7 PDFに書き出してIllustratorに読み込む
- 応用① 図法・色分けを変える
- 応用② カスタム投影法で太平洋中心の地図を作成する
Chapter 6 正確な市区町村図を作成する【QGIS】
- Step1 地形データをダウンロードする
- Step2 QGISにデータを読み込む
- Step3 表示を絞り込む
- Step4 塗り分けを設定する
- Step5 市区町村名を表示する
- Step6 PDFに書き出す
- Step7 Illustratorで読み込み調整する
- Step8 文字を並べ直す
- Step9 タイトルを入れて仕上げる
- 応用① Natural Earthのデータで都道府県地図を作成する
- 応用② 市区町村を合体して都道府県地図を作る
Chapter 7 鉄道路線図を簡単に作成する【QGIS】
- Step1 日本の鉄道路線データをダウンロードする
- Step2 QGISにデータを読み込む
- Step3 路線を色分けする
- Step4 駅のシンボルを設定する
- Step5 路線名・駅名を表示する
- Step6 PDFに書き出す
- Step7 Illustratorで調整する
- Step8 文字を並べ直して完成
- 応用① 首都圏のJR路線図を作成する
- 応用② 静岡県の道の駅マップを作成する
Chapter 8 世界の陰影地形図を作成する【QGIS】
- Step1 地形データをダウンロードする
- Step2 QGISにデータを読み込む
- Step3 標高による色分けを設定する
- Step4 色分けされていない場所を確認しておく
- Step5 ETOPO1のデータに投影法設定を割り当てる
- Step6 ETOPO1のデータから陸地のみの標高データを切り出す
- Step7 陸地のレイヤーに着色する
- Step8 陰影のレイヤーを作成する
- Step9 湖のレイヤーを作成する
- Step10 PDFに書き出す
- Step11 Photoshopで余白を消去する
- Step12 Illustratorの新規ファイルに配置する
- Step13 経緯線を描く
- Step14 プレート境界,文字を入れて完成
- 応用① 楕円形の陰影世界地図を作成する
- 応用② 国別に塗り分けられた世界地図を作成する
Appendix 地図データの利用条件(刊行物に使用する場合)
サポート
補足情報
QGISの初期設定について
最新バージョン(QGIS 3.22.7にて検証)ではQGISのインストールはとても簡単になって,P.24,25のQGISの初期設定は不要になっています。設定しなくても問題ありません。
第8章 P.167
P.167のSTEP5は,最新バージョンでは設定しなくてもよくなっています。代わりにSTEP6で,変換元CRS,ラスタのCRSを「EPSG:4326」に設定します。
国土地理院の地図データが一層利用しやすくなっています!
本書が発売されてから地図作成を取り巻く環境は着実に進歩しています。
なかでも,国土地理院のデータの利用条件が大幅に緩和されて,使いやすくなりました。具体的には地図帳や折り込みの地図に使用するのでなければ,地図帳国土地理院への承認手続きは不要になっています(ただし,出典表記は必要です)。詳細は国土地理院の案内ページをご確認ください。
Webでの制限も大幅に緩和されていますので,過去に作成した小田原城の地形図を高解像度版にして公開します。
- 小田原城の地形図(クリックすると大きく表示できます)