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2017年11月27日ミュンヘン、LinuxからWindowsへの移行を決定、移行費用は5000万ユーロ

独ミュンヘン市は11月23日(ドイツ時間⁠⁠、市議会において今年2月から議論されてきた市のITシステム刷新に関する議決を行い、2020年に現行のLinux/LibreOfficeからWindows 10/Microsoft Officeへと移行する案を正式に承認したと海外の複数メディアが報じた。対象となるPCの数は約2万9,000台、移行費用は5000万ユーロ(約67億円)以上に上ると見られる。

End of an open source era: Linux pioneer Munich confirms switch to Windows 10
Linux champion Munich will switch to Windows 10 in €50m rollout
Munich Approves €49.3m Windows 10 Migration Plan

ミュンヘン市は2003年、市職員のデスクトップ環境としてそれまで利用していたWindowsシステムをUbuntuベースの独自ディストリビューション「LiMux」に10年かけて移行を完了させライセンスコストなど含めて大幅なコスト削減を実現したことで知られれている。⁠自治体によるオープンソースの先進的な導入事例」として、これまで欧州各都市のIT施策にも大きな影響を与えてきた。

10年以上も順調に稼働してきたはずのミュンヘンのLinuxがなぜWindowsにまた逆戻りするのか。ミュンヘンはすべてのマシンをLinuxに置き換えたわけではなく、印刷など一部の業務のためにWindowsを残している。このデュアルな運用を「無駄が多い」⁠パフォーマンスや生産性が落ちる」と批判し続けてきたDieter Reiter現ミュンヘン市長らは2014年からWindowsへの移行を主張してきた。

この動きに対し、当然ながら多くの反対意見が出ており、たとえばミュンヘンのシステム運用責任者は「LinuxやLibreOfficeには技術的な問題はいっさいない。問題があるとしたら政治的な問題のみ」と発言している。また、現在は公共のシステムにおいて1社の技術だけに依存してしまう"ベンダロックイン"を避ける傾向は世界的に拡がっている。しかしそうした時流にもかかわらず、ミュンヘン市がWindowsへと再移行することはほぼ確定のようだ。

この移行プロジェクトの承認はミュンヘン市におけるオープンガバメントおよび電子政府に関する取り組みを推進する施策と同日に議決さている。約3年(2020~2023)の年月と5000万ユーロというコストをかけ、LinuxからWindowsへと2万9000台のマシンを移行する大規模なプロジェクト ―この概要を聞いて"オープン"なITのイメージをミュンヘン市に抱くのはかなり難しい気がする。

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