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2018年1月12日バルセロナ、市のシステムをオープンソースに移行することを決定

2017年にオープンソース関係者をひどくがっかりさせたニュースのひとつに、独ミュンヘンが市のITシステムの刷新と称してLinuxからWindowsへの移行を決定したことが挙げられる。もともとは欧州の地方自治体におけるオープンソース導入の成功事例として評価されていたケースであっただけに、移行の決定は世界中で大きな反響をもって伝えられた。ミュンヘンの決定はパブリックセクターにおけるオープンソースの普及にブレーキをかけるのでは…とも危惧されたが、どうやらそう悲観的になる必要もなさそうだ。

2017年12月4日、スペインの一般紙『El Pais』はバルセロナ市が同市のシステムをWindowsベースからLinuxなどオープンソースベースの環境へと移行することを決定したと伝えている。

El Ayuntamiento de Barcelona rompe con el 'software' de Microsoft | Cataluña | El Pais
(El Paisの報道を伝える英語ニュース)
City of Barcelona Kicks Out Microsoft in Favor of Linux and Open Source

このニュースによれば、バルセロナ市は移行の第一段階としてブラウザやOfficeツールなどユーザアプリケーションのリプレースを検討しているという。その後、徐々にプロプライエタリなソフトウェアをオープンソースに変更し、最終的にはオペレーティングシステムをWindowsからLinuxへと移行する予定だ。具体的にはメールクライアントとしてOutlookを利用することを廃止し、Microsoft Exchange ServerからOpen-Xchangeへ、さらにIneternet ExplorerからMozillaへ、Microsoft OfficeからOpenOffice(あるいはLibreOffice)へ、といった移行が検討されているという。また、OSに関してはWindowsからUbuntuへのリプレースが有力視されており、すでにパイロットテストとして1000台のマシン上でUbuntuを動かしている。

バルセロナ市はこのプロジェクトを2019年の春までには完了させたい意向で、今後は市のソフトウェア予算の70%を"プロプライエタリではないソフトウェア(non-proprietary software)"に当てるとしている。なお、プロジェクトはローカルの複数の事業者に発注される予定で、それと同時にバルセロナ市でも65名のソフトウェア開発者を採用するという。

バルセロナ市の「Technology & Digital Innovation」部門でコミッショナーを務めるFrancesca Briaは、今回のプロジェクトについて「納税者が払った税金は、その土地のエコシステムに開かれた、再利用可能なシステムに投資されるべき」とコメントしており、オープンソースで市のシステムを構築する重要性を強調している。現在、欧州では「税金を投入する公共のシステムはフリーソフトとしてコードが公開されるべき」と主張するキャンペーンPublic Money, Public Codeが展開されており、すでに100の組織と1万5000人を超える個人が参加しているが、バルセロナ市は同キャンペーンに賛同した最初の自治体としても知られている。

ミュンヘンで消えかかった地方自治体でのオープンソース導入だが、今回のバルセロナ市のプロジェクトでふたたびスポットが当たることになる。約1年半という公共のプロジェクトとしては比較的短い期間で、どのようにオープンソースへのリプレースを成功させていくのか、バルセロナ市の動きに引き続き注目していきたい。

郊外にあるグエル公園から眺めるバルセロナの街
郊外にあるグエル公園から眺めるバルセロナの街

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