エンジニアに捧げる起業幻想

第3回 目先の自由と社会的意義

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今回は「自由になるために起業」することと社会に対する貢献の意義・意味について取り上げます。

この連載のタイトルは「起業幻想」ですが,これは端的にいえば「好ましくないと思う起業」についての持論の展開をしています。好ましい,つまり,するべくしてする起業は別に良いのですが。

連載の第1回は,背景としての起業ブームについて触れました。

第2回となった前回は,

全部が全部というわけではないですが,エンジニアの起業の場合,とくに「自由に働きたい」「自分の理想のサービスを実現したい」という理由で起業するケースが多いような気がします」

としたうちの後者「自分の理想のサービスを実現したい」について触れました。今回は前者について触れてみたいと思います。

正直このテーマについては,連載を通してもかなり持論の割合が高いのであまり共感が得られないと思っています(笑)

自由になるための起業とは

自由になるための起業というのは,起業というより独立という言い方のほうがふさわしいかもしれません。フリーランスになるパターン,仲間数人で会社を創業するパターンなど,だいたいこじんまりしたケースが多いようです。

エンジニアが「自由に働きたい」という理由で独立し,社員数十人とか売上数億円という会社になるケースはあまりないような気がします。

自由に働きたいから起業する場合を考えてみると,一番の目的が「自由の獲得」になるため,それを実現する手段=事業内容にはさほどこだわりがないことが多く,むしろ自分が得意なジャンル=一番効率良く自分のスキルをお金に替えられる方法を採ることが多いように思います。パターンとしては,業務委託契約を結んで報酬を得る,案件を受注して納品して代金をもらう,自社サービスや媒体で広告収入や手数料収入を得る,などが多いのではないでしょうか。

そして当然ながらそれは,行き詰まることなくずっとそれでやっていけるケースもあれば,行き詰まってやはりどこかの企業に就職するという2パターンに分かれます。

筆者が考える自由のための起業の問題点

その前提で,今回述べたい内容としては,大きく2つあります。

  1. 起業・独立してもうまくいくとは限らない
  2. 自由の獲得が良い選択肢とは思えない

の2つです。とくに2つめは筆者の純粋な持論です。

起業・独立にはらむリスク

根拠のない見積もり,見切り発車は危険

まず1つめの「独立してもうまくいくとは限らない」について話します。

これはまあ一番わかりやすいテーマでもあるでしょう。

実際,⁠なんとかなるだろうと思って独立したらなんとかならなかった」というような,楽観論が通用しなかったケースを目にした方もいるのではないでしょうか。たとえば,業務委託で仕事はもらえるだろうと思って独立するケースや,前職の職場から「独立したら仕事を回すよ」と言われて独立するケース,周りから「独立すればなんとかなるよ」と言われて独立するケースなどは,予想通りにいかず,まったく仕事がないなんていう展開になることは充分にありえます。いわゆる見切り発車でうまくいかないパターンです。

また,独立する前から自分でブログなどを書いていて,そこでそこそこの広告や手数料収入が得られているようなケースでも,当面はまかなえたとしても,たとえばGoogleの検索ランキングの急落やアフィリエイトの料率低下など,自分ではコントロールできない外部要因で行き詰まってしまうこともありうるでしょう。

いずれの場合も「自由を獲得するほどのスキルがなかった」と言ってしまえばそれまでですが,こういうリスクを想定すると,単なる楽観論で独立するのはやはりオススメできません。

このように「自由を求めたけどうまくいかない」ケースは,前回お話した理想のサービスの実現を目的として起業したり独立して失敗してしまう場合と似ています。

「うまくいく」を継続できるかどうか

次にうまくやっていけてるケースについて考えてみます。うまくいくケースには,⁠スキルをうまく対価に変えている」ものもあれば,⁠単に自分を売り込むのがうまい」というものもあります。ただ,後者の場合,⁠まったく裏付けがなければ)そのうち化けの皮が剥がれるパターンが多いため,契約先を焼畑農業のように転々としていくという,自転車操業的な展開になりがちです。

また「スキルをうまく対価に変えている」⁠すなわち優秀なエンジニアが妥当な評価の元に満足のいく報酬を得ている場合でも,それが20年とか30年とかいうスパンで続くかというとこれは難しいと考えます。

スキルを対価に変えられるエンジニアの立場として,当人が考えうる将来(人生)に対する意識には,

  • 現役エンジニアとして活躍できるうちに安定した収入が得られるサービスを作り上げたい(売却などのExitも含む)
  • いずれ結婚し子どもを産んで子どもに養ってもらいたい
  • そもそも深く考えずに独立してしまった
  • いずれはまた就職すればいい=暫くの間だけ自由を獲得したい

などが考えられます。さまざまな考え・意識はあると思いますが,筆者がこれまで目にすることが多かったのは深く考えていない何かあったらまた就職すればいいと思っているケースです。企業や独立の目的,必然性がないとそうなるケースが多いように思います。

著者プロフィール

山崎徳之(やまざきのりゆき)

青山学院大学卒業後,アスキー,So-netなどでネットワーク,サーバエンジニアを経験。オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)のデータセンターである「データホテル」を構築,運営。2003年にベイエリアにおいてVoIPベンチャーであるRedSIP Inc.を創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現 ZETA株式会社)を設立,代表取締役就任(現任)。ECソリューションの「ZETA CX」シリーズとして検索エンジンやレコメンドエンジンを開発,販売している。

blog:http://blog.zaki.jp/
社長コラム:https://zetacx.com/column

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