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第295回 リリースノートの使い方

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先週木曜にUbuntu 13.10がリリースされました。そこで今回は新しいリリースにアップグレードしたり,新しいリリースをインストールする前にまず行う「リリースノートの確認」とそれに伴う既知の問題点の調べ方について解説します。

リリースノートの位置づけ

Ubuntuは誕生から9年間,19回にわたるリリースにおいて,2回の例外(6.06が8ヵ月で,6.10が4ヵ月)を除いて6ヵ月ごとのリリースを守ってきました。リリーススケジュールを優先させる都合上,リリース前に発見された不具合であっても修正されずにリリースされることがUbuntuにはままあります。もちろん影響範囲が大きい不具合については,リリース前に対応できるように開発リソースの配分が行われます。しかしながら最終的なリリース日程を変えることはほとんどなく,リリース後のアップデートで修正することが一般的です。

そのため,Ubuntuにおけるリリースノートは新機能や仕様変更の案内だけでなく,リリース時点で存在する既知の不具合をユーザに連絡し,場合によってはアップグレードのタイミングを遅らせることを促す,という重要な役割も存在します。

これが,リリースされる度に「まずはリリースノートを読みましょう」と何度も周知される理由の1つです。

リリースノートができるまで

Ubuntuのリリースノートには,特別に決まった作成過程は存在しません。過去の例を振り返ってみると,まずベータリリースあたりで,前回のリリースノートを複製し,古い記述を削除,バージョン名を修正します。その後,リリース直前まで各チームが大きな新機能や機能変更情報を追加したり,不具合情報を追記するという形が一般的です注1)⁠

記述する情報の取捨選択は,各チームに任されます。記述内容も記述者任せで,とくに「既知の問題点」については,チケットの説明やタイトルをかなり大雑把に要約しただけのものが大半です。12.04の頃にはリリースノート用のプロジェクトを立てて,リリースノートに記述が必要そうな不具合はそのプロジェクトにもチケットを登録し,チケットの中でリリースノート用の文章を考える,という運用も行われていましたが,13.10の時はとくに使われませんでした。

つまり残念なことに,リリースノートの品質はリリースによってかなり波が存在します。

本家のリリースノートは,Wikiで作成されています。大抵の場合は開発コード名の下に「ReleaseNotes」をつけた名前が使われます。たとえば先週リリースされたUbuntu 13.10(コード名:Saucy Salamander)の場合は,次のような名前で作成されました。

https://wiki.ubuntu.com/SaucySalamander/ReleaseNotes

Ubuntu以外のフレーバーについては,フレーバー毎の方針に任せています。Kubuntuは別サイトでリリースノートを作成していますし,Xubuntuなどは上記リリースノートのサブページを作成しています。

注1)
以前はアルファやベータといったマイルストーンリリースが存在したため,そのタイミングごとに情報が大きく更新されていました。最近の開発中のUbuntuはDaily buildイメージを使うことが一般的になってきたこともあり,他のフレーバーはともかくUbuntuについては,リリースの数日前に一気に追加されることのほうが多いようです。

日本語版リリースノート

Ubuntuのリリースノートの重要性を鑑みて,Ubuntu Japanese Teamではできるだけ早く日本語版のリリースノートを提供できるよう,リリース日は昼夜を問わず作業を行っています注2,注3)⁠

翻訳は正式なリリースアナウンスが流れてから開始しています。これはリリースアナウンスが流れる前後はリリースノートがかなり頻繁かつ大幅に更新されることが理由で,翻訳リソースをできるだけ最新のリリースノートに投入するために,そのような措置を行っているのです。

日本語版のリリースノートは大抵の場合,本家ページのサブページとして作成しています。

https://wiki.ubuntu.com/SaucySalamander/ReleaseNotes/Ja

さらに日本語版のリリースノートにはただの本家の翻訳だけではなく,⁠日本語翻訳版独自の記述」として,日本語環境にまつわる情報も掲載しています。Ubuntu上で日本語を使う人にとって必要となる機能(とくに日本語入力やフォントまわり)の仕様変更や不具合,回避策の手順などが詳しく書いてありますので,新しいリリースへのアップグレード前には必ず読むようにしておきましょう。

図1 とくに重要な「日本語翻訳版独自の記述」

図1 とくに重要な「日本語翻訳版独自の記述」

リリースノートの翻訳自体はWikiにログインできるアカウントがあれば誰でも参加可能です。ただし通常のUIやドキュメントの翻訳と比べると,英語ネイティブでない人が書いた査読を経ていない文章,⁠とりあえず注意書きとして書いた」という感じのメモ,不具合チケットのコメントからの抜粋,などを書いた人の意図や元々のチケットの内容を調べ,推測しながら翻訳しなくてはならないため,難易度はかなり高くなります。いきなり翻訳をはじめるよりは,まずは他の人が翻訳した内容が正しいかどうかの確認からはじめると良いでしょう。

翻訳の手順はリリース毎に若干異なります。公式のWikiページはリリース直後はとてもとても,とっても重いので,一時的に別のWikiにデータを退避して行うこともあります。このため翻訳を行いたい場合は,はじめに日本語版リリースノートのどこかに書いてある手順や注意書きを参照してください。

この「注意書き」は,Wikiページの上部もしくはソースに書くようになっています。通常のページの上部や下部に手順や注意書きが見当たらないようなら,ページのヘッダにある「その他のアクション>Wikiテキスト」からページのソースを表示してください。⁠編集」を選んでしまうと一時的にページの編集がロックされてしまいますので,本当に編集するとき以外は使わないようにしてください。もし間違って選んでしまったら,編集ページにある「キャンセル」ボタンを押しましょう。

もちろんリリース後であっても,誤字・脱字を見つけた時はUbuntu Japanese Teamのメーリングリストなどで報告してもらえると大変助かります。

注2)
決して比喩的表現ではなく,Ubuntuのリリースタイミングが日本時間で夜半過ぎから深夜帯になることが多いので,深夜帯に作業ができる人は夜に,その時間帯は難しい人も明けた次の日の朝やお昼休みといった普段の日常の余暇を使って作業しています。
注3)
リリース毎にほんとうにいろいろな方にリリースノートの翻訳やレビューを手伝っていただいているおかげで,比較的早く日本語版を提供できています。もしブログやSNSでUbuntuの新リリースに言及するときは,日本語版のリリースノートについても触れてもらえると,次回のリリース時のモチベーションにつながるので,ぜひよろしくお願いいたします。

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。

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