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第519回 ubuntu-reportは何を・何時送信するのか?

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送信するデータと収集元

実際に送られたデータは~/.cache/ubuntu-report/ubuntu.18.04に保存されます。最後のファイル名はディストリビューション名やバージョンに依存します。またubuntu-report showコマンドを使うことで,再収集も可能です。

{
  "Version": "18.04",
  "OEM": {
    "Vendor": "Panasonic Corporation",
    "Product": "CF-AX2QEBJR"
  },
  "BIOS": {
    "Vendor": "American Megatrends Inc.",
    "Version": "V1.11L14"
  },
  "CPU": [
    {
      "Vendor": "GenuineIntel",
      "Family": "6",
      "Model": "58",
      "Stepping": "9"
    }
  ],
  "Arch": "amd64",
  "GPU": [
    {
      "Vendor": "8086",
      "Model": "0166"
    }
  ],
  "RAM": 3.9,
  "Partitions": [
    122,
    0.5
  ],
  "Screens": [
    {
      "Resolution": "1366x768",
      "Frequency": "60.03"
    }
  ],
  "Autologin": false,
  "LivePatch": false,
  "Session": {
    "DE": "ubuntu:GNOME",
    "Name": "ubuntu",
    "Type": "x11"
  },
  "Timezone": "Asia/Tokyo",
  "Install": {
    "Media": "Ubuntu 18.04 LTS \"Bionic Beaver\" - Release amd64 (20180426)",
    "Type": "GTK",
    "PartitionMethod": "use_device",
    "DownloadUpdates": true,
    "Language": "ja",
    "Minimal": false,
    "RestrictedAddons": false,
    "Stages": {
      "0": "language",
      "1": "language",
      "63": "console_setup",
      "106": "prepare",
      "124": "partman",
      "131": "start_install",
      "143": "timezone",
      "153": "usersetup",
      "172": "user_done",
      "527": "done"
    }
  }
}

送信するデータについてもう一度確認してみましょう。

  • ハードウェアとシステムの情報
  • インストール時・アップグレード時に設定した項目
  • インストール時・アップグレード時の各画面で要した時間

あくまで改善を支援する目的から,個人を特定しうるセンシティブな情報は収集しないようになっています。

ハードウェアとシステムの情報はシステム上のファイルやコマンドから情報を取得しています。

PCベンダーや製品番号,BIOSバージョン /sys/class/dmi/id以下の各種ファイル
CPUの情報 /proc/cpuinfo
CPUアーキテクチャー dpkg --print-architectureの結果
GPUの情報 lspci -nの結果からPCI Device Classが0x0300の情報のみ抽出
メモリーの情報 /proc/meminfo
パーティション dfコマンドから/dev以下のものだけをGB単位で表示
画面解像度 xrandrの結果
自動ログイン設定 /etc/gdm3/custom.confの「AutomaticLoginEnable」の状態
LivePatch設定 /var/snap/canonical-livepatch/common/machine-tokenの有無
セッション情報 環境変数XDG_CURRENT_DESKTOPXDG_SESSION_DESKTOPXDG_SESSION_TYPE
タイムゾーン /etc/timezoneの中身

インストール時に設定した項目はその名のとおり,インストーラーであるUbiquityで設定した項目です。インストール時の各画面で要した時間は,インストーラーのダイアログにおいて「次へ」を押してから次の「次へ」を押すまでの経過時間のリストです。インストーラーが計測した情報は「/var/log/installer/telemetry」に保存しています。Ubiquityには3月28日に取り込まれたので,それ以前のテスト版をインストールした環境であれば存在しないかもしれません。

アップグレード時,つまりUbiquityを使用しない時は「/var/log/upgrade/telemetry」に何がしかの記録が行われる予定です。こちらについてはdo-release-upgradeへの変更が提案されていますが,5月上旬時点ではまだ反映されていない状況です。つまり17.10以前のマシンからのアップグレードの際は,アップグレード関連の情報は通知されません。

データを送信しないようにするには

この手の情報収集にはユーザー(もしくは当事者ではないけれども議論は大好きな人)の反発が付き物です。収集している情報がオープンでないことは論外ですが,いかに「個人を特定できる情報はマスクしてある」とか「ユーザーエクスペリエンスを改善するために」と言われても,集めること自体が「気持ち悪い」とか「何かひっかかる」と感じる人はそれなりにいます。

そもそも集めたデータがどう使われるのかわかりにくいというのも不安の一因です。最近だとFacebookにおける「情報の使われ方」が大きな問題となりましたし,Ubuntu/Canonical自身も過去にAmazon Lensの組み込みの際にユーザーの反発にあいました(参考:Topicsの2012年9月28日号)⁠今回のような情報だと,他のユーザーも気軽にアクセスできるようにすれば不安はもう少し和らぐとは思うのですが,どうやらその仕組みはないようです ※5)⁠

※5
Desktop Teamによる報告書の形で集計結果を知らせるとのことなので,生データにアクセスできるようにはならないものと思われます。

ただしビジネス上はもちろんのこと開発において,利用者の統計情報を集めたくなる気持ちも分かります。また「反発しない人はそもそも声をあげない」ことを考慮すると,大多数の人にとっては多少の情報収集は許容範囲内(もしくは無関心)であろうことも予想に難くないでしょう。

それを踏まえた上で「集めてほしくない人」にとっての最低限の妥協ラインは,⁠収集・送信しないよう簡単に設定できる仕組みが存在すること」であると思われます。この点においてubuntu-reportは残念ながら十分には対応されていません。

しかしながら「収集・送信しない」設定をまったくできないというわけでもありません。ubuntu-reportでは送信結果を~/.cache/ubuntu-report/ubuntu.18.04に保存しています。このファイルをあらかじめ作っておくと,Welcome to Ubuntuはエラーコンソールに「metrics from this machine have already been reported and can be found in: ファイル名」を表示して何も送らないのです。

ファイルの有無がポイントなので,中身はなんでもかまいません。どうしても気になるようなら,Welcome to Ubuntuが起動した時点で「Ctrl-Alt-t」でGNOME端末を起動して,以下のコマンドを実行すると良いでしょう。

$ egrep "ID=|VERSION_ID=" /etc/os-release
ID=ubuntu
VERSION_ID="18.04"
$ touch ~/.cache/ubuntu-report/ubuntu.18.04

なおファイル名の「ubuntu」「18.04」の部分は/etc/os-releaseのIDVERSION_IDがそれぞれ該当します。Ubuntu以外のフレーバーを使っている場合は適宜読み替えてください。

ファイルができたあとであれば,⁠次へ」を押しても「情報は送信済み」と判断されて,何も送信されないはずです。将来に渡ってこの挙動が維持される保証はありませんが,とりあえずの対応としては利用できることでしょう。

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。

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