Ubuntu Weekly Recipe

第576回 GPD MicroPCにUbuntuをインストールする

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6月後半ぐらいから,GPDがクラウドファンディングを行っていたGPD MicroPCが出資者尾の元に届き始めました。今回はMicroPCにUbuntuをインストールする方法を紹介しましょう。

GPD MicroPCとは

GPD MicroPCはGPD社が開発する小型のノートPC(UMPC)シリーズのひとつで,第543回第544回で紹介したGPD Pocketの派生品です。

GPD Pocketやその後継機種であるGPD Pocket2,そして最近クラウドファンディングを開始したGPD P2 Maxなどが,一般的な小型PCとしての位置づけなのに対して,GPD MicroPCは「プロフェッショナル向けポケットパソコン」を謳っています※1)⁠

※1
クラウドファンディングは終了していますが,MicroPCそのものは国内正規代理店や家電量販店などで購入できるようになる見込みです。

具体的には1GbEに対応したRJ-45(8P8C)やRS-232用のEIA-574コネクタ,小型PCとしては珍しい3つものUSB Aコネクタなど,最近のPCでは省かれがちなさまざまなインターフェースを備えていることが特徴です。耐衝撃も従来機種より強度になっており,eMMCの代わりにM.2 SSDを採用しています。ストラップホールが付いているのも他にはない特徴ですね。

その代わりなのかどうかはわかりませんが,GPD Pocket 2に比べるとディスプレイサイズは7インチ(1920x1200)から6インチ(1280x720)と小さくなっていますし,タッチパネルも非対応になりました。重量は減っているものの,バッテリー容量も減っています。

GPD MicroPCのスペックは次のとおりです。

CPU Intel Celeron N4100(64bit,4コア4スレッド,1.1GHz/2.4GHz)
Memory 8GiB LPDDR4 2133 MHz
Storage 128GB M.2 SATA SSD(BIWIN製)⁠microSDXCカードリーダー(Realtek製)
GPU UHD Graphics 600
Display 720x1280,6inch,タッチパネル非対応
Ethernet Realtek RTL8168
Wi-Fi 2.4GHz/5GHz,802.11 ac/b/g/a/n(Intel Wireless 3165)
Bluetooth Bluetooth 4.2(同上)
Sound Realtek ALC269VC,モノラルスピーカー・マイク
Battery 3100mAh※2
Connectors USB Type-C(USB 3.1 Gen 1,DisplayPort Alt Mode,PD)⁠HDMI 2.0,
USB Standard-A(USB 3.1 Gen 1)x3,ヘッドフォンジャック
Size 153mm x 113mm x 23.5mm,440g
※2
公式サイトでは3100mAh x 2との表記がありますが,Linuxからだと3100mAh x 1のように見えます。

キーボード左上には右クリック・スクロール・左クリックボタンが,右上にタッチパッドが配置されています。このため両手で抱えるようにして持つことで,親指のみでの操作が可能です。

図1 小型PCの命運を左右するキー配列

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キーボード自体は既存のGPD Pocket/Pocket2に比べるとしっかりした作りに見えます。英字のキー配置も比較的まともなので,キー入力に迷うこともないでしょう。なお,タッチパッドを配置するためか,数字と記号類も2段になっています。これに関しては,そのまま6以降がそのままずれただけなので,そこまで違和感はないはずです。一応左手親指だけで数字を入力できる仕組みのようです。

ただしサイズの都合上タッチタイピングはかなり難しいです。指の太さ次第ではありますが,タッチパッド操作と同じく両手でホールドしつつ親指でタイプする方法がベストだと思われます。

ちなみにキーボードにはバックライトが備わっています。よって暗いところでもキーを確認できる仕様です。

Ubuntuの起動とインストール

GPD MicroPCは現状Ubuntuをサポートしていません。しかしながら,将来的にUbuntuをサポートする予定ではあります。

とはいえ「ただのPC」なので,今の段階でもUbuntuが起動しないわけではありません。というわけで実際にUbuntuをインストールしてみましょう。

今回はUbuntu 19.04を使います。また,Ubuntu MATEやXubuntuなど他のフレーバーでもこれから説明する方法で起動できます。理論上は18.04や現在開発中の19.10でも同じです。

ストレージのサイズが大きい(128GiB)ので,Windowsとのデュアルブートも可能です※3)⁠ただし今回はWindowsを消して,クリーンインストールすることにします。なお,1月ぐらいに公開された分解動画を見る限り,⁠M.2 Type 2242(B & M Key)⁠のようなので,一般的なM.2 SATAカードで換装が可能だと思われます。このあたりeMMCとは異なるメリットですね。

※3
ちなみにIndiegogoのコメントを見る限り,届いた直後の状態でも,Windowsでのライセンス認証に失敗するケースがあるようです。もし認証に失敗した場合は,GPDに問い合わせてください。

ポイントは次の3つです。

  • 2019年6月時点のUbuntuはいずれもそのままでは画面が表示されません(ディスプレイを認識できません)⁠
  • nomodeset(safe graphics mode)を利用することで上記は回避可能ですが,左に回転してしまいます。つまりディスプレイから見るとポートレートモードで表示されます。
  • より新しいカーネルとパッチを導入すればいずれも解消可能です。

言い方を変えると,ディスプレイ以外に見た目上の大きな問題は見受けられませんでした。

まずはUbuntu 19.04のリリースイメージ(ubuntu-19.04-desktop-amd64.iso)をダウンロードします。ダウンロードしたイメージをddコマンドや第488回でも紹介されているEtcherでUSBメモリーなどに書き込みましょう。

作成したUSBメモリーをGPD MicroPCに接続し,GPD MicroPCを起動します。

GPDのロゴが表示されたらFn+7(F7)キーを押し続けてください※4)⁠起動デバイスの選択画面(Please select boot device)が表示されるので,カーソルキーで「UEFI: デバイス名, Partition2」を選択します。⁠デバイス名」の部分はおそらくUSBメモリーのベンダーなどが表示されるはずです。もし表示されない場合は,USBメモリーを接続するポートを変更して再起動してください。

※4
Fnキーと7キーを押し続けます。もしくはESCキーを押し続けることで表示されるBIOSメニューからブートデバイスを選択してもかまいません。今回はBIOSメニューも起動デバイスの選択画面も,きちんとランドスケープの画面になっています!

GRUBメニューから縦置きの画面になってしまいます。カーソルキーをうまく駆使して「Try Ubuntu without installing (safe graphics)を選択してください。⁠safe graphics」のほうを選ぶのがポイントです。⁠safe graphics」ではないほうを選ぶと,画面が暗転したまま何も表示されません。その場合は一度強制的に電源を切って,再度起動し直してください。

Liveセッションが起動するので,Wi-Fi・キーボード・タッチパッド・サウンドあたりの動作を確認します。画面の回転はサポートしていないので注意が必要です※5)⁠画面が縦置きのままでは使いづらいので,インストールしてから動作を確認する手順にしても良いかもしれません。

※5
それどころかシステム設定(Settings)から「ディスプレイ(Displays)⁠を選択するとエラー終了してしまいます。しかも,その後システム設定を起動しようとするとディスプレイ設定を表示しようとしてまたエラー終了してしまいます。別の設定を表示するには,一度端末からgnome-control-center mouseなどと実行し,ディスプレイ設定以外の画面を表示してください。

特に問題なければ,デスクトップ上の「Install Ubuntu 19.04」をダブルクリックしてインストールを開始しましょう。マウスカーソルを合わせるのが面倒なら,⁠Super + 1」を入力するとインストーラーが起動します。言語は日本語を選択してもかまいませんが,キーボードレイアウトは「英語(US)⁠を選びます。

図2 ポートレート表示だと
インストーラーが見切れてしまう

画像

縦置きな上に短辺の解像度が720pxしかないため,インストーラーが見切れてしまいます。この状態でのインストールはなかなか難儀ではありますが,マウスとタブキー,それにこれまでUbuntuをインストールしたときの記憶を駆使して対処してください。皆様のUbuntuへの愛が問われています※6)⁠

※6
愛とかそういう重いのはちょっと……という方は,素直にそのうちリリースされるであろうUbuntu MATEファームウェアをお待ちください。

ポイントはウィンドウタイトルをAlt+左 クリックで移動できることです。もしくはウィンドウ上でAlt+F7を押すとウィンドウグラブモードに移行するので,タッチパッドやカーソルキーで移動した上で左クリックもしくはEnterキーで位置を確定できます。

あとは普通のUbuntuとインストール方法は一緒です。ただしインストールが完了しても再起動してはいけません」⁠

再起動するかどうか問い合わせられたら,⁠試用を続ける」を選択してください。これは再起動前にGRUBの設定を「safe graphics」モードに変更する必要があるためです※7)⁠

※7
理論上は再起動後にGRUBメニューに入れば再設定可能ではあるのですが,メニューのタイムアウトが0に設定されているためか,メニューを表示できませんでした。もし誤って再起動した場合は,もう一度Live USBで起動したのち,端末から$ sudo mkdir /target && sudo mount /dev/sda2 /targetと実行してから,本文中の手順を実行してください。

Ctrl-Alt-Tで端末を起動した上で,次のコマンドを実行してください。

$ sudo sed -i "s/splash/splash nomodeset/g" /target/boot/grub/grub.cfg
$ sudo sed -i "s/splash/splash nomodeset/g" /target/etc/default/grub

本来であれば/etc/default/grubを編集してupdate-grubを実行するのが正しいやり方ではありますが,今回のようなLive USB環境だとupdate-grubがきちんと動くように設定するのに手間がかかります。そこで「とりあえずの措置として」起動用のgrub.cfgを直接編集しています。また,起動後にupdate-grubを実行した時のために,/etc/default/grubも合わせて更新しています。

あとは通常どおりシステムをシャットダウンしてください。Liveセッション終了時にUSBメモリーを取り外すよう指示されるので,取り外した上でEnterキーを入力しましょう。

著者プロフィール

柴田充也(しばたみつや)

Ubuntu Japanese Team Member株式会社 創夢所属。数年前にLaunchpad上でStellariumの翻訳をしたことがきっかけで,Ubuntuの翻訳にも関わるようになりました。