最先端のエフェクトツール「VFX Graph」魅力とは
Unity VFX Graph マスターガイド』出版記念会レポート

世界中のエフェクトデザイナーが注目している、最先端のエフェクトデザインツール「VFX Graph」とは何なのでしょうか。今回は「VFX Graph」の魅力・需要について迫るべく、2023年9月28日にオフライン開催されたクリーク・アンド・リバー社主催の『Unity VFX Graph マスターガイド』出版記念会を取材しました。

Unity VFX Graph マスターガイドは2023年9月発売のUnityのパーティクルシステムであるVFX Graphの解説書で、同システムの解説書は唯一無二であり、業界待望の書籍です。イベントでは、秋山高廣氏(⁠⁠Unity VFX Graph マスターガイド』著者)と高橋啓治郎氏(ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社 アドボケイト)によるコラボレーションが実現。デモンストレーション・ディスカッション・懇親会など、参加費無料とは思えないほどの盛り沢山な内容でイベントは大盛況でした。

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登壇者紹介

はじめに今回のイベントの登壇者を、イベントページから引用して紹介します。

秋山高廣氏(『Unity VFX Graph マスターガイド』著者)
株式会社デジタルフロンティアにて映像系のエフェクトデザイナーとして勤務したのち、フリーランスのゲームエフェクトデザイナーとして活動を開始。2017年11月に合同会社Flypotを設立。現在はクリーク・アンド・リバー社が運営するクリエイティブアカデミーの講師としてゲームエフェクトを教える傍ら、書籍の執筆などをおこなっている。
高橋啓治郎氏(ユニティ⁠テクノロジーズ⁠ジャパン株式会社 アドボケイト)
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社 アドボケイト。大手ゲームメーカーに10年間在籍の後、独立。フリーランスのプログラマーとしてiOS/Androidアプリの開発に携わりつつ、Unityを使っての個人制作や、書籍の執筆等を手がける。現在はユニティ・テクノロジーズ・ジャパン株式会社にアドボケイトとして所属し、国内におけるUnityの伝導活動に勤しんでいる。

秋山氏による実演デモンストレーション

秋山氏によるデモンストレーションでは、書籍『Unity VFX Graph マスターガイド』の内容に沿う形で、ツールの使い方の講義が行われました。

参加者の中には、秋山氏のレクチャーを聞きながら持参した書籍に目を配り、デモンストレーションの内容と照らし合わせながら視聴している人もいました。

秋山氏による VFX Graphの実演

秋山氏は書籍の解説を交えながら、スクリーンに映し出された実演に沿って細かく説明をしていきました。

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たとえば上記の実演では、TEXTURE_2D_ARRAYで処理していることや、配列の中のテクスチャをVFX Graph側で番号として指定することで、指定した模様を取れることを紹介しました。配列は後から自由に増やせるため、あとからテクスチャを増やしても対応できます。このワークフローは融通が利きやすいと言及していました。

質問コーナーでは参加者から鋭い質問も

デモンストレーション後には質問コーナーも設けられました。

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会場から鋭い質問もありました。

「デモの一つで、リング状の5つの目盛りのうち、1つを伸ばして、そこにテクスチャを貼られているように見受けられました。であるとしたら、同じようなことがShader Graphでも実現できると感じました。VFX Graphでやるメリットは何があるのでしょうか。」⁠参加者)

この質問に対して秋山氏は、次のように答えています。

「正確には、あれはテクスチャを貼っているのではありません。あの目盛りの1つ1つがパーティクルになっていると考えていただければ分かりやすいでしょう。⁠VFX Graphで)パーティクルの形で1つ1つを並べています。テクスチャでやると、先ほど実践したような、5個ごとに赤にするというのができません。またリング状の部分にテクスチャを貼ってしまうと、微妙に目盛りが外側に少し広がってしまいます。それが個人的に嫌なのでこのようにしています」⁠秋山氏)

秋山氏と高橋氏によるパネルディスカッション

ここからはパネルディスカッションや懇親会で得られた情報をお届けします。

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VFX Graphの魅力とは?

高橋氏はVFX Graphの魅力について、次のように語っていました。

「今までのパーティクルエフェクトシステムとは、プリセット(あらかじめ決められた仕組み)があって、その上でパラメータを調整して動きを作っているというものでした。一方、VFX Graphについては、プリセットの中身をノードグラフを使って自由にデザインできます。できることの幅が格段に広くなっており、自分でプリセットを作る楽しさがあります。

工夫の楽しさを味わえる点、作れるモノの選択肢が広がる点が、今までのシステムとの最大の違いです。⁠自由度が高くなっている分)上級者向けではあるかもしれません。決まりきったパラメータではなく、自分で設計を考えて実装することになるので、知識や技術が必要となるでしょう。ただ、今回の書籍『Unity VFX Graph マスターガイド』に載っている知識をベースにして、サンプルを拡張する形での制作からスタートすれば、そこまで難易度の高さは感じないでしょう。VFX Graphは(今までできなかったことが実現する)使っていてとても楽しいシステムです」⁠高橋氏)

VFX Graphの需要とは?

また、高橋氏はVFX Graphの需要について、次のようにコメントしています。

「もう1つのVFX Graphの特徴として、今までのバーティクルシステムはCPUで動いていたのですが、VFX GraphではGPUを使ってバーティクルシステムを動かしています。GPUの強力なパワーを使って大量のバーティクルを動かせるので‟GPUの力を使って、もっと魅力的なコンテンツを作りたい⁠という制作現場では必要とされてくるでしょう。

スマートフォンなどのモバイルデバイス、PC問わず、今はGPUの方が圧倒的に計算能力を持っている時代です。そういった技術の進歩に適応していくためにも、VFX Graphの技術は必須だと考えています。現状、VFX Graph普及のボトルネックとなっているのは、極端に古いデバイスの存在です。6年前のAndroidスマートフォン向けのコンテンツを作ろうとすると、VFX Graphでは対応していないケースがあるため、古いデバイスとの互換性を考慮して作るとなると、ちょっとVFX Graphは使いづらいでしょう。ただ、徐々にこれから古いデバイスがリプレイスされて、みんなが新しいデバイスを持つようになると、それに伴ってVFX Graphの需要は増していくと考えています」⁠高橋氏)

「エフェクトの面白さは余韻にある」

秋山氏はエフェクトデザイナーという仕事について、次のように見ているそうです。

「私にとって、エフェクトデザイナーという仕事の面白さは‟エフェクトの余韻を作ること⁠だと考えています。余韻とは(ゲーム内のキャラクターの必殺技などの)エフェクトが終わった後のキラキラした光などのことです。派手な部分だけではなく、そういう余韻みたいな部分も見られることが多く、きちんと作り込んでおくことが大事です。

余韻も意識したエフェクトを作り込めるようになると、クリエイターとして一段レベルが上がるはずです」⁠秋山氏)

「フリーランスのデザイナーは自己研鑽の時間を意識的に作らないといけない」

フリーランスのデザイナーについて必要なことについても、話は広がりました。

高橋氏:フリーランスのデザイナーに必要なことは、自分で意識して「自己研鑽の時間」を作るということです。会社所属のアーティストであれば、プロジェクトとプロジェクトの間で仕事量が減る時期があるので、その時期に新しいツールやエフェクトを研究する余裕があるでしょう。一方、フリーランスは現場に赴くと詰められるだけ仕事を詰められてしまうので、なかなか新しいことに取り組むことが難しくなります。自分で意識して時間を作る必要が出てきますね。

秋山氏:私が(今回のような)書籍を書いてるのも自己研鑽の側面があるのかもしれません。書籍にまとめるからには、正確な情報を書かないといけませんので、自分の中にあるノウハウを整理して、⁠体系化した)知識として言語化しています。書籍にまとめるという行為も、私の中では自己研鑽の一環でもあるのかなと思います。

高橋氏:たしかに、今回の書籍は秋山さんの知識をすべて詰め込んだような内容ですね(笑)

まとめ

パネルディスカッションは時折、参加者からの質問や意見も受け付けながら、終始和やかなムードで進みました。VFX Graphの使い方や魅力を知れるだけでなく、フリーランスデザイナーとしての仕事のスタンスやエフェクトデザイナーという仕事の面白さを再確認できるイベントでした。

なお懇親会では、当日に書籍を持参した人への「秋山氏のサイン会」が開催され、長蛇の行列ができていました。

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