知りたい!サイエンスシリーズ脳とグリア細胞
―見えてきた!脳機能のカギを握る細胞たち―

書籍の概要

この本の概要

なぜヒトの脳には,グリア細胞がニューロンの10倍も存在しているのでしょうか。グリア細胞研究によって,これまでニューロンだけでは不明だった脳機能が解明されてきました。例えば,シナプスの可塑性という脳の最も重要な部分や,脳血流量の調節,ニューロンの修復,神経伝達物質の除去,ニューロンの興奮調節,記憶などの脳の情報処理などにもグリア細胞が関与していたのです。そして進化した脳ほどグリア細胞の存在比が高いのです。本書は,脳のグリア細胞の研究で明らかにされてきた成果を,一般読者向けに,会話調でわかりやすく解説した脳の入門書です。脳研究の第一線で活躍する著者による新事実が満載です。これまでにない脳の面白さと深さを再認識できます。

こんな方におすすめ

  • 脳に興味のある人
  • ニューロンやグリア細胞に興味のある人

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「脳とグリア細胞」
脳の能力は,ほんの一部しか分かっていません。というのは,脳には神経細胞(ニューロン)以外にも,情報処理にかかわる細胞群があることが明らかになってきたからです。

目次

第1章 プロローグ

  • 1-1 陰の主役

第2章 私がグリア細胞の存在を意識した理由

  • 2-1 カエルの脊髄標本は脳研究への入り口
  • 2-2 ニューロンの電気的活動
  • 2-3 グリア細胞との出会い
  • 2-4 グリア細胞との再会
  • 2-5 グリア細胞との三度目の出会い
  • 2-6 グリア細胞の研究なしには脳の完全理解はあり得ない

第3章 グリア細胞を理解するための脳の基礎知識

  • 3-1 基礎知識:細胞膜の構造はまるでシャボン玉
  • 3-2 基礎知識:膜電位は生きている細胞の証拠
  • 3-3 基礎知識:ニューロンが「活動する」仕組み
  • 3-4 基礎知識:細くて抵抗が高い神経線維を使って情報を確実に運ぶ驚くべき仕組み
  • 3-5 基礎知識:生命現象を解き明かす手がかり --生物電気
  • 3-6 基礎知識:ニューロンの電気的活動を調べる方法
  • 3-7 基礎知識:脳の情報伝達と処理が行われる場所
  • 3-8 基礎知識:脳を研究するための多様な方法
  • 3-9 基礎知識:グリア細胞の新しい働きを見いだした研究法

第4章 脳の中にいるグリア細胞たち「グリア細胞とひとまとめにして欲しくない」

  • 4-1 グリア細胞の仲間たち
  • 4-2 グリア細胞の生い立ち
  • 4-3 スターになり損ねたアストログリア
  • 4-4 オリゴデンドログリアという不思議な細胞
  • 4-5 ちょっと変わったミクログリア

第5章 グリア細胞の働きへの不当な評価と誤解

  • 5-1 アストログリアが脳研究の対象から外された理由
  • 5-2 私たちが悪役だというのは誤解です
  • 5-3 アストログリアの姿についての大きな誤解
  • 5-4 ミクログリアは善玉か悪玉か

第6章 グリア細胞は働き者

  • 6-1 アストログリアの形が意味すること
  • 6-2 聞いて下さい私たちの素晴らしい働きを
  • 6-3 アインシュタインの天才は私たちのおかげ?
  • 6-4 オリゴデンドログリアは律儀者
  • 6-5 忙しいミクログリアたち

第7章 グリア細胞のもっとすごい働き,ニューロンとの情報交換

  • 7-1 カルシウム計測が私たちにスポットライトを当ててくれた
  • 7-2 アストログリアの機能の再々発見
  • 7-3 アストログリアとニューロンとの密接な関係
  • 7-4 私たちとニューロンとのコミュニケーション
  • 7-5 物質を遊離する方法はいくらでもある
  • 7-6 トライパータイトシナプスという概念
  • 7-7 アストログリア間でも情報の伝達ができるのです

第8章 私たちは脳機能発現にも直接関与しています。

  • 8-1 ニューロンに発現するグルタミン酸受容体とその性質
  • 8-2 シナプス可塑性とカルシウム
  • 8-3 NMDA受容体とAMPA受容体の関係
  • 8-4 シナプス可塑性にアストログリアは関与するか
  • 8-5 アストログリアの長期増強現象へ関与の可能性
  • 8-6 シナプス回路活動の安定性を維持
  • 8-7 オリゴデンドログリアの魅力
  • 8-8 学習によって神経軸索が太くなる?
  • 8-9 オリゴデンドログリアの働きは奥深い!

第9章 脳の障害とグリア細胞

  • 9-1 虚血性脳障害とグリア
  • 9-2 アストログリアは本当に虚血に抵抗性が高いのか
  • 9-3 脳浮腫とアストログリア
  • 9-4 アストログリアは本当に悪玉ではないのか?
  • 9-5 虚血時のミクログリアとマクロファージ
  • 9-6 ミクログリアと脳の老化
  • 9-7 オリゴデンドログリアはひ弱な細胞

第10章 神経変性疾患とグリア細胞

  • 10-1 アルツハイマー病とミクログリア
  • 10-2 アルツハイマー病とアストログリア
  • 10-3 パーキンソン病とグリア細胞
  • 10-4 筋萎縮性側索硬化症(ALS)へのミクログリアの関わり
  • 10-5 ミクログリアと神経因性疼痛
  • 10-6 多発性硬化症
  • 10-7 てんかんとアストログリア

第11章 精神疾患とグリア細胞

  • 11-1 統合失調症
  • 11-2 うつ病でもアストロサイトが減っているらしい

第12章 グリアたちの声を聴いて反省すること,考えること

  • 12-1 脳研究はこれから始まる
  • 12-2 諸外国の事情と日本の現状
  • 12-3 ニューロ─グリオロジー
  • 12-4 ニューロン至上主義研究への批判

第13章 エピローグ

著者プロフィール

工藤佳久(くどうよしひさ)

1939年愛知県名古屋市生まれ。東京薬科大学名誉教授。著書「神経生物学入門」「神経薬理学入門」(いずれも朝倉書店),「生命科学への誘い」(分担執筆,東京化学同人)。専門は神経生物学,特にグリア細胞の機能解析。画像処理による脳機能解析。