人間に勝つコンピュータ将棋の作り方

[表紙]人間に勝つコンピュータ将棋の作り方

四六判/304ページ

定価(本体1,880円+税)

ISBN 978-4-7741-5326-1

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書籍の概要

この本の概要

「人間対コンピュータ」どちらが能力が上なのか? 創造性の点においてコンピュータは人間より劣るもの,と思われるが将棋ではどうなのか。清水女流王将とあから2010との対局はさまざまな反響を呼び起こした。本書は,単に人間に勝つ,というよりも「人間に勝てるコンピュータ」を人間がどのように開発していったのか,その過程を開発者自らが書き下ろした。「激指」「GPS将棋」「Bonanza」「YSS」などの強豪プログラムの設計思想から導かれる戦いの歴史。

こんな方におすすめ

  • コンピュータ将棋に興味がある方
  • アルゴリズムなどに興味のある方

著者の一言

最近,プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトの対戦が話題になってきている。コンピュータ将棋は1974年11月から開発が始まっているが,当初はすこぶる弱く,アマチュアの初段の実力があれば,6枚落ち(飛車,角行,桂馬,香車を除くハンディキャップ)でも楽々勝てるレベルであった。これが強くなってきたのは20世紀末頃のことである。そこからの強さの伸びはかなり速くなってきたが,それが爆発的になったのは,2005年の激指,2006年のBonanzaの登場からである。
2005年6月25日・26日にはその年の世界コンピュータ将棋選手権(WCSC)で優勝した「激指」がアマ竜王戦全国大会に招待されて参加し,並み居る強豪の中でベスト16に入る活躍を見せた。ここからは,強い人間との対戦も平手(ハンディキャップなし)が当たり前になった。2007年3月21日には,前年のWCSCで優勝した「Bonanza」が渡辺明竜王に挑戦,負けたとはいえ大善戦し,注目を集めた。2010年10月11日には合議ソフト「あから2010」が清水市代女流王将に勝ち,2012年1月14日には前年のWCSCで優勝した「ボンクラーズ」が引退棋士とはいえ元名人の米長邦雄永世棋聖に勝つなど,プロレベルに近いところまで来ていることが明らかになっている。
このような時期に「人間に勝つコンピュータ将棋の作り方」という書籍を出版できることは,私たちとしても嬉しいことである。本書では,コンピュータ将棋の歴史,基本技術と2010年の「あから2010」に加わったコンピュータソフトの作者等自らによる各ソフトの発想の原点を中心とした解説,人間プレイヤ側からの視点,対人間プレイヤの戦略などを載せている。
本書をお読みいただき。あらためてコンピュータ将棋に挑戦したり,コンピュータ将棋の作成に挑戦していただければ幸いである。

各章の担当著者

  • プロローグ「清水市代女流王将VSあから2010 平手一番勝負」……松原仁氏
  • 第1章「負け続けた35年の歴史」……瀧澤武信氏
  • 第2章「コンピュータ将棋のアルゴリズム」……小谷善行氏
  • 第3章「激指の誕生」……鶴岡慶雅氏
  • 第4章「YSSの誕生」……山下宏氏
  • 第5章「GPS将棋の誕生」……金子知適氏
  • 第6章「数の暴力で人間に挑戦! Bonanzaの誕生」
    ……保木邦仁氏
  • 第7章「文殊の誕生,あから2010の人間への挑戦」
    ……伊藤毅志氏,金子知適氏,保木邦仁氏
  • 第8章「習甦の誕生」……竹内章氏
  • 第9章「プログラムの主戦場Floodgateの切磋琢磨」
    ……篠田正人氏
  • 第10章「コンピュータ将棋の弱点を探る――対コンピュータ将棋ソフト,人間の効果的戦略」……古作登氏
  • 第11章「女流王将戦一番勝負」……橋本剛氏
  • エピローグ「名人に勝つXデイの後で」……松原仁氏

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人間に勝つコンピュータ将棋の作り方
人間のほうがコンピュータより上の存在だ,と皆さん思っていますよね。当然ですね,比べる定規が違いますから。

目次

  • プロローグ
  • 監修者の言葉

第1章 負け続けた35年の歴史

  • 1 コンピュータ将棋の歴史――第0期コンピュータ将棋の誕生から選手権開催まで
  • 2 第I期 20世紀末まで――級位者から有段者へ
  • 3 第Ⅱ期 2000年代前半まで――アマチュア高段者との競り合い
  • 4 第Ⅲ期 2005年~2010年――プロへの挑戦
  • 5 コンピュータ将棋の現状――2011年以降プロとの真剣勝負へ
  • 6 付録 将棋プログラミングの基礎概念/min-max原理/αβ法

第2章コンピュータ将棋のアルゴリズム

  • 1 アルゴリズムも60年前から
  • 2 二人完全情報確定的ゼロ和ゲームであること
  • 3 最大最小戦略と評価関数による探索
  • 4 ネガマックス法
  • 5 αβ木探索
  • 6 枝分かれについて
  • 7 反復深化
  • 8 思考時間
  • 9 トランスポジションテーブル
  • 10 並べ替え
  • 11 拡張と枝刈り
  • 12 実現確率探索
  • 13 静止探索・捕獲探索
  • 14 証明数探索
  • 15 詰将棋
  • 16 定跡
  • 17 評価関数とそのパラメータ学習
  • 18 並列処理
  • 19 人間のアルゴリズムとの違い

第3章 激指の誕生

  • 1 開発のきっかけ
  • 2 選手権初参加
  • 3 実現確率による探索アルゴリズム
  • 4 評価関数
  • 5 終盤
  • 6 実行速度と強さ
  • 7 将棋プログラムの開発
  • 8 激指の今後

第4章 YSSの誕生

  • 1 選手権のひとコマ
  • 2 きっかけ
  • 3 みかけの駒損よりも勝ちにくい局面
  • 4 手の生成
  • 5 0.5手延長アルゴリズム
  • 6 おわりに

第5章 GPS将棋の誕生

  • 1 GPS将棋の成り立ち
  • 2 世界コンピュータ将棋選手権への挑戦
  • 3 GPS将棋の進化
  • 4 Floodgateでの開発と研鑽
  • 5 機械学習を武器に躍進
  • 6 未来の将棋プログラムへの期待

第6章 数の暴力で人間に挑戦!――Bonanzaの誕生

  • 1 力ずく探索
  • 2 評価関数の機械学習
  • 3 おわりに

第7章 文殊の誕生,あから2010の人間への挑戦

  • 1 トッププロ棋士に勝つ将棋プロジェクト
  • 2 競争から協調へ
  • 3 Bonanzaとの邂逅
  • 4 あから2010の挑戦
  • 5 あから2010のシステム構成
  • 6 ソフトウェア開発とプロトコル
  • 7 合議が生んだ印象的な指し手とその検討

第8章 習甦の誕生

  • 1 棋力向上への技術課題
  • 2 大局観を実現する評価関数
  • 3 評価関数の特徴を活かした探索
  • 4 大局観を身に付ける学習
  • 5 人間を超える大局観を目指して

第9章 プログラムの主戦場Floodgateの切磋琢磨

  • 1 Floodgateとは
  • 2 Floodgate観戦術
  • 3 長時間Floodgate
  • 4 プログラムの「棋風」
  • 5 Floodgateの将来像
  • 6 将棋好きの視点から

第10章 コンピュータ将棋の弱点を探る――対コンピュータ将棋ソフトウェア,人間の効果的戦略

  • 1 コンピュータ将棋の現状
  • 2 Bonanza6.0との練習対局からコンピュータ将棋の弱点を探る――対コンピュータ戦略のヒント
  • 3 対コンピュータ,人間側の最適戦略
  • 4 人類vsコンピュータはこうなる――若手強豪プロ,そしてトップ棋士との対戦に期待

第11章 女流王将戦一番勝負

  • 1 はじめに
  • 2 プロジェクト開始
  • 3 対戦相手決定
  • 4 あから2010 の誕生
  • 5 作戦の決定
  • 6 対局当日
  • 7 対局内容
  • 8 対局後
  • 9 最後に
  • エピローグ
  • 参考文献

著者プロフィール

瀧澤武信(たきざわたけのぶ)

早稲田大学教授,コンピュータ将棋協会会長


松原仁(まつばらひとし)

はこだて未来大学教授,「あから2010」仕掛け人


小谷善行(こたによしゆき)

東京農工大学教授,コンピュータ将棋協会前会長


鶴岡慶雅(つるおかよしまさ)

東京大学准教授,「激指」メインプログラマ


山下宏(やましたひろし)

「YSS」(山下将棋システム)プログラマ


金子知適(かねこともゆき)

東京大学大学准教授,「GPS将棋」メインプログラマ


保木邦仁(ほきくにひと)

電気通信大学特任助教,「Bonanza」プログラマ


伊藤毅志(いとうたけし)

電気通信大学助教,「あから2010」仕掛け人


竹内章(たけうちあきら)

「習甦」プログラマ


篠田正人(しのだまさと)

奈良女子大学准教授,元アマ竜王


古作登(こさくのぼる)

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員,元奨励会三段,「週刊将棋」元編集長


橋本剛(はしもとつよし)

松江工業高等専門学校准教授,「TACOS」メインプログラマ