デジタル時代のイノベーション戦略

[表紙]デジタル時代のイノベーション戦略

四六判/272ページ

定価(本体1,980円+税)

ISBN 978-4-297-10527-3

電子版

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書籍の概要

この本の概要

日本におけるITアナリストの草分け的存在として30年以上のキャリアを誇る著者が,デジタル化が必須の時代にイノベーションを起こすための視点と方法論を集大成

「『人工知能(AI)を活用して業務を変革せよ』と言われたのだけど,何をすればいいかわからない」
「デジタル推進室という部署を設置したのだけど,何から手を付ければいいのかわからない」
「デジタル技術活用のアイデアを募集したが,そのあとがいっこう進まない」

そのような壁を乗り越えて,これから求められる革新を起こすにはどうすればいいか?

  • 注目すべき4つの「デジタル領域」
  • デジタルネイティブ企業を支える6つの「行動様式」と8つの「実践」
  • 革新の方程式をまとめた「デジタルイノベーションの14のパターン」
  • アイデア創出のための「新C-NESアプローチ」
  • 「意識」「組織」「精度」「権限」「人材」を変革する方法

など独自のノウハウを,大手企業のIT戦略立案・実行およびデジタルイノベーション創出のためのアドバイスやコンサルティングに携わる中で得られた数多くの失敗や成功の経験をふまえて教えます。

こんな方におすすめ

  • 新規事業の担当者
  • 経営者
  • コンサルタント

著者の一言

「『人工知能(AI)を活用して業務を変革せよ』と社長から言われたのだけど,何をすればいいかわからない」
「デジタル推進室という部署を設置したのだけど,何から手をつければいいのか……」
「イノベーション人材を育成するにはどうすれば?」
「デジタル技術活用のアイデアを募集したが,そのあとがいっこうに進まない」

私のところには,日々さまざまな企業からデジタルイノベーションについての相談が寄せられます。所属する業界,企業の規模や成長曲線,企業風土やこれまでのIT活用の成熟度などによって切迫感や危機意識は異なりますが,多くの企業が以下の4つの壁にぶつかります。

①WHYの壁:なぜ,イノベーションが注目されており,必要なのか?
②WHEREの壁:イノベーションによって,どこを目指すのか?
③WHATの壁:イノベーションに向けて何をすべきか?
④HOWの壁:イノベーションをどのように進めるか?

最初の段階でぶつかるのは,「なぜ,イノベーションが必要なのか」というWHYの壁です。世の中で起こっている事象を対岸の火事と捉えて,「わが社には関係ない」「この業界は大丈夫」と思っている人は社内に少なからず存在します。経営者や現場スタッフを含むすべての人が,イノベーションの重要性を正しく理解し,変革意識を持って臨まなければなりません。

この第1段階をクリアしても,「どこに向かって進めばいいのかがわからない」というWHEREの壁が立ちふさがります。不確実な時代といわれる状況下で,未来を見通すことは困難ですが,仮説でもかまわないので,変革の先に目指す自社の姿を指し示すことが大切です。


目指す方向が決まったら,次に何をするか(WHAT)を明確にして一歩を踏み出しますが,デジタルイノベーションで取り組むべきテーマは多岐にわたります。どの分野に取り組むのか,その際に社内の制度や組織の変更といった環境の整備が必要な場合は,どこから着手するかなどを決めなければなりません。

どこを目指して,何をするかが定まっても,実際に取り組みを開始すると,どのように進めるか(HOW)が課題になります。次のような課題に直面する企業が多く見られます。

  • 各部門からエースを集めて,社長直轄のタスクフォースを結成したが,メンバーがみな兼務で忙しく,検討がなかなか進まない
  • 社内アイデア公募やIT企業の協力を得た仮説検証(PoC)を多数やっているが,本番まで進められるものが出てこない
  • デジタル化は各事業部門で取り組んでいるが,同じようなことをバラバラにやっていて,同じようなところでつまずいている
  • AIの適用分野を探そうと,社内をヒアリングして回ったが,そもそも事業部門のメンバーがAIで何ができるかを知らないため,ニーズが出てこない
  • AIなど先進技術を使うことを目的にして,なぜそれが必要なのかに目が向いていない

こうした課題を乗り越えるために,「WHY」「WHERE」「WHAT」「HOW」の4つのステップをどのように踏み固めていけばいいか。

本書は,おもにそうした企業内のデジタルイノベーション推進者が,着実に歩を進めるための水先案内となることを目指しています。そして,経営者や事業部門の方々にも理解を深めてもらえるように,できるだけビジネスで使う一般的な言葉を使うように心がけており,個々のデジタル技術に関する詳細な説明はしていません。

私自身も,1人の起業家としてITリサーチという新しい業界を切り開いてきましたが,それにもまして,アナリストとして多くの企業のイノベーションへの取り組みやビジネスモデルを調査・研究してきました。また,コンサルティングの現場では,ビジネス創出やイノベーションに向けた企業内変革に立ち向かう企業とともに悩み,生の声に耳を傾け,数多くの失敗や成功を経験しながら,そのプロセスやノウハウを学んできました。その成果をもとに,あなた自身およびあなたが所属する企業の5年後,10年後の生き残りのために,今何をすべきかをお伝えできれば幸いです。

目次

第1章 なぜイノベーションが必要なのか

1.1 デジタルとイノベーションの本質とは

  • テクノロジーはわずか10年で世界を変える
  • デジタルによって人々の暮らしや価値観も変わる
  • 今,あらためてイノベーションが注目される背景
  • そもそも,デジタルイノベーションとは何なのか
  • これまでのIT活用と何が違うのか

1.2 デジタルディスラプターがあらゆる業界を揺るがす

  • これまでの優位性を支えてきた既存資産,取引関係,従業員が足かせに変わる可能性
  • ディスラプションはもはや対岸の火事ではない
  • 国内でも起こっているデジタルディスラプション
  • 既存勢力も対ディスラプターの手を打ち始めている

1.3 注目すべき4つのデジタル領域

  • 世界中に普及した技術を,企業がどのように取り込んでいくか
  • ビジネストランスフォーメーション領域:事業や業務を変革する
  • カスタマーエンゲージメント領域:顧客のデジタル武装に対応する
  • フューチャーオブワーク領域:新しい働き方と組織運営を切り開く
  • デジタルエコノミー領域:デジタルを前提とした事業や業態を創出する

第2章 イノベーションによってどこを目指すか

2.1 企業の意識とステージを把握する

  • イノベーション推進の「なぜ」「どこへ」「何を」「どうやって」
  • 多くの企業が「どこへ向かって変革を推進すべきかが定まっていない」という状況
  • ゴールは「会社全体がイノベーティブな会社に生まれ変わる」こと
  • 経営者のリーダーシップを待っていたのでは,何も始まらない

2.2 デジタルイノベーションの方針をつくる

  • デジタルイノベーションの創出および推進の2つのタイプを区別する
  • 全社員が同じ方向を目指して進んでいけるビジョンを描く
  • デジタルイノベーションを遂行する道筋とは

2.3 デジタルネイティブ企業の6つの行動様式に学ぶ

  • デジタルネイティブ企業とは
  • 顧客中心
  • リスクテイク
  • 計画より実験
  • 自前主義と脱自前主義のメリハリ
  • 迅速かつ民主的な意思決定
  • 個人の重視
  • デジタルネイティブ企業が実践している8つのこと

第3章 どのようなイノベーションを起こすのか

3.1 イノベーションの方向性を見定める

  • 提供する価値×顧客層の観点の4つの象限で考える
  • 社内の業務のあり方を変革する
  • ビジネスモデルを変革する
  • 新しい顧客価値を創出する
  • 新規ビジネスを創出する

3.2 データに着目した7つのイノベーションの14のパターン

  • モノのデータの活用
  • 人のデータの活用
  • 画像・映像・音声のデジタル化
  • 有形物のデジタル化
  • デジタルコンテンツ活用基盤
  • 経済的価値の仮想的な交換
  • 付加価値データの有償提供

3.3 つながりに着目した7つのイノベーション

  • オンデマンドサービスの提供
  • 優位な自社業務のサービス化
  • APIエコノミー
  • アグリゲーションサービス
  • マッチングエコノミー
  • シェアリングエコノミー
  • キュレーターズセレクション

第4章 デジタルイノベーションのビジネスモデルとは

4.1 エコシステムとプラットフォーム戦略

  • 企業やビジネスシステムが互いにつながり合うことで,より大きな価値を生み出す
  • ビジネスや価値創造の「場」を提供するのがプラットフォーマー
  • カテゴリープラットフォームを目指す
  • プラットフォームの価値を高めるデータ分析
  • 共存共栄で勝ちパターンを築く
  • 自社の位置取りを決める

4.2 シェアリングエコノミーの台頭

  • なぜ,シェアリングエコノミーが注目されるのか
  • 拡大するシェアリングエコノミー
  • シェアリングエコノミーが及ぼす影響
  • シェアリングエコノミーとどう対峙するのか

4.3 API公開によるビジネス価値創造

  • APIエコノミーとはどのようなものか
  • APIエコノミーが注目される背景
  • 国内外で実践されるAPIエコノミー
  • APIエコノミーのビジネスモデル

4.4 IoTを活用した製品のスマート化

  • 「製品のスマート化」とは何を意味するのか
  • 製品のスマート化の4つのパターン
  • 製品のスマート化の価値
  • スマート化が促す業界構造の変革

第5章 どのようにイノベーションを進めるか

5.1 アイデア創出のプロセスを見直す

  • 従来のPDCAサイクルは通用しない
  • リーンスタートアップで進めるイノベーション
  • リーンスタートアップの手段としてのPoC
  • イノベーション創出のプロセスに終わりはない
  • アイデア創出のためのC-NESアプローチとその限界
  • 外部環境の変化を起点とした新C-NESアプローチとは
  • 将来視点の外部環境の変化に着目する
  • 外部環境の変化から課題・ニーズを抽出する
  • 課題・ニーズにシーズをかけ合わせてアイデアを創出する
  • アイデアからコンセプトに仕立て上げる
  • コンセプトを検証しながらブラッシュアップしていく

5.2 イノベーション創出のための発想法

  • ビジネスとテクノロジーをいかに結びつけるか
  • 企業が追い求める価値も変わる
  • 3Cと4Pを変える発想の転換
  • 業務改革の4つの着眼点
  • 「観察」と「啓発」から発想を促す

第6章 どのようにイノベーション創出の環境を整えるか

6.1 イノベーションに向けた環境整備

  • 最初の推進者は,開拓者の苦労を背負う
  • イノベーションへの5段階の成熟度
  • 国内企業のデジタルイノベーションへの成熟度は
  • 求められる5つの企業内変革
  • 意識の変革
  • 組織の変革
  • 制度の変革
  • 権限の変革
  • 人材の変革
  • 企業と個人,両方からアプローチする

6.2 2段階方式で進めるイノベーション

  • イノベーションに立ちはだかる2つの壁
  • 2つの段階で壁を乗り越える
  • 「特区戦略」で最初のひと転がりの壁を越える
  • 「最初のひと転がり」をどのようにして始めるか
  • 2つめの分厚く高い壁をどのようにして越えるか

第7章 どのように企業内変革を進めるか

7.1 イノベーションが「企業風土」といえるほど浸透するよう意識を改革する

  • まずは「全社でイノベーションの重要性が認識される」レベルを目指す
  • 外圧を利用して経営層を動かす
  • 「啓発」「参加」「対話」の3つのアプローチで意識を改革する

7.2 全社的な視点を持ち,組織横断的な活動が進められる組織を作る

  • イノベーション組織の3つの形態
  • イノベーション推進組織に求められる3つの活動
  • イノベーション組織の成熟度を高めるには
  • イノベーション推進組織から事業部門へ主体を移して,全社展開へと進化させる

7.3 活動を抑制する制度を緩和し,挑戦しやすくなるよう整備する

  • やみくもに新制度を導入するよりも,既存の制度を緩和することを優先すべき場合も
  • インキュベーション制度でイノベーションの卵を育てる
  • 人事評価・報酬制度にもメスを入れる

7.4 だれもが自由に,素早く活動できるよう権限とプロセスを変革する

  • 権限とプロセスの自由度を高める
  • イノベーション予算枠を確保する
  • 段階を分けて案件の実施可否を判断する
  • 社内外の組織と自由に連携・協力できる権限を持てるようにする

7.5 イノベーションを担う人材を確保し,育成する

  • イノベーションに求められるのは「プロデューサー」「デベロッパー」「デザイナー」の3者
  • イノベーション人材には「ビジネス」「テクノロジー」「デザイン」の3つのスキルが必要
  • 中長期的な視点でデジタル人材の確保と育成を

著者プロフィール

内山悟志(うちやまさとし)

株式会社アイ・ティ・アール会長/エグゼクティブ・アナリスト。
大手外資系企業の情報システム部門などを経て,1989年からデータクエスト・ジャパン(現ガートナージャパン)でIT分野のシニア・アナリストとして国内外の主要IT企業の戦略策定に参画。ITアナリストの草分け的存在として知られる。1994年に情報技術研究所(現アイ・ティ・アール)を設立し,代表取締役に就任。現在は,大手企業のIT戦略立案・実行およびデジタルイノベーション創出のためのアドバイスやコンサルティングを提供している。年間100回を超える講演・ワークショップを実施し,10年以上主宰する企業内イノベーション・リーダー育成を目指した「内山塾」は600名以上を輩出している。
おもな著書に『IT内部統制実践構築法』(共著,ソフトリサーチセンター),『TCO経営革新』(共著,生産性出版),『名前だけのITコンサルなんていらない』(翔泳社)などがある。
ホームページ:https://www.itr.co.jp/