概要
日本におけるITアナリストの草分け的存在として30年以上のキャリアを誇る著者が,デジタル化が必須の時代にイノベーションを起こすための視点と方法論を集大成
「『人工知能(AI)を活用して業務を変革せよ』と言われたのだけど,何をすればいいかわからない」
「デジタル推進室という部署を設置したのだけど,何から手を付ければいいのかわからない」
「デジタル技術活用のアイデアを募集したが,そのあとがいっこう進まない」
そのような壁を乗り越えて,これから求められる革新を起こすにはどうすればいいか?
- 注目すべき4つの「デジタル領域」
- デジタルネイティブ企業を支える6つの「行動様式」と8つの「実践」
- 革新の方程式をまとめた「デジタルイノベーションの14のパターン」
- アイデア創出のための「新C-NESアプローチ」
- 「意識」「組織」「制度」「権限」「人材」を変革する方法
など独自のノウハウを,大手企業のIT戦略立案・実行およびデジタルイノベーション創出のためのアドバイスやコンサルティングに携わる中で得られた数多くの失敗や成功の経験をふまえて教えます。
こんな方におすすめ
著者から一言
「『人工知能(AI)を活用して業務を変革せよ』と社長から言われたのだけど,何をすればいいかわからない」
「デジタル推進室という部署を設置したのだけど,何から手をつければいいのか……」
「イノベーション人材を育成するにはどうすれば?」
「デジタル技術活用のアイデアを募集したが,そのあとがいっこうに進まない」
私のところには,日々さまざまな企業からデジタルイノベーションについての相談が寄せられます。所属する業界,企業の規模や成長曲線,企業風土やこれまでのIT活用の成熟度などによって切迫感や危機意識は異なりますが,多くの企業が以下の4つの壁にぶつかります。
①WHYの壁:なぜ,イノベーションが注目されており,必要なのか?
②WHEREの壁:イノベーションによって,どこを目指すのか?
③WHATの壁:イノベーションに向けて何をすべきか?
④HOWの壁:イノベーションをどのように進めるか?
最初の段階でぶつかるのは,「なぜ,イノベーションが必要なのか」というWHYの壁です。世の中で起こっている事象を対岸の火事と捉えて,「わが社には関係ない」「この業界は大丈夫」と思っている人は社内に少なからず存在します。経営者や現場スタッフを含むすべての人が,イノベーションの重要性を正しく理解し,変革意識を持って臨まなければなりません。
この第1段階をクリアしても,「どこに向かって進めばいいのかがわからない」というWHEREの壁が立ちふさがります。不確実な時代といわれる状況下で,未来を見通すことは困難ですが,仮説でもかまわないので,変革の先に目指す自社の姿を指し示すことが大切です。
目指す方向が決まったら,次に何をするか(WHAT)を明確にして一歩を踏み出しますが,デジタルイノベーションで取り組むべきテーマは多岐にわたります。どの分野に取り組むのか,その際に社内の制度や組織の変更といった環境の整備が必要な場合は,どこから着手するかなどを決めなければなりません。
どこを目指して,何をするかが定まっても,実際に取り組みを開始すると,どのように進めるか(HOW)が課題になります。次のような課題に直面する企業が多く見られます。
- 各部門からエースを集めて,社長直轄のタスクフォースを結成したが,メンバーがみな兼務で忙しく,検討がなかなか進まない
- 社内アイデア公募やIT企業の協力を得た仮説検証(PoC)を多数やっているが,本番まで進められるものが出てこない
- デジタル化は各事業部門で取り組んでいるが,同じようなことをバラバラにやっていて,同じようなところでつまずいている
- AIの適用分野を探そうと,社内をヒアリングして回ったが,そもそも事業部門のメンバーがAIで何ができるかを知らないため,ニーズが出てこない
- AIなど先進技術を使うことを目的にして,なぜそれが必要なのかに目が向いていない
こうした課題を乗り越えるために,「WHY」「WHERE」「WHAT」「HOW」の4つのステップをどのように踏み固めていけばいいか。
本書は,おもにそうした企業内のデジタルイノベーション推進者が,着実に歩を進めるための水先案内となることを目指しています。そして,経営者や事業部門の方々にも理解を深めてもらえるように,できるだけビジネスで使う一般的な言葉を使うように心がけており,個々のデジタル技術に関する詳細な説明はしていません。
私自身も,1人の起業家としてITリサーチという新しい業界を切り開いてきましたが,それにもまして,アナリストとして多くの企業のイノベーションへの取り組みやビジネスモデルを調査・研究してきました。また,コンサルティングの現場では,ビジネス創出やイノベーションに向けた企業内変革に立ち向かう企業とともに悩み,生の声に耳を傾け,数多くの失敗や成功を経験しながら,そのプロセスやノウハウを学んできました。その成果をもとに,あなた自身およびあなたが所属する企業の5年後,10年後の生き残りのために,今何をすべきかをお伝えできれば幸いです。