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プログラマ人生では「人間関係」が仕事を左右する
そんなイメージがあるかもしれません。たしかに,OS・開発言語をはじめIT全般の知識が求められ,勉強をせずにできる仕事ではないので,技術職ではあります。しかし,機械のように「だれがどう考えても,こう作れば,こう動く」というものと比べると,ソフトウェアは「あまりにも多機能になりやすい」「使いやすさや見た目など感覚的な面も多い」といったことから,「ただ作ればいいものではない」という側面も持ちます。
そのような仕事をうまく進めるために重要なのが,「人間力」です。
OSやプログラミング言語の研究・開発などを仕事とする,いかにも技術主体のプログラマもいますが,多くの職業プログラマは,「依頼者の想いを実現すること」や「依頼者が助かるような提案ができるような動き」が求められる仕事に携わっています。もちろん,技術力も必要ですが,仕事として「依頼者が満足する」ためには,しっかりとコミュニケーションをとることがとても大切になるのです。
私自身は,技術面では「UNIX系OSでのC言語によるネットワークプログラミング」を得意分野として,25年以上仕事を続けてきましたが,OSやC言語の技術・知識は10年以上前からそれほど進歩していないかもしれません。数多くの場数をこなし,現場に触れてきましたので,ノウハウはもちろん増え続けていますが,プログラマ人生の後半は技術よりも人間関係が仕事を左右してきたと感じています。
足りていないのは,「指示どおりにできる人」ではなく,「課題を自ら解決することができる人」
人間関係とともに,
私がプログラマとして大事だと考えているのが「得意分野」です。ITバブルの時代は,プログラマも含めてIT技術者が足りず,とにかく「技術者の頭数をそろえること」が求められました。しかし今では,「だれでもできる仕事は低コストの海外へ」「クラウドを活用して汎用システムをうまく使いこなし,ゼロからの開発は減少」「開発環境の向上により,人手をかけずに開発ができる方向へ」と,単に頭数をそろえればいい時代ではなくなりました。
今でもIT人材の不足が問題とされていますが,それは頭数が足りていないのではなく,それぞれの分野でのスペシャリストが足りていないのです。ITはより高機能化され,要求も高くなっています。それをどう実現するかを考えることができ,提案できる人は多くありません。「何でも指示どおりにできます」という人が足りないのではなく,「課題を自ら解決することができる人」が足りていないのです。
ITはどんどん多様化していますので,どの分野でも完璧に対応できる人になることはまず無理でしょう。自分が一番好きで,打ち込める分野で一流になることが大事です。
人間力や技術力があれば食べていけるわけでもない
さらに,プロのプログラマとして,年齢とともに重要になっていくのが「ビジネス力」でしょう。人間力や技術力があれば食べていけるわけではありません。それらをどう活かすかが重要です。「そんなことはプログラマの仕事ではない」と感じるかもしれませんが,だれの役にも立たない技術では意味がありませんし,「だれかが仕事にしてくれる」と考えていると「受け身の仕事」になってしまいがちなのです。
自分の技術を一番熱く語ることができるのは自分自身です。そして,自分の想いを一番表現しやすいのが「自社製品・サービス」でしょう。受託仕事が悪いということではなく,より得意分野を活かすためにも,製品やサービスでの自己アピールが重要なのです。
若いうちは,技術力を高めるだけでも大変だと思います。しかし,徐々に社内外との交渉・調整もこなすようになって人間力が重要になり,最終的には自分たちが進むべき道を考えることになります。ビジネス力も,勉強すればいいというものではなく,経験を積み重ねなければ身につきません。小さなことから積極的にチャレンジし続ける姿勢が,後に大きな差になることでしょう。
成功・失敗の事例と自分の状況を照らし合わせてみることから,本当のヒントが得られる
私は「こうすべき」「これが正解」という本はあまり好きではなく,「こうやったら成功した」「こんなことをしたら大失敗だった」という経験を読むことが好きです。世の中,正論どおりにうまくいくものではなく,むしろ成功・失敗の事例と自分の状況を照らし合わせてみることから本当のヒントが得られる,と考えているからです。ところが,世の中にそのような「経験を語る本」が出ると,「自己満足」「特殊な状況下」などと,批判的にとらえられることが多いと感じています。どう感じるかは人それぞれ勝手ですが,「理想論ではなく,事実こそ本物」と私は考えています。
新刊『プログラムは技術だけでは動かない』も,私固有の特殊な経験でしかない部分もあるかもしれませんが,わざわざ同じような落とし穴にはまったり,苦しい思いに時間を費やさないための知識を身につけて問題をスムーズに乗り越え,その分の時間をより有意義なことに使っていただければ,という想いで書きました。本書が少しでもプログラマの役に立つことができればうれしい限りです。
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