人工知能で明日のビジネスは変わるのか?

第4回 「人工無脳」の存在とその市場

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人工無脳とは?

前回取り上げなかった人工知能の市場として,いわゆる「人工無脳」というものがあります。たとえばMicrosoftのりんなやSiriなどです。

りんなやSiriなどは,むしろ「人工知能のど真ん中」という感じで,どこが人工無脳なのか?と思う人も多いかもしれません。実はこれも,たびたび触れている人工知能ブームにおける拡大解釈の弊害です。

以前の記事でも取り上げたように,もともとは人工知能というのは思考や推論を実現するテクノロジーを意味していました。

ただ現在は,機械学習もその括りに入っているため,思考や推論を実現するものは強いAI,そうでないものは弱いAIと,どちらもAIすなわち人工知能として扱われています。別に弱いAIなんていうなんだかよくわからない表現を作らなくても,素直に機械学習で良いと思うのですが。

りんなやSiriは思考を実現しているわけではないので,人工知能ではなくて人工無脳というわけです。人工無脳というとネガティブなイメージすぎるので,英語のchatbotをそのままカタカナ表現にしたチャットボットという呼ばれ方のほうが,今では一般的です。

マーケティング領域におけるチャットボットの可能性

私はチャットボットは,マーケティングにおいては結構大きな可能性を秘めていると思います。ECというものが普及して,以前のようなアーリーアダプターだけではなくレイトマジョリティな人たちも利用するようになると,相対的にユーザのリテラシーは下がっていきます。

アーリーアダプターは自分で検索などを駆使して商品を見つけるというステップ自体も楽しみますが,大半の人すなわちマジョリティは商品を探すという手間で苦労したいとはあまり思わないでしょう。

それこそ思考・推論を可能にする人工知能のテクノロジーが実現すれば,店舗におけるお買い物の店員に当たる機能が提供できますが,現在のところまだまだそれは実現の見込みはありません。

現在はまだユーザは自力で商品を探さなければいけない

現在のところ,どうあってもユーザは,自力で商品検索をする必要があるわけですが,検索機能そのものはさておき検索インターフェースとしてチャットボットというものは,こうしたマジョリティに対しては有効なことが多いと考えられます。

以前Microsoft Officeのヘルプ機能のインターフェースでイルカがいましたが,本質的にはあれと同じです。イルカがなぜ不評だったのかといえば(不評でなかったらスミマセン),当時PCを使う人はそういうまだるっこしいインターフェースが嫌いなアーリーアダプターが多かったため,というのも1つの要因でしょう。

一方でSiriは,とくに英語圏ではそれなりに好評ですが,これはスマホのユーザー層がレイトマジョリティまで広がっているということと,テクノロジーの進化で人工無脳といってもそれなりに便利になってきているという,いわゆる時代の流れによる違いがあるためです。

ユーザの検索労力を軽減するのがチャットボット

たとえばレストランを探して予約するとき,エリア,ジャンル,日時,値段,レビュー,その他カード可・不可,個室有無などさまざまなドリルダウン(絞り込み検索)によって,お目当てのお店を探す必要があります。検索を使いこなせればこうしたプロセス自体を楽しむこともできますが,一般的にはやはりドリルダウンやソートの項目や選択肢が増えるほど,検索の難易度は上がるでしょう。

こうしたときに,たとえばチャットボットで,「ご希望のエリアは?」「ご希望の日時は?」とドリルダウンを誘導していくだけでも,検索の難易度というかハードルは下がるでしょう。

もちろんいわゆるアーリーアダプターにはこうしたインターフェースはウケないと思いますが。これは(マーケティングではないですが)ソフトウェアのインストールで,たとえばエンジニアはCUIが好きなのに対して,仕事でPCを使わないような人はウィザードのほうが好きなのと同じだと考えられます。

マーチャントをまたがる,ポータルとしてのチャットボットの可能性

こうしたマーチャント(店舗)単位のチャットボットもそうですが,Facebookが目指す執事サービスのように,マーチャントをまたがるチャットボットというのはさらに大きな可能性を秘めています。

「子どもができたのでカメラを買いたいけどおすすめは?」というようなリクエストを処理できれば,そこには相当の媒体価値=広告価値があるというのはわかると思います。そしてこの程度の人工無脳は,すでにテクノロジー的には十分実現が可能です。

単純に形態素解析で「子ども」「カメラ」「おすすめ」を抜き出すだけで,適した商品を表示することができるでしょう。こうした検索のデフォルトのインターフェースとしての地位を以前に獲得したのが,Yahoo!です。

かつてはPCのデスクトップにはIEのショートカットがあり,それをクリックするとホーム画面としてYahoo!の画面が出ていた時代がそれです。一部の意識高い系アーリーアダプターはともかく,世の中の消費の大半を占めるレイトマジョリティは,デフォルトのブラウザを使い,ホーム画面からいろいろなサイトにアクセスをしていました。これがいわゆる「ポータルサイト」です。

チャットボットは,今の時代のポータル(玄関)になりうる可能性を秘めていると言えるでしょう。

次回はこのチャットボットを実現する人工知能のテクノロジーについて,詳しく見てみます。

著者プロフィール

山崎徳之(やまざきのりゆき)

青山学院大学卒業後,アスキー,So-netなどでネットワーク,サーバエンジニアを経験。ライブドア(現LINE)のデータホテルを構築・運営の後,海外にてVoIPベンチャーを創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現 株式会社ゼロスタート)を設立,代表取締役就任(現任)。ECソリューションの「ZERO-ZONE」シリーズとして検索エンジンやレコメンドエンジンを開発,販売している。

株式会社ゼロスタート:https://zero-start.jp/

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