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第6回 VOYAGE GROUP執行役員CTO小賀昌法氏に訊く(後編)―クリエイティブ職向けに考え抜かれた育成・評価の仕組み

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スペシャリスト職の4つのグレード

VOYAGE GROUPでは中長期的なクリエイティブ職のキャリアパスも,体系だてて考えられていました。まずは,大くくりの職種分類とグレードについて。

小賀さん「弊社には大きく『ゼネラリスト職』『スペシャリスト職』というのがありまして,それぞれにグレードがついています。クリエイティブ職はだいたい『スペシャリスト職』になりますが,こちらは一番下がプロフェッショナル職[P]⁠その上にスペシャリスト職2[S2]⁠3[S3]⁠4[S4]というグレードが設けられています。

 スペシャリスト職のグレード4段階

PS2未満
S2自分の業務を一人でこなせる,いわゆる一人前。与えられた仕事を,非クリエイティブ職の人間ともコミュニケーションをとりながら一人で成し遂げられる
S3自部門を超えて専門性を発揮できる
S4社内外で専門性を発揮でき,社内外に認められている。事業に多大な貢献ができている

小賀さん「S2が一人前レベルなので,ここまではまず基盤となる能力を身につけてもらいたいと思っているんですが,S3,S4に進むときには,自分の思う道に進んでいいよっていうふうにしています」

スペシャリスト職の3つのキャリアパス

S3,S4になったとき,⁠自分の思う道」としてどんなものが想定されているのか伺ってみると,大きく3つの方向性が提示されました。

スペシャリスト職の3つのキャリアパス
  • 専門性をさらに磨く方向性
  • プロジェクトマネジメントができる方向性
  • チームマネジメントができる方向性

小賀さん「チームマネジメントができるというのは,プロジェクトマネジメントと別に捉えています。プロジェクトには始まりがあって終わりがあるものですけど,子会社とか事業部の中にはチームがあり,そこのリーダーは当然プロジェクトのマネージャーとは違う。チームメンバーの育成のことを考えたり,複数プロジェクトに対してチームが成果を出すことを考えなきゃいけないので」

スペシャリスト職からゼネラリスト職にチェンジすることも可能

現在の傾向としては「専門性をさらに磨く」志向性を持つ方が一番多いようです。このキャリアパスで,子会社の社長より高い年収をもらうプログラマーも少なくないそう。また一方で,スペシャリスト職の方がゼネラリスト職にチェンジすることも可能だそうです。

小賀さん「子会社のプログラマーとして入った人間が,子会社の社長になって,今は本体の事業部長をやっている,そういうキャリアケースもありますし。新卒で入って,子会社のプログラマーをやって,子会社の社長や役員をやっている者もいます」

多様なキャリアパスがあって,それぞれ成果を上げている人たちが社内にいるのは心強いですね。

3つの軸からなる評価制度

では,気になる評価制度も伺ってみましょう。まず一番大きな評価軸として,次の3つが挙がりました。

スペシャリスト職の3つの評価軸
  • 実績
  • 能力
  • CREEDコンピテンシーフィードバック

「実績」は,自分が所属している部門の目標に対して,どれだけ貢献できたか。⁠CREEDコンピテンシーフィードバック」は,グループ全体で大切にしている価値観に対して,それに合致した言動が出ているかどうかを周りの人に評価してもらうもの。いわゆる「360度評価」に近い。

この2つの評価軸は,多くの企業,あらゆる職種で採用されていますよね。しかし,⁠能力」も正式な評価制度の中に含めているのは興味深い。評価が難しそうですよね。

7つの軸で「能力」を評価する

では,どのようにスペシャリスト職の「能力」を評価しているのか,詳しく伺ってみましょう。

小賀さん「能力,ここが一番難しい。たとえば子会社の社長とかが評価するといっても,エンジニアあがりじゃないとエンジニアの能力って測れないですよね。なので能力に関しては,エンジニアがエンジニアを評価する,デザイナーがデザイナーを評価する場を設けています。それが『技術力評価会』で,そこで正式な能力を評価しています。

P,S2の人たちは,自分の作ったシステムに対して『こういうものを作りました』って資料を作って説明します。S3,S4がそれを受けて質疑応答を行い,能力がどれくらいかをみていきます。ただ,漫然と評価していくのではなく,そこで使う判断軸を7つ設けています」

ということで,こちらがVOYAGE GROUPの7つのエンジニアの「能力」評価軸。

表 エンジニアの7つの「能力」評価軸
1.サービスや事業を理解しているか(そもそもサービスや事業への理解が浅いと見当違いのものを作ってしまう)
2.プロジェクトの要件や制約条件を理解しているか(プロジェクトには要件や制約条件がつきもの。これを明確に定義して作ることも欠かせない)
3.可用性(24時間365日動くシステムを作るために単一障害点をなくしているか,障害が起こったときに復旧・検知しやすいようになっているか)
4.性能(きちんと性能が出る設計か,どこかで詰まるような設計になっていないか)
5.セキュリティ(セキュリティは堅牢か,昨今サービス提供する上では欠かせない指標)
6.変更容易性(作ったものは1回出して終わりではない,フィードバックを受けてどんどん改善していけるよう変更容易な設計・実装になっているか)
7.テスト容易性(プロジェクトの制約によっては品質に時間をかけるのが難しいことも。テストが簡単にでき,プロデューサー含め専門職以外も実施しやすいよう配慮されているか)

著者プロフィール

林真理子(はやしまりこ)

株式会社イマジカデジタルスケープ トレーニングディレクター。1996年より一貫してクリエイティブ職のキャリア支援事業に従事。デジタルハリウッドやエン・ジャパンを経て,2005年より現職。Webに関わる実務者を対象に,クライアントの社員研修や個人向け講座の企画コーディネート,カリキュラム設計,教材開発,講座運営,評価などのインストラクショナルデザインを手がける。日本キャリア開発協会認定CDA,日本MBTI 協会認定MBTI 認定 ユーザー。

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