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第14回 [iPad発売記念]EPUBフォーマットの電子書籍をつくる!

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STEP-14 Adobe Digital Editionsで読む

パソコンで読む場合は,世界で最も普及しているAdobe Digital Editionsを使用します。Adobeのリーダーエンジンは,Sony ReaderやBarnes & Noble Nookなど,多くの読書端末で採用されているため,検証用としても使われます。

その他,ブラウザベースのWebアプリIbis ReaderやFirefoxのアドオンEPUBReaderなどがあります。

フォントデータについて

とても重要なことですが,フォントデータを持たない電子書籍をパソコンで開くと,書籍とは思えない「読みにくい」可読性の低いページを表示することがあります。特に,Windowsは悲惨な表示になります。iBooksのような視認性の高いリーダーアプリをWindowsでも期待したいのですが…。

海外製の電子書籍関連ソフトウェアの多くは,日本語に関してあまり考慮されていないため,多々問題があります。Sigilで作成した電子書籍をAdobe Digital Editionsで開くと,日本語が文字化けします。lang属性(lang="ja" xml:lang="ja")が記述されていないのが原因ですが,Sigilに問題があるわけではありません。なぜなら,EPUB内の「content.opf」にきちんと記述されているからです(<dc:language>ja</dc:language>⁠⁠。使用言語を解釈するリーダーアプリは,日本語で表示します。

あくまでDigital Editions用の暫定処置として,修正をします(以下はWindows Vistaで実行する方法です。Mac OS Xは少々複雑な方法になりますので割愛します⁠⁠。

EPUBファイルの拡張子を「.zip」に変更し,OEBPSフォルダ,Textフォルダの順に開き,中にあるXHTMLファイルをコピーします。

図30

図30

コピーしたXHTMLファイルをエディタなどで開き,lang="ja" xml:lang="ja"を追加します。

図31

図31

保存後,XHTMLファイルを元の場所(ZIP内のTextフォルダ)にドラッグします(上書きします⁠⁠。

図32

図32

拡張子を「.epub」に戻します。

図33

図33

修正したEPUBファイルをDigital Editionsで開くと,日本語も問題なく表示されます。

当然ですが,SVGもサポートしていますので,ウィンドウの大きさにあわせて表示されます。iPhoneのサイズと比較してみましょう。パソコンの大きな画面で高品質表示するには,⁠PNGやJPEGなどのラスタグラフィックの場合)画像サイズを大きくしなければ劣化しますが,解像度に依存しないSVGであれば関係ありません。ちなみに,下図のサイズをPNGに置き換えるとデータサイズがSVGの3倍以上になってしまいます。

図34

図34

Digital Editionsは,文字サイズとウィンドウのサイズによって,見やすさを自動調整します。下図は,文字サイズを小さくし,2段組みに変更された画面です。

図35

図35

目次を非表示にして,ウィンドウをさらに広げると3段組みになります。ここで,文字サイズを大きくすると,2段組みに戻ります。

図36

図36

iTunesに登録してiPadで読む

iTunesに登録する場合は,ライブラリの[ブック]を選択して,EPUBファイルをドラッグするだけです。ブックカバーとメタデータ(書籍名と著者名)が表示されます。同期するとiPadに転送されます。

図37

図37

開発ツールやリーダーアプリのアップデートについて

今回ご紹介したオーサリングのワークフローは一例です。導入する開発ソフトによって,作業の流れは変わりますので,Sigilを使った1つの作成方法として参考にしてください。

EPUBはオープンなフォーマットですから,これから新しいオーサリングソフトやリーダーアプリケーションが次々と登場してくるでしょう。注意してほしいのは,トリッキーな手法です。多くのリーダーアプリケーションはまだ発展途上ですから,不備があります。不備を逆手にとったテクニックなどは,アップデートで無効になる可能性があります(リーダーアプリのアップデートで,埋め込んだビデオがまったく表示されなくなる等⁠⁠。可能かぎりEPUBの仕様に沿って作成したほうがよいでしょう。もし,EPUBの表現力を超えた電子書籍を企画したい場合は,⁠EPUBの中身は触らず)リーダーエンジンと一体化したアプリ版として設計した方がよいかもしれません。

図38 Ouiivo eReaderは、EPUBファイルを章ごとに「ページ」として管理するため、スクロールをしながら閲覧する特別な仕様になっている。このように、⁠EPUBはセマンティックなファイルとして扱い)リーダーアプリケーション側で、電子書籍のスタイルを決めることができる。音声や動画を付加することも可能だ。

図38 Ouiivo eReader

さて,いよいよ日本でもiPadが発売されます。ストアに行けば,誰でも触れるようになるわけです。⁠自炊」と呼ばれる個人が実行する電子化(スキャン&電子書籍化)もブームになりそうな感じです。28日以降は,ソーシャルメディアにも注視していきたいと思います。

次回は,iBooksなどのリーダーアプリケーションについて取り上げる予定です。

電子書籍関連の情報を電子書籍メディア論 - イーブックストラテジーと題して,音声やビデオなどで発信していますので,ご興味のある方はアクセスしてみてください。

今回の記事で使用したEPUBサンプルの素材セットは,以下からダウンロードできます。

著者プロフィール

境祐司(さかいゆうじ)

インストラクショナル・デザイナー[Instructional Designer]として学校,企業の講座プラン,教育マネジメント,講演,書籍執筆などの活動をおこなう。2000年より情報デザイン関連のオンライン学習実証実験を始める。現在,教育デザイナー育成を目的としたフォーラムを立ち上げるため準備中。著書に「速習Webデザイン Flash CS4」(技術評論社),「Webデザイン&スタイルシート逆引き実践ガイドブック」(ソシム)などがある。

URLhttp://admn.air-nifty.com/monkeyish_studio/

著書